スクール 〜女装×害虫×寄生虫〜

昼休みが終わり、五時間目の授業が始まっていた。
しかしズシは机に突っ伏して気持ち良さそうにお昼寝していた。

「・・・ズシ、ズシ、起きなよ・・・・。」
右隣に座っているゴンがズシの脇腹を人差し指でつっつく。
気がついたズシはあくびをして目に溜まった涙をごしごし拭うと、
目の前でウイング先生が中腰になってニコニコとズシの顔を覗いていた。

「おはよう。」

「わっ!!」

ズシは驚いて、机の上に乗っていた筆箱を落として中身をばらまいてしまった。
慌てて拾い集めようとするよりも前に、ウイング先生はすべてを拾い終えて、
これまたニコニコとズシに手渡した。
「あ・す、すみませんっス・・・。」
居眠りしていたおまけに、ドジをやらかしてしまったズシは、そう言う他に言葉がみつからなかった。

しかし、「どういたしましてvv」とウイング先生は満足そうに教壇に戻っていった。

(な・何なんスか・・・?)

ズシはウイング先生がどこか苦手だった。
別に嫌いなわけではないが、どうも調子が狂ってしまうのだ。
誰にでもそういう態度で接するならまだいいが、
ウイング先生は明らかにズシとゴンだけ変にやさしい態度を取るのだ。

「ではズシ君、9行目から読んで下さい。」
「オ・オス!え・・と、
 それ故流星街はいかなる国家のいかなる行政機関の権力の及ばない地区となった。すなわち・・・・」


「おい、またズシが指されたぜ。つーか、ウイングのやつゴンかズシしか指してないんじゃねえか?
 あれっていじめじゃねえのか?」
高3のレオリオがクラピカに耳打ちする。
「ふっ、それはとんでもない見当違いだな、レオリオ。
 恐らく彼はゴンかズシを恋人として狙っているのだよ。
 ここはひとつ、三人の行く末を見守ってやろうではないか。」
「はぁ?お前じゃあるまいし、そんなことあってたまるかよ!
 大体もし仮にそうだったとしても、間違った道から救い出してやるのが人として正しい道だろうが!」
「何だと、私のいうことが聞けないのか!?」
クラピカはゾッとするような顔でレオリオを睨みつけた。
「何だお前・・・、め・目が赤いぞ・・・・!」
「覚悟はできてるんだろうな・・・。もし本気で私に逆らおうというのなら・・・」
クラピカがゆっくりと人差し指を立てると、レオリオは戦慄した。

「この<凌辱する人差し指の鎖(レイピングチェーン)>プレイ30発では済まされないぞ・・・。」

「わ・わかったから、そ・それはよせ!!見守ってりゃいいんだろ!?」
「分かればいいんだ。さすがは私が目を付けた男、
 <凌辱する人差し指の鎖>プレイ50発で許してやろう・・・。」
「増えてるじゃねえか!」
レオリオはこれから繰り広げられる修羅場を思い浮べ、思わず大声をあげる。
「そこ、静かになさい!」
ウイング先生の投げたチョークがレオリオの額に命中する。
「レオリオ君、減点です。」
「え、おい?そりゃねえだろう!もとはといえばコイツが・・・」
「やめないか、レオリオ!恥ずかしくないのか!?」
元凶のはずのクラピカはもっともらしく振る舞い、レオリオを極悪人のように仕立てる。
「チクショー・・!お前のせいでサイアクな気分だぜ・・・。」
レオリオはそう吐き捨てた。

「気を落とすな、レオリオ。若いうちは苦労を買ってでもしろと言うだろう。
 まあお前に若いという形容詞を用いるのは、違和感を禁じえないがな。」

悪怯れた様子もなくさらりと言ってのけるクラピカに、レオリオは強い殺意を抱いた。

「ふう・・・、困りましたね。では気を取り直して、ゴンくん、続きを読んでください。」
「はい!(・・・また?)」 




そして、帰り道・・・ 

「はぁー・・・つかれたねー・・。」
「きっとウイング先生が自分たちばっかり当てるからっスね・・・。」
二人の足取りは心なしか重い。

「そうだ、先生で思い出したけど、今晩先生たちの飲み会がウチであるんだって。」
「えっ・・・・!」
みるみるうちにズシの表情が青ざめていく。

「やばい・・・よね・・?」
「オ・オス・・・。」

まるで飛び降りろとばかりに崖っ淵に追い詰められた気分。
もし見つかってしまったら停学になって、アルバイトもやめさせられてしまう。
つまりズシにとっては学校生活の破滅を意味していると言っても過言ではない。

「で、でもサボるわけにいかないし、とにかくミトさんに会ってから相談してみるっス・・・。」
「そうだね・・・。オレたちに出来るのはそれくらいしかないもんね・・・・。」
どこからどう見ても子供にしか見えない二人は、とうてい子供とは思えない深い溜息をついた。




「あら、ズシ君、今日はやけに早いわね。」
「ちょっと相談したいことがあって・・・。」
ズシはどこかそわそわして心配そうにミトさんの顔を見る。
「ああ、もしかして今夜の先生達の飲み会のことね?」
「えっ、何で分かったっスか!?」
「そんなの顔を見れば分かるわよ。
 ズシ君の顔に心配で心配でどうしようもないって書いてあるわ。」
ミトさんはズシのおでこをつついておかしそうにしている。
「そんなに心配しなくても平気よ。私にいい考えがあるから。」

「いい考えって・何・・・?」

話しに入ってきたゴンの声は震えている。
何かとっても厭な予感がしているのだ。

「それは、ヒ・ミ・ツvv。」

ゴンは軽く眩暈を感じた。
「それじゃ、私は買い物に行ってくるから、二人でお店の用意しといてねvv。」




「ただいま!」
大きな紙袋を持ってミトさんが帰ってきた。
「あ、ミトさん、おかえりなさい。」
「あら、ズシくんは?」
「さっきっからずっとトイレに入ってるんだけど・・・、
 アルバイトがばれるんじゃないかって心配してたら体の調子がおかしくなったみたいだよ・・・。」
「意外に繊細なのね。せっかくいいもの買って来たのに。」
ミトさんは紙袋を大事そうにカウンターの上に置いた。

「ねえ、ミトさん、それ何?」

不安そうにしているゴンとは対称的に、ミトさんの顔は生き生きしている。
「先生達にズシくんだってばれないようにするための秘密兵器よvv。
 ああ、早くズシくん出てこないかしら・・・。」
健康優良児なゴンが胃に痛みを感じる。
ミトさんが女王様モードになっているのを表情から読み取ったのだ。

(いっそこのままズシの具合が悪いままだったらいいのに・・・。)

ゴンは生まれてで初めて人として最低なことを本気で思った。
しかし、そんなゴンの願いも空しく、ズシはトイレから出てきてしまった。

「あ、ミトさん、おかえりなさいっス。」
「ズシくん、大丈夫?」
「オス。もうお腹ゴロゴロしないっス。」
「よかったわ。ねえズシくん、いいもの買ってきたの。
 これで絶対先生達にズシくんのことばれないわ。ほら、これに着替えてきてvv。」
「お・オス・・・・・。」



5分後・・・

「あの・・・、これは・・・・。」
困惑の表情を浮かべてズシが戻ってきた。
「その格好ならさすがにズシくんだってばれないでしょ?」
「そ・そうかもしれないっスけど、これじゃあ・・・・。」

「すごいかわいわよvv。」

「か・かわい・い・・・////////!!?うわああん!!」
ズシは恥ずかしさのあまり外に逃げ出してしまった。
「あ、ズシくん、この手ぬぐいをかぶらなきゃいくらメイド服でもばれちゃうわ!!」
「そういう問題じゃないでしょ!!早く追い掛けなきゃ大変なことになっちゃうよ!!」




何も考えず、勢いに任せて"Mito's(ミトの店)"を飛び出してきてしまったズシは、
ビルとビルの隙間に隠れてほとほと困り果てていた。

(よく考えたら、こんな格好で街を歩いたら、おまわりさんに捕まってジ・エンドっス/////)

そのとき、背後から足音が聞こえてきた。
ただならぬ気配を感じて、ズシの額から首筋にかけて、冷汗が伝う。

「キミ、そんなところで何してるの◆」

「ぎゃああああああああああああ!!!!!!!」

振り向いた瞬間、怪しげな白塗りのピエロみたいな顔が目の前に現れて、
ズシは大声をあげて腰を抜かしてしまった。

「どうしたの? そんなしりもちなんかついて・・・・vv」

(これって・・・もしかして、最近噂になってる・・・
 れ・れれ連続少年レイプ・・事件‥の犯人(まだ捕まってない)ってやつっスか・・・・?)

「そんなブルブル震えちゃって・・・、よく見るとキミ、
ちょっと眉が太いけど、すごくカワイイなぁvv」
ヒソカは目を細めて(といっても最初から細いのだが)女装したズシに近づいてきた。
「うわあ、来るなっス・・・・・!!!」
後ずさりしようにも、こんな格好では恥ずかしくて街中を逃げるなんて出来ない。
こんな格好をクラスメイトにでも見られたらまるっきり変態扱いだ。
そう思ったズシはとっさに身構えて、覚えたての練を使った。


まさかこんな小さな子供が念を使えると思ってなかったヒソカは、口許を緩めた。

「ああ、こんな元気そうな男の子が女装して、それだけでもそそられるのに、
 ボクに歯向かってくるなんて・・・・vvvvv もう、イヤだなぁ・・・なんだか興奮してきちゃったよ・・・☆」

(ひいいぃ! な・何スか・・・・この人・・・・(汗)。 やっぱり変な人っぽいっス・・・・・・!!!!)

「ゴンちゃんやキルちゃんの他にも、こんな可愛い子がいたなんて、
 ボクとしたことが、チェックぬかったなぁ・・・・・・vv◆ イイよvキミ、すごくイイ!!!」

淵顔になったヒソカを目の当たりにして、ズシは恐ろしくて動けなくなってしまった。
ただでさえ練の後で体力を消耗しているので、もうヒソカに捕らえられてしまうのは必至だ。

(ああああ、もうダメっス! おしまいっス! 神様・・・!!)


「あうっvv」

ズシが心の中で手を合わせたとき、気色悪い喘ぎ声とともにヒソカの姿は消えていた。
(ハア、なんだか分からないけど、助かったみたいっス・・・。)



「あ、もしもし、団長? 今あのホモ野郎捕獲したから、すぐ帰る。」
『ああ、よくやった。』

ビルの屋上で、道着姿の女性、マチが携帯電話を片手に団長と呼ばれる男と話している。

「まったく、コイツのせいでゆっくりショッピングも出来やしないよ・・・。」
『すまない。 だがヤツに関しては、お前にだけは従順だからな。』
「それはあたしに女に見えないということか? 不愉快だ。 ヒソカを渡したらもう一週間休暇を貰うよ。」

マチは一方的に通話を切ると、
ヒソカの腰に巻いてあった大きな布(ドッキリテクスチャー用?)を引っぺがして、
屋上から地面に向けて落とした。

「ふう、もう金輪際ヒソカにからまれるなんて、ふざけた真似するんじゃないよ・・・・。」

マチはそう小さく呟いて、ヒソカの首根っこをつかんで屋上から姿を消した。



胸を撫で下ろしているズシの頭の上から、バサッと大きな布切れが落ちてきて、ズシの頭にかぶさった。
「うわっぷ! 何スかこれ!? 
 ・・・風呂敷っスかね? よくわからないけどラッキーっス!」
ズシは風呂敷を肩から羽織ると、"Mito's"に向かって歩き出した。

(それにしても、怖かったっス・・・・。おもわずちびっちゃったっスよ・・・・・)




その頃、

「ズシ〜!! どこ行ったの〜!!?」
「ズシく〜ん!!! お願いだから返事して〜!!!」

ゴンとミトさんは血眼になってズシを探していた。

〜つづく〜


<あとがき>

今回はズシやゴンに纏わりつく変な人をテーマに書きました。
もちろん、害虫や寄生虫というのはW氏やH氏などのことです・・・(汗)。
しかし、ズシに女装って似合いそうもないですね。
ズシの困り果てた顔を想像して思わず吹き出してしまいました。

それにしても最近やたらシリーズ物が増えてきたぞ‥?
ちゃんと完結できるんかい、おい?

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