〈2〉 師範代×暴走×バトル開始!
クラピカ「ようやく、天空闘技場についたな。すっかり夜遅くになってしまった」
レオリオ「ああ。 …ところで、お前の仕事仲間ってのは、どこにいるんだ?」
クラピカ「今、電話で連絡するところだ。
………センリツか? ああ、私だ。 ……そうだ。今ついたところだ。
………分かった。すぐ行く」
レオリオ「何て言ってたんだ?」」
クラピカ「闘技場近くに、宿をとっているらしい。しかも、その宿に今回のターゲットも泊まっているそうだ」
レオリオ「よし。なら、さっさと行こうぜ」
クラピカ「この宿のはずだが…」
センリツ「クラピカ〜!」
クラピカ「センリツ! 待たせてしまってすまない…」
センリツ「いいのよ… あら? そちらの方は?」
クラピカ「ああ。彼はレオリオ。ほら、前に君に話したことがあっただろう」
センリツ「ええっと、あなたと一緒にハンター試験を合格した人でしたっけ?」
クラピカ「そうだ」
センリツ「はじめまして、レオリオさん。私はセンリツよ。クラピカの仕事仲間なの。よろしくね」
レオリオ「いや、こちらこそ、よろしくたのむぜ」
クラピカ「では、早速任務開始、と言いたいところだが、今日はもう遅いので、明日から行動を起こす。
朝早くからことに移るので、もう寝たほうがいいな。…だが部屋をとらなくてはいけないな」
センリツ「クラピカ達の部屋は、とっておいたわ」
クラピカ「すまない」
レオリオ「で、明日は何時起きだ?」
クラピカ「少なくとも、6時前には起きた方が良いな」
レオリオ「おい。えらく早くねえか? もっと遅くても良いんじゃないか?」
クラピカ「いや。ズシはいつも、早朝トレーニングを6時からしているそうだ。
だから、それより早く準備に取りかかる必要がある」
レオリオ「マジかよ… オレ、もう寝るぜ…」
クラピカ「私も、もう寝ることにする。ではセンリツ、また明日…」
センリツ「おやすみなさい」
翌朝 A.M.6:00
レオリオ「ふあ〜、ねむいな。まだ出てこないじゃないか、ズシって子は」
クラピカ「レオリオ、静かにしていろ。 ……出てきたようだな」
ズシ 「うおっす! 今日もいい天気っす。早速、朝練をはじめるっす!」
レオリオ「あれがズシか… 思っていたより、全然小さい子じゃないか…
ゴンやキルアよりも年小さいんじゃないか?」
クラピカ「小さくてもあなどれないぞ。纏しかできない半端者のお前よりは強いかもな」
レオリオ「ほっとけ!」
クラピカ「どうやら、最初はジョギングのようだな… まあ、これはつける必要がないな。
帰ってくるのを待とう」
センリツ「彼はいつもジョギングをして、その後、ここで筋トレをはじめるの。
一時間ぐらいしたら戻ってくるわ」
レオリオ「なあ、その間寝ててもいいか?」
クラピカ「起き続けるか、一生眠るか、このジャッジメントチェーンで決めてやろうか…」
レオリオ「わ、分かった! 起きますよ! 起きてりゃいいんだろ!」
A.M.8:00
ズシ 「2152、2153、2154…」
レオリオ「アイツ、毎朝いつもこんなことやっているのか…」
センリツ「ええ、腕立て、腹筋、背筋を各3000回ずつ、毎朝よ」
レオリオ「マジかよ…」
ズシ 「2999、3000! ふうっ、やっと終わったっす」
ウイング「ズシ、朝練は終わったかい? ご苦労様」
ズシ 「師範代! おはようございますっす!」
レオリオ「あの人がズシの師範代か… そうは見えないな…
師範代っていうから、もっとゴツイ奴を想像していてんだがな。
おとなしい好青年っていう感じだな」
クラピカ「ところがな、人は見かけによらないものだ。
あの笑顔の裏には、どす黒い欲望が隠されているのだよ」
センリツ「クラピカ、言いすぎよ。私には、心臓の鼓動で分かるもの。
確かにあの人の心音は少し変わっているけれど、悪い人の持つそれとは違うわ」
クラピカ「…だが果たしてそうかな?」
ウイング「ズシ、汗をかいたでしょう? お風呂を沸かしておきました。
今から私がその体をきれいにしてあげましょう。すみずみまでね…」
ズシ 「…い、いや、結構っす! 自分、そんなに汗かいていないっすから…」
ウイング「ではズシ、早速、朝の行を始めましょう。
寝技の修行です。私が実践して教えましょう。
ちなみに今日の技には胴着は不要です。さあ脱ぎなさい!」
ズシ 「……………… え、ええっと、そういえば朝ご飯まだだったっす。ご飯にしなくちゃ…」
ウイング「ズシ、ご飯を作るなら、このピンクのエプロンを着けなさい。昨日わざわざ買ってきたものです。さあ!」
ズシ 「………………………………」
ウイング「ズシ! どこに行くのですか! 私を無視しないで下さい! ズシ!」
センリツ「………………………………」
クラピカ「私の言った通りだろう、センリツ?」
センリツ「変な人の心音って、こういうメロディーなのね…」
A.M.8:30
クラピカ「センリツ、二人の様子は聞こえるか?」
センリツ「ええ、大丈夫よ。しっかり聞き取れるわ」
レオリオ「しかし、便利な能力だな… 盗聴器いらずだ」
クラピカ「では、彼らの会話を、一言一句そのまま伝えてくれ」
センリツ「分かったわ」
ウイング「さあ、ご飯も食べたことだし、修行を始めましょう」
ズシ 「おっす。……でも、寝技は遠慮するっす…」
ウイング「では、今日は趣向を変えて、ケガなどをしたときの救急手当ての仕方を教えましょう」
ズシ 「救急手当てっすか?」
ウイング「そうです。これも立派な修行ですよ。なぜなら、戦闘には負傷がつきものです。
だから、こうした知識や技術も自分の身を守る立派な強さの一つなのです。
また、自分にとってだけでなく、傷ついた仲間を救うことにも役に立ちますからね」
レオリオ「おおっ! まともなことをいうじゃないか」
クラピカ「まあ、彼は一応、腐っても師範代だからな」
ウイング「ズシ、分かりましたか?」
ズシ 「うおっす! 師範代はやっぱりすごいっす! 尊敬するっす!
それで、何するっすか?」
ウイング「まずは基本から始めましょう」
ズシ 「基本っすか?」
ウイング「ええ… 人工呼吸です…」
ズシ 「じ、じ、じ、じんこーこきゅー……っすか……?」
レオリオ「………………………………」
クラピカ「…………しょせん、腐った師範代だったな」
ウイング「さあ、ズシ! 恥ずかしがってはいけません!」
ズシ 「ち、ちょっと、待ってくださいっす!」
ウイング「本番では、待っているヒマなどありますか? さあっ、さあっ!!」
ズシ 「た、た、助けてっす〜〜!」
??? 「何してんだ! この変態!!」
ドカッ!
?? 「大丈夫? ズシ?」
ズシ 「ゴンさん、キルアさん!? 助かったっす〜〜!」
キルア 「ったく、弟子に手をだす師範代がいるかよ!」
ウイング「違いますよ。あれは修行のひとつです」
ゴン 「…そうは見えなかったけどなぁ…」
レオリオ「ゴンにキルアだって!? なんであいつらこんな所にいるんだ?」
クラピカ「ああ、そういえばまだ伝えていなかったな…
今、ゴンとキルアは、念の修行のため、ズシと三人であの師範代のもとで修行中なのだ」
センリツ「へえ、面白い偶然ね。あの子達と知り合いだったの…」
レオリオ「ああ、すごい偶然だな… でも、これはよかったな。
あの変態師範代の暴走を止めてくれる奴がいてくれて…」
クラピカ「ふっふっふ、それはどうかな?」
キルア 「だいたい、あんたとズシじゃあ、年が不釣合いだし、何より犯罪だろうが。
さっきのアレも、十分犯罪行為だぜ」
ウイング「キルアくん、愛に年齢は関係ありませんよ。それにあれは、ただのスキンシップだったのです」
キルア 「だから、それが犯罪だって言っているんだよ! オレのズシに手を出すなよ!」
レオリオ「キルア、お前もかよ… でも、あいつ確かゴンが好きじゃなかったのか?」
クラピカ「調査が足りないな… レオリオ。
彼の故郷、パドキアでは、一夫多妻制が認められているのだよ。
ゴンは本妻としてキープしつつ、第2のターゲットとして、ズシを狙っているのだ」
レオリオ「一夫多妻制って言ったって、あいつら男だろうが!」
クラピカ「全くもって、調査が足りないな、お前というやつは…
パドキアでは、同性愛結婚が認められているのだよ」
レオリオ「…もう、いやだ……」
ズシ 「もういいっすよ、キルアさん。許してあげましょうっす」
キルア 「だいたい、ズシ! お前も気を付けなきゃ駄目だろうが!
たまたま今日、オレ達が早く来たらよかったけど、
そうじゃなかったら、あいつの毒牙にかかっていたんだぞ!」
ゴン 「ねえ、ズシ? さっき、ウイングさんが修行っていってたけど、何の修行だったの?」
ズシ 「救急処置の訓練で、人工呼吸の練習っす…」
ゴン 「(うわ〜! 下心、見え見えだな〜)」
キルア 「(ったく、せこいこと考えるな… ん、いや待てよ)
……なるほどな、確かに大切な修行だな…」
ゴン 「ええっ? キルア、何言っているの?」
ズシ 「キルアさん? そうなんすか?」
キルア 「ああ。やっぱりこういう修行もつんでおいた方がいいぜ
何事も経験っていうしな」
ゴン 「そうなの…?」
ズシ 「…だとしたら、師範代に悪いことしたっす…」
ウイング「おお、ズシ! 分かってくれましたか! それでは早速…」
キルア 「(そうはさせねーよ!)ズシ! オレが教えてやるよ。
人工呼吸は基本だから、わざわざウイングさんの手をわずらわせることないしな…(ニヤッ)」
ズシ 「そうっすね… じゃあ、よろしくお願いしますっす!」
ウイング「ああ、ズシ… いいのですよ、そんな修行をしなくても…」
ズシ 「大丈夫っす。師範代もさっき、大切な修行って言ってたっすから、頑張るっす!」
ウイング「(しまった… ここまできて、作戦が裏目に出るとは…)」
キルア 「(しめしめ、計画通りだ…) じゃ、ズシには、特別に、ゾルディック家スペシャル版を教えてやる。」
ズシ 「どんなのすか?」
キルア 「それは、試してみてからのお楽しみ♪ (ただの、ベロちゅーだけどな♪)
じゃあ、行くぜ…」
バキッ!!
キルア 「がっ!! ゴン! 痛てーじゃないか! 何しやがる!」
ゴン 「キルア! ズシに変なこと教えるな!
あのね、ズシ。キルアの言っていることはデタラメだから、信じちゃ駄目だよ」
キルア 「おい、ゴン!」
クラピカ「ふっふっふ、私好みの展開になってきたな…」
センリツ「クラピカ、何か、怖いわ…」
クラピカ「ここで、少し状況を整理しょう。
今のところ、ズシ争奪戦候補者は、三名いる。
まず第一候補は、ウイング師範代だな。まあ彼が一番付き合いが長い訳だから、優位なのは確かだな。
だが、如何せん年齢差が大きい。キルアの言うとおり、このままでは犯罪者になるのは必須だろう。
第二候補は、キルアか…。 ウイングと違って、年が近いとのが大きな武器だな。
ズシ本人も、同世代の友達はあまりいなかったことから考えてもそれは言える…。
しかし、キルアにはゴンというもう一人のターゲットがいる。二人同時にかまうのは難しいだろう。
二兎を負うものは一兎も得ず、という状況になり得る可能性は大だ
そして、最後は大穴のゴンだ。
今のところ、ゴンに、ズシへの恋愛感情皆無だ。しかも、キルアの恋女房だからな…
しかし、いつズシとの友情が愛情へと変わるかはわからない。
ズシへの過保護的行動からみて、本人が自覚していないだけかもしれないしな…
だが、もしゴンが参戦したら、ゴンが最も有利かもしれないな…
この争いの中、ズシが今、一番安心して心を開いているのは、自分を何かと守るゴンだからな。
やはり、人の心をひきつけるゴンだけになせる業かもしれないな…」
レオリオ「クラピカ… 楽しそうだな…」
クラピカ「この状況を楽しまずにはいられるわけないだろう?
…そうだ。面白いことを考えた。ここで一つ賭けをしないか?」
レオリオ「賭け?」
クラピカ「ああ。とりあえずあの三人の中で、誰がこの闘いに勝利するかをただ純粋に賭けようではないか」
レオリオ「それぐらいなら別にいいか…
そうだな… やはり、王道的に、あの師範代だな…」
クラピカ「センリツは、誰が勝つと思う?」
センリツ「私は、キルア君かしら… 一番こういうことに、慣れているって感じがするから…」
クラピカ「ならば私は、大穴ゴンにしよう… やはり、ゴンの生まれつき持った力が勝敗の決め手とみた!」
レオリオ「それにしても、まだ争っているぜ。あいつら」
クラピカ「しばらくは続くだろう。おそらく、その間に進展はするまい。
少し早めに昼飯でも食べていよう」
センリツ「じゃあ、お弁当でも買ってくるわ」
クラピカ「ああ、頼む… それにしても、楽しくなってきたな… ふっふっふ…」