操作系!×家族?×初めての育児!? PartU

ズシがしばらくウイング君の愛らしい寝顔に見とれていると、ウイング君は目を覚ましました。
目をパジャマの袖でこすっている姿が何ともいえない可愛らしさです。
「んん・・・、あれ、ここ、どこ。」
寝ぼけまなこのウイング君は、きょろきょろすると、急に目に涙をためました。
「・・・・ひっく・・・、お家に帰りたいよぉ!うわぁ〜ん!!」
まさかこんな反応をされるとは思ってもみなかったズシは焦りました。
「ああああ、泣かないでっス!お兄ちゃん何も嫌なことしないから、ね?ほら、高いたか〜い!」
とりあえず大泣きしているウイング君をあやそうと、抱っこします。

スポッ・・・・

着ていたパジャマが大人サイズだったので、全身が抜けて素っ裸になってしまいました。
「あああっ//////!わ〜ん、お兄ちゃんのバカ〜〜!!」
ウイング君は両足をバタバタさせて泣き喚きます。
「ああ!ごめんっス!!すぐお着替え持ってくるからね。」
ズシはウイング君をベッドに置くと、慌ててタンスの中をあさりました。
しかし、どこを探してもウイング君にちょうどよいサイズの服が見つかりません。

ピンポ〜ン!

どうしたらいいか迷っていると、玄関でチャイムが鳴りました。
「どなた様っスか!!?・・・ったく・・。」
ズシはあからさまに不機嫌そうに応答します。
「あ、ズシ様はいらっしゃいますか?」
玄関のドアの前にいるのは、どうやら女の子のようです。
「自分っスけど、何かご用っスか?」
「ああ、よかったv」
何がよかったのかわからず、ズシは首を傾げました。
「突然だけど、かわいい奥さんになってあげるから、中に入れてくださいな。ウフvv」
ズシの額につつつ〜っと汗が流れます。
「・・・、何のつもりか全然よくわからないんスけど、今それどころじゃないので。じゃ。」
受話器を置こうとすると、女の子が言いました。
「あの〜・・・、子供用の服ならあるんですけど・・・。」
今のズシにとって、その言葉は決定的でした。
「えっ、本当っスか!?」
何でウイング君に着せる子供用の服がなくて困っていることを知っているのか、
冷静になって考えるよりも先に、身体が勝手に玄関のドアを開けてしまいました。

「私、ビスケっていうの。よろしくねv」
にっこり微笑む少女は、ズシと同じぐらいの背格好で、大きな目が印象的です。
ズシの頬が思わず緩みました。
別にビスケに見惚れたからではなく、目の前の困難がひとつ去ったことに安心したのです。
「今お茶を用意するっスから、上がってくださいっス。」
ズシはビスケをニコニコしながら招き入れました。
「その前に、服を着せてあげないとダメだわさ。ほら、これ。」
「あ!うっかり忘れる所だったっス!」
差し出された紙袋をひったくると、ズシは急いでウイング君がいる寝室に入っていきました。


「無駄な動きが多すぎるわね・・・。なかなか才能はありそうだけど・・・。」
ビスケは後を追いながら、ズシの動きを分析していました。


ウイング君は泣き疲れて、裸のままおねんねしていました。
ズシは起こした方がいいのか、そのまま寝せてあげた方がいいのか困ってしまいました。

「どうしたの?早く着せてあげないと。」
ズシはいつの間にか後ろから覗いているビスケの方を向いて、口の前に人差し指を立てました。
「今寝てるから静かにするっス。」


「それにしてもそっくりね・・・。」
「・・・何のことっスか?」
「ああ、そうそう、まだ言ってなかったけど、あたしはあんたの師範代の師範代ってやつよ。
 あんたが協会に助けを呼んだから、来てあげたってわけ。」
またしてもズシの額に汗が流れます。
「・・・・・・・・・・・・。」
「信じられないって顔ね。これでもあたしは57歳なの。」
「ご‥ごじゅう・・なな・・・・?」
「なに?その顔・・・。」
ビスケがものすごい形相で睨むので、ズシはすっかり萎縮してしまいました。
「‥・・・い、いや・・・確かに念で若いままでいられるのは知ってたっスけど・・・」
「つまりそれは、私がババアだとでも言いたいわけ?」
ズシはビクっと身体を震わせました。
「め・・滅相もないっスよ・・・・!」
「本当?ならいいんだけど。」

ズシは胸をなでおろすと、その瞬間お尻に強烈な痛みが走りました。

「うわっ!!」
「びっくりしてみたり、ほっとしてみたり、本当はババアとか思ってたんだわさ!!」
ビスケのフェイントにズシは見事にはまってしまったのです。

「うわ〜ん、ゴメンなさいっスぅ〜〜〜!!!!」
「ダメ!お尻百叩きの刑!!」
ビスケはズシをがっちり抱え込むと、胴着の袴をひんむいてお尻をビシビシたたき始めました。
「ウイングが部屋の備品をこわしてお金がないって言うから、
 本当は殴り飛ばしたい所を、お尻百たたきで勘弁してやってるんだからね!」
「ひいいい〜!!」
「えい!ほら、まだ後30回残ってるわよ!えい!えい!」

「はい終わり!散々たたいといてなんだけど、あんた結構可愛いお尻してるわね。
 なかなかいいたたき心地だったわ。」
「/////////!!」
女の人にお尻を見られてしまったという事実にいまさら気がついたズシは、慌てて袴を上げました。


「それにしても、この子本当にウイングにそっくり。」
ビスケが眠っているウイング君を見つめて言いました。
「何を言ってるっスか・・・?これは師範代っスよ???」

「えっ・・・・・・?あんたこそ何を言ってるの?これはウイングの隠し子でしょう???」


ズシの袴がストンと落ちました。
「わっ・・・/////!」

ビスケは少々呆れ顔です。
(あの子が師匠だけあって、ボケ方が似てるわね。)

「全然違うっスよ!(やっぱり・・・ゴンさんものすごい勘違いしてたっス・・・・(汗))」
「何がどうちがうの?この子どう見てもウイングにそっくりだわさ?」
ビスケはウイング君の寝顔をまじまじと見つめてから、首をひねりました。
「だからこの子は師範代だって言ってるじゃないスか!」
「そう言われてもねぇ・・・。そんな子供だましみたいな話、信じられないわよ。」
ごもっともな反応をされて、ズシは溜息をつきました。
「話すとものすごく長くなるっスけど・・・」

ズシは昨夜見た夢のこと、目が覚めたときに起ってしまったこと、
ハンター協会に連絡出来なかったこと、
ゴンが凄い勘違いをしていたことなどを、事細かに包み隠さず話しました。


「つまり、まだ基礎が完成してもいないのに、
 夢だとはいえ、そんな高度な念を試そうとしたから大失敗したってことね。
 大体そんな夢見ること自体、心の修行がなってなかったんじゃないの?」

ビスケの一言がズシに鋭く突き刺さりました。
突っ込み属性のズシを口先だけでここまで手玉に取る強者が、いまだかつて存在したでしょうか!

「・・・・・・・・・・・・・・。」
「ああ、そんな顔するんじゃないよ。
 寝ぼけてたとはいっても修行中の段階でウイングをこんなにしたんだから、
 あんたにもかなり素質があるってことだわよ!
 どっちにしてもウイングの代役を任されて来たんだから、これからガンガン鍛えなおしてやるわ。」
「お・・・オス・・・。でも・・・・」
ズシの表情は曇っています。
「何よ?」
「修行の方は何とかなりそうっスけど、育児の経験がないっスから・・・。」
「ふう・・・、目標を達成したらアンタもどうせ師範代になるんでしょ?
 今から経験を積んどいても損はないはずだわよ。
 それに一度ウイングを育てたあたしがいるんだから、まあ大丈夫だわさ。」
「そうっスか・・・・? オス!自分がんばるっス!!」

「むにゅ・・・・ふあああ・・・。」
そのとき、ウイング君がうっすらと目を開いて、大きなあくびをしました。
「ほら、服を着せてやらないと。」
ビスケはパンツと靴下を手渡しました。
「・・・・・・・。」
しかしズシはフリーズしてしまいました。
憧れてやまない(?)ウイング(さん)君の裸を直視するなんて恥ずかしいことが出来ないのです。
「なにやってるの?早くしてやりな。」
「・・・オス。」
意を決したズシは目をぎゅっとつぶってパンツをはかせてやりました。
そんなズシをよそにウイング君はぽえ〜っとねぼけ顔です。

「アンタ、まさか‥・・・!」
ズシの様子を不審に思っていたビスケは、急に驚いたような声をあげた。

「うわっ、急に何するっスか//////!!?」
変なところをさわられてズシの身体から湯気が上がり始めました。
「相当たまってるわね、これは・・・。」
「なな・何のことっスか/////!」
ビスケは意味ありげなウインクをズシに向けます。
「あたしが相手してあげようか?」
「・・・・・・・・・・・・・。」

「何?その反応・・・。」
ビスケの鋭い目線がズシを突き刺します。
「・・・・自分、まだ子供っスから・・・・・。」
「あたしがババアだから嫌だって・・・・?」
ズシは本能的に身の危険を感じ取りました。
「そ・そんなこと言ってな・・・・・ぐぉあッ!!!」
弁解する暇もなくビスケのアッパーがズシの顎に入り、窓ガラスを突破して飛んでいってしまいました。

「ああ〜‥・・・、窓ガラスが・・・・。」
空中を飛行しながらズシは弁償代のことを思って泣いていました。


「むにゃ・・・あ・師範代、おはようございます・・・・・ふああ」
ようやく体が目覚めたウイング君が両腕をビッと開いて挨拶します。
「ほら、靴下はいて!ダラダラしない!」
ビスケがウイング君を扱う様は、その姿に似合わずまるで年季の入った母親のようです。
「表裏が逆!何度言ったらわかるんだかねえ。ズシ、朝食買ってきて。」
「オス!」
いつの間にか戻っていたズシは財布を持って玄関を出ようとしました。
「あ、ちょっと待った!うさぎ跳びで行って帰ってくること!」
「えっ、マジっスか・・・・!」
「もち!」
ビスケはズシに向かってVサイン。
「オ・オス!」


(ひ〜・・・、恥ずかしいっス//////。)
うさぎ跳びで街中を移動しているので、周りから奇異の視線が向けられます。
(いや、でもこれが心の修行なのかも知れないっス!)

ズシの苦難の道程は今始まったばかりです。


つづく

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