操作系!×家族?×初めての育児!? PartT



「葉っぱが動いてるっス!」
「葉が動くのは操作系の証です。」

自分、操作系だったんスか・・・・・
てっきり強化系だと思ってたっス



何ヶ月かたち、ウイングさんの部屋に泊まった夜にズシは夢を見ました。


「よし!全く触らないでこの漬物石を動かす練習をするっス!」
そう説明的なセリフを吐くと、目の前にある漬物石にオーラを送ります。
「むっ・・・・、なかなか動かないっスね・・・。うーん、それなら・・・!」
ズシは額の汗を拭うと、今度は違う送り方をしてみました。

するとどうしたことでしょう、漬物石がどんどん小さくなって、小石程度の大きさになってしまいました。
「うわぁ・・・、失敗っス。」
漬物石がなくなったのがウイングさんに知れると、怒られてしまいます。
ズシは困りました。
キョロキョロとまわりを見て、ウイングさんがいないのを確認すると、ものすごい勢いで小石にオーラを送り始めます。
「戻れ!えいっ!!えい!!戻れっっ!」
しかし、小石はピクリとも反応しません。

「ヤバイっス・・・・・。どうしよう・・・・。」


ガバッと起き上がってまわりを見回すと、夢だったことがわかってズシは胸を撫で下ろしました。

しかし悪夢はその瞬間に幕を切ってしまいました。
隣のベッドに寝ていたはずのウイングさんの姿がどこにも見当たりません。
かわりにそこで寝ていたのは、どこかで見たことのあるような男の子でした。
その男の子にはウイングさんの着ていたパジャマの中に包まっています。
ズシは目を疑いました。

「・・・誰スか、この子・・・(汗)。」

冷静になって、よく考えてみます。
思い当たることといえば、今まで見ていた妙な夢のことで・・・

「まさか・・・・」

そのまさかです。
寝ぼけていたズシは、ウイングさんを漬物石だと思い込んで、間違えたオーラを送ってしまったのです。

「いや、きっと何かの間違いっス・・・・、これが師範代だなんて‥そんなはずないっスよね、ハハハ・・・。」
ズシは自分に言い聞かせるように笑います。
「大体自分にそんな才能があるわけないっスね。うんうん、そうっスよ!」
ウイングさんなわけない、とムリヤリ納得しようと努力していると、その男の子の頭に寝癖を発見しました。

それは何かを連想させて・・・。

「寝ていても念は使える」

かつてウイングさんが言っていた言葉を思い出して、ズシは不安になりました。

「やっぱり・・・・」

認めたくない事実を証明できるだけの要素が集まってしまい、泣きたい気分にです

「はああ・・・、なんでこんなことに・・・・。
 たしかむこうは今お昼ごろっスよね・・・・。」
ズシはしぶしぶ自分の携帯電話を取り出して、ハンター協会の番号をプッシュしました。

ピッピッペッポッパッ・・・

「はい、ハンター協会です。ハンターIDを教えてくださいますか?」
「あ、あの・・・、自分まだハンターには・・・・。」
「こちらはハンター専用ダイヤルでございますので、一般の方はご利用になれません。」
「えっ・・そんなこと言われても緊急の用事なので・・・って、オイ!何切ろうとしてん!?
 急ぎの用や言うとるねん・・・、あっ!まてコラ!!おいっ!」
必死の訴えも虚しく電話は切られてしまいました。

「くそっ!!!」

ズシは携帯電話を床に叩きつけました。
もちろん携帯電話はバラバラ。
これではもう連絡を取ることはできません。
「ああっ、しまったっス!!」
ズシ頭をかかえました。
ずっとウイングさんと暮らしてきたので、行動パターンが似てしまうのです。
「電話ボックス探しに行かなきゃ・・。」

ズシは泣きべそをかきはがらパジャマのままで近くの電話ボックスを探しに行きました。



残された手段は、ハンターライセンスを持つ人に連絡を取ってもらうことしかありません。
幸運にも、ズシにはライセンスを持つ知り合いがいました。

「え・・・と、ゴンさんの番号は・・。」

ピッポッパッペ・・・・

「もしもし、ゴンです。」
「あ、ゴンさんスか?ズシっス!」
「ズシ!?わあ、ひさしぶりぃ!元気だった?」
「それが全然元気じゃないんスよ!」
「どうしたの?あ、そっか!もしかしてカゼひひたんでしょう?ダメだよ、ちゃんと布団かけて寝なきゃ。」
切羽詰まったこの状況で、他愛のない話をしている場合じゃありません。
「ゴンさん、実は今そんなこと話してる余裕ないっス!」
「えーっ、いいじゃん!せっかく久しぶりに話してるのに・・・・。」
電話越しでは切迫した空気が伝わらないみたいです。
段々ズシはイライラしてきました。

「つべこべ言わずに人の話を聞くっス!師範代が自分の念で子供になっちゃったっスから、
 ネテロ(←呼び捨て!?)に連絡を取って、助けを呼んで欲しいっス!」
ズシは受話器に向って叫ぶと、肩で息をします。
「うん、わかった。ウイングさんが、子供を作っちゃって困ってるんだよね?」
「違ぁーう!師範代が子供になっちゃって困ってるっスよ!!」
ズシは心労で倒れそうです。
「うーん、何だかよくわからないけどとにかく伝えておくね。じゃあね。」
ゴンはさりげなく不安を残して、何のためらいもなく電話を切ってしまいました。
「あっ!ゴンさん?おいっ!!」
ズシはツーツーと音をたてる受話器に向って大声で呼びましたが虚しいぐらい無駄でした。
ズシはがっくり肩を落として、途方にくれました。
(はあ・・・、この先どうしたら・・・)
トボトボと歩いて部屋に帰るその姿は、どこか悲愴感が漂っていました。




夜が明けて目を覚ましても、やはり隣のベッドに寝ていたのは、ウイングさんっぽい男の子でした。
寝顔を覗きこむと、とても愛らしく寝息を立てています。
ズシは自分の師匠だというのに、思わず可愛いと思ってしまいます。

(・・・・何考えてるんスか!これは師範代っスよ!!)

ズシは自分に言い聞かせます。
その時ウイング君が寝返りをうちました。

「・・・う・うぅーん・・。」

真っ白なお腹をかきながらうなる姿がとても可愛らしくて、
ズシは思わずウイング君のほっぺをつんつんしていました。
「うわぁ!やわらかいっスーvv・・・って、何をやってるんスか・・・自分のバカ!」
ズシは自分の頭にゲンコツしましたが、思いの外痛くて一瞬意識が飛んで、よろけてしまいました。


その様子を窓の外から伺っている少女が一人いました。

「ふーん、あれが問題の子供か・・・。隣にいるのがズシって子ね・・・・。フフ・・・どっちも美味しそうだわね・・・。」
少女はふわっと屋根から飛び降りました。

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