〈3〉 ズシ×お宝×危うい男



   A.M.11:00



ウイング「……では、午前中の修行はこの位にしておきましょう」
ズシ  「ありがとうございますっす!」
キルア 「なんか腹減ったな…」
ゴン  「それじゃあ、ご飯食べに行こうよ、キルア」
キルア 「そうだな、ちょうど昼時だしな」
ゴン  「ズシも一緒においでよ」
キルア 「お前、確か、90階クラスに勝ち上がったって言ってたよな。
     お祝いに、メシぐらいおごってやるぜ。ついてこいよ」
ズシ  「本当っすか? じゃあ、お言葉に甘えるっす」
ゴン  「ウイングさんは来ないの?」
ウイング「その、私は…」
キルア 「そういえば、ウイングさんは今日、用事があるんだよな〜
     飛行船のチケット買っているの見たんだ。しかも今日の1時発の」
ウイング「キルアくん、いつの間に…」
キルア 「少なくとも、今日中には帰ってこれないよな(ニヤッ)」
ズシ  「そうなんすか? 自分知らなかったっす…」
ウイング「ごめんよ、ズシ。突然の用事だったから。(ああっ、ハンター協会に呼びだされるなんて…)」
キルア 「まあ、安心して行きなよ。ズシの面倒は、ちゃ〜んとオレがみといてやるからさ♪」
ウイング「くっ!(まさか、知られていようとは、不覚…)」
ゴン  「じゃあ、オレの部屋に泊まらない?」
ズシ  「うわ〜っ、いいんすか? 自分、一回、200階の部屋で寝てみたかったっすよ」
キルア 「だったらさ〜、お前ら二人とも、オレの部屋に来るのはどうだ?
     三人でいた方が楽しいだろう? (そして、二人ともオレが……… 笑いが止まんね〜な♪)」
ゴン  「オレはいいけど、ズシはそれでいいの?」
ズシ  「はい! 自分、楽しみッス!」
キルア 「オレも楽しみだ♪ というわけだ、ウイングさん。後はオレ達に任してくれ(ニヤニヤ)」」
ウイング「ううっ!」




クラピカ「予想外の展開だな… これは、ウイングの圧倒的不利だな」
レオリオ「けど、このまま引き下がるとは思えないぜ… 
     いざとなったら、用事をすっぽかしちまえばいい話だからな」
クラピカ「だが、おそらくネテロ会長からの呼び出しだろう。師範には逆らえないからな… 
     そう簡単には、無視することもあるまい…
     まあ、レオリオの言うとおり、このままでは終わらんとも思うが…」
センリツ「クラピカ、あの三人が移動を始めたわ」
クラピカ「よし、ゴン達を追うぞ。これからの動向は肝心だ。見失わないように頼むぞ」






   P.M.0:00



ゴン  「あっ、ご飯が来た。やっと、食べれるね。いただきま〜す!」
キルア 「………ここのメシ、結構うまいな」
ズシ  「本当っすね… おいしいっす」
ゴン  「ねえ? 食べ終わったらどうする?」
キルア 「どうしようっかな。オレ、別にやりたいことないしな…
     ……ズシ、お前、何かやりたいこととかあるか?」」
ズシ  「あっ、その、言い忘れていたっすけど、自分、午後から試合があるっす。
     だから、お二人で決めてくださいっす」
キルア 「そういうことは、早く言えよ。だったら、ズシの試合、見に行こうぜ」
ゴン  「うん、応援しに行くよ」
ズシ  「ええっ! そんなっ! その、お二人がわざわざ見に来るような試合じゃないっすよ…」
キルア 「いいから、いいから。ウイングさんの代わりに、見ててやるよ」
ズシ  「なんか、恥ずかしいっす」
ゴン  「何時からなの?」
ズシ  「とりあえず、1時には控え室に待機していた方がいいっすね…」
キルア 「そっか… 下の階って、試合時間、決まっていなかったんだよな」
ゴン  「じゃあ、食べ終わったら、すぐに行ったほうがいいね。
     それと、後で待ち合わせる場所も決めておこうか」
キルア 「それはいいよ。…ズシ、後でオレのケータイに電話かけてくれ。番号教えておいたはずだよな」
ズシ  「オス!」
ゴン  「じゃあ、そういうことでいいね?
     みんな、食べ終わったみたいだから、そろそろ行こうよ」


クラピカ「ふむ、試合か… 我々も見に行くか」
レオリオ「そうだな。わざわざ、天空闘技場まで来たんだし…
     いや、まてよ。だったら、オレも試合に参加しようかな?」
クラピカ「ケガをするだけだ。止めておけ…
     まあ、力もあり、頭脳明晰な私なら、200階クラスでも楽勝だがな」
レオリオ「……はいはい」






   P.M.1:30



レフリー「クリティカルヒット&ダウン! プラス3ポイント! 
     T.K.O.により、勝者、ズシ選手!」
司会  「おおっと! ズシ選手のT.K.O.勝ちだ!」





ゴン  「やったね、ズシが勝ったよ!」
キルア 「おおっ、あいつ、以前よりも強くなっているな… 
     成長も早いし、念も使えるから、すぐに200階にも来れるぜ、きっと」
ゴン  「うん。オレも、うかうかしてられないな。はやく、念をマスターしなきゃ!」
キルア 「……おっ! 電話だ… ズシからだな…
     もしもし…………  やったじゃん、お前! 90階クラス突破おめでとう!
     ……… 何、照れているんだよ。お前の成長ぶり、なかなか凄いぜ。
     これなら200階もすぐ来れるよ。……… 言いすぎじゃないかって?
     んなことねえよ。素直に思ったこと言っているだけだって。…………
     まあいいさ、それより、これから闘技場の外に行こうと思うんだけどさ…
     闘技場の一階のロビーで待ち合わせようぜ。………… 分かったな?
     それじゃあ、後でな」
ゴン  「ズシ、うれしそうだった?」
キルア 「ああ、勝って一番うれしいのは本人だもんな」
ゴン  「一階ロビーだよね… そろそろ行こうか」
キルア 「その前に寄りたいところがあるんだけど…」
ゴン  「えっ?」




クラピカ「一階ロビーか… 先回りしよう」
レオリオ「キルアの奴、どこ寄るつもりだろう… 気になるな…」
クラピカ「普段の行動から想像はつく… たいしたことではないよ…」
センリツ「それじゃ、行きましょう」




ズシ  「……分かったっす。一階ロビーっすね? それでは、また後で。
      ……それじゃ、自分も向かうとするっすか…」






   P.M.1:40



??? 「やっと、天空闘技場についたな… いい所じゃないか…」
??  「伝令するだけでしょう? 私がすればいいだけなんだから、わざわざ来ることなかったのに…」




クラピカ「先回りしたが、まだ来ていないようだな…」
レオリオ「少し、待ていようぜ」
センリツ「その間に、飲み物でも買ってきましょうか?」
レオリオ「すまないな。ちょうど、喉渇いていたんだ」
センリツ「それじゃあ、買ってくるわね」


クラピカ「…………………」
レオリオ「? クラピカ、どうした?」
クラピカ「いや、ちょっと、あそこにいる男が気になってな…」




??? 「ところで、ヒソカはどこにいるんだ?」
??  「あいつ、ここの200階闘士だから、すぐ部屋が分かると思うけど…
     それにしても、こんなところに来て、他に目的でもあるのかい、団長?」
クロロ 「……相変わらず、勘が鋭いな、マチ。
     ここで二年に一回行われるバトルオリンピアというのを知っているか?
     この大会の優勝者には、賞品として、希少なお宝がいくつも進呈されるそうだ。
     また、優勝者は最上階に住む権利があるという」
マチ  「その優勝者から、お宝を盗むっていうの… 大丈夫なの? そいつ、強いんだろう?」
クロロ 「まだ、盗むと決めたわけではない。第一、そいつがどんな奴かも知らないからな…
     だがどちらかというと、その優勝者の方が興味があるな。
     一度、お手合わせしてみたいな。そいつの念能力も見てみたいからな…
     それと、もう一つ理由がある。
     ここはバトルの地だけあって、他の地にはないほどの、念能力者の宝庫だ。
     だから、気に入った能力を見つけて、そして盗む…」
マチ  「なるほど… でも、そっちがメインみたいだね」
クロロ 「ああ。ヨークシンでの大仕事のために、少し念のコレクションを増やしておきたいからな」
マチ  「…とりあえず、ヒソカの部屋を調べてくるよ…
     フロントで聞き出せると思うから、待っててくれない? すぐ戻るから」
クロロ 「ああ、頼む」




レオリオ「……あの黒いコート着た男か? このくそ暑い時期に、よくコートなんて着てられるよな…
     いったい、何しゃべっているんだろうな。センリツがいないから分からないが… 怪しい奴だな。
     おっ、女のほうがフロントの方に行くぜ…」
クラピカ「…………………あの男!」
レオリオ「あいつがどうしたんだ?」
クラピカ「いや、なんでもないよ。ただ、気になっただけだ…
     それにしても、あの顔を見ていると、殺したくなるな… 復讐したくなる…!
     このチェーンジェイルで縛りつけて、ジャジメントチェーンを心臓に突き刺したくなる…!」
レオリオ「お、おい!? 何、ぶっそうなこと言っているんだ! それに、お前、眼が赤いぞ!」
センリツ「二人ともお待たせ… あら? どうしたの?」
クラピカ「いや、何でもない…」
レオリオ「十分問題あったよ…」
センリツ「あら、どうやらズシくんが来た様ね」
クラピカ「ん? あの男、動きだしたぞ…」




クロロ 「(ただ、待っているのもつまらんな…  んっ?)」


ズシ  「まだ、ゴンさん達、来てないみたいっすね… うわっ!!」


  ドン!


ズシ  「ああっ! すみませんっす! よそ見をしていて… お怪我はないっすか?」
クロロ 「ああ、たいしたことは……!?」
ズシ  「どうかしましたっすか?」 
クロロ 「君… 名は何と言うんだ?」
ズシ  「じ、自分っすか… ズシと言います……」
クロロ 「(………かわいい… 好みだ…! 久しぶりのお宝… ぜひ手に入れたい… 盗賊の血が騒ぐな…)」
ズシ  「あの…」
クロロ 「……オレの名前は、クロロ=ルシルフル、26歳だ。仲間からは、ダンチョ−と呼ばれている」
ズシ  「はあ…」
クロロ 「オレが許す。クモに入れ」
ズシ  「はあ?」
クロロ 「君は運がいい… かねてから、クモの予備メンバー募集を考えていたのだ。(というより、今考えた)」
ズシ  「はあ…」
クロロ 「欠員したときにすぐ埋め合わせができるようにとな…
     将来性(かわいさ)あふれる男の子がその(ショタ的)対象だ…
     君はその、栄光ある予備軍(クロロハーレム会員)一号だ!」
ズシ  「はあ…」
クロロ 「主な活動内容は、(オレへの)慈善活動(=援助交際)だ…」
ズシ  「はあ… (何かこの人、変っす。はやめに離れたほうがいいっすね…) 
     あ、あの…」
クロロ 「何だ?」
ズシ  「自分、人を待たせているっすから、この辺で失礼するっす」


クラピカ「あの男、どうやらナンパしているようだな…」
センリツ「あのコートの人? ……何かくどくどと、説明しているみたいね…
     あっ、ズシくんが、走って離れていくわ」
レオリオ「危険な奴とでも、思ったのだろうよ… 服装といい、見るからに変な奴だな…」
クラピカ「おい! あいつ、ズシを追いかけていくぞ!」


ズシ  「はあ、はあ、はあ… それにしても、何だったんだろう、あの人…」
クロロ 「なかなか足が速い様だな… 気に入ったぞ」
ズシ  「うわっ、いつの間に!」
クロロ 「オレは狙った獲物は逃がさない
ズシ  「うわ〜〜」
クロロ 「逃しはしない!」
ズシ  「な、なんでついて来るっすか〜!?」
クロロ 「なぜ? ……あらためて問われると答えがたい質問だな…
     だが、案外… いや、やはりと言うべきか… 自分をつかむカギは、そこにあるか…」
ズシ  「何言っているっすか〜〜!」
クロロ 「チェックメイトだ…!」


   バキ!


クロロ 「ぐあっ!」
マチ  「どこほっつき歩いているんだ! この変態!! こんな小さな子に手を出して… 
     変態はヒソカ一人で十分だ! ヒソカと同レベルのことをするな!
     まったく…… 坊や、大丈夫だった?」
ズシ  「あの、助けてくれて、ありがとうございますっす…」
マチ  「いや、大丈夫ならそれでいいんだ。ほら、さっさと行くよ! きびきび歩け!」
ズシ  「………………何だったんすか、あの人達…」


クラピカ「どうやら、助かったようだな… それにしても、あの連中、一体何者だ?」
レオリオ「終わったことだし、どうでもいいことじゃないか」


ゴン  「お〜い! ズシ〜!」
ズシ  「あっ、ゴンさん、キルアさん!」
ゴン  「ごめんね、遅れちゃって… 
     キルアのお菓子中毒がはじまってね、チョコロボくんを買いたいとか言い出してさ…」
キルア 「誰が、中毒だ! けど結局、売り切れだったとは、ついてないよな…」
ズシ  「怖かったっす… 会いたかったっす…」
ゴン  「ズシ? 何かあったの?」
ズシ  「変な男の人に、追いかけられたっす。何かに入れ、とか言って…」
キルア 「ヒソカみたいな変態って多いんだな…」
ゴン  「大丈夫! 今度そんな奴見つけたら、オレがぶっ飛ばすからさ」
キルア 「ヒソカでもか?」
ゴン  「いやっ、ヒソカはちょっと…」 
キルア 「ははは、冗談だよ。んじゃ、外行こうぜ!」

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