いくつかの理想は
互いを受け入れることなく
一つの戦争を生みだした
−ヴェンスブール−
ビッシュ | 「あれは嘘…、だったのか? |
ウプル | 「なんだ、小娘の言ったことを 気にしているのか? |
ビッシュ | 「ふん…、とりあえず 説得を続けるしかなさそうだな |
ウプル | 「手ぬるいんじゃないかい? そんなんじゃ統一は無理だぜ |
ビッシュ | 「この世界の支配者にでも なろうっていうのか |
ウプル | 「とりあえず、言うことを聞いて もらった方が都合がいい |
ビッシュ | 「そうもいかん… |
ウプル | 「じれったい話だ! |
ビッシュ | 「ウプル、私は人間のやったことを 精算したいだけだ… 自分達の力だけで治められない のなら、我々に生きる資格はない! この世界のいわば外側で… 我々の獣で… 人間だけの問題としてケリをつける 整備兵を集めろ! 最後のチェックをさせる |
ウプル | 「ビッシュのだんな… |
ビッシュ | 「ウプル、なんだ |
ウプル | 「どうするつもりだい? いや、あんたは どうしたいと思っているんだ? こう聞くのが正解だな、どうだい? |
ビッシュ | 「どういう意味だ!? |
ウプル | 「あんたの意見はわかる! しかしあれでは納得いかないよ |
ビッシュ | 「そうかもしれん… 何度も言うが好きに解釈していいぞ 無理強いはしない! |
ウプル | 「! |
ビッシュ | 「好きにするがいい… これではいけないのか、しかし… …まだ早い今戦っても解決しない… …だが、本当はもう 手遅れなのかもしれない… …俺にできるのか?… |
一つの理想を支える
多くの意志達、その中から
また一つ、新しい理想が
産まれようとしていた
−メーオスブール−
培養装置には人造の獣が入っていた
ビッシュ | 「純粋な機械の獣は 人が一から造ったものだ… 人の手でケリをつけられよう… だが… あの合成獣たちは… これは人のやることではない |
大きい音が聞こえる
ビッシュ | 「始まったか!? |
タレア・リアのサモナー | 「あなたはリーダーにふさわしくない ウプル様に任せると 言ってくださればここは退きます |
ビッシュ | 「奴に任せられるくらいなら とっくにそうしてるぜ! それでも解ってて来たのか! |
タレア・リアのサモナー | 「もう時間がないのだ! |
ビッシュ | 「愚かな… |
ビッシュ VS タレア・リアのサモナー
一つの理想は、やがて…
その形を内側から変えていった
ビッシュ | 「俺が軍を整えたのは、戦争の柱を 人と共に消滅させるためだ! それでなお生き残る人間がいたら… そんなことが出来るなら、 その時は、 自然の中で生きていけばいい! そのために、他の連中に 獣を使うのをやめさせたいのだ! 誰かが、滅びなければいけないなら 機械に蝕まれた宿業の獣たちと… 我々人間だけでいいだろう? |
タレア・リアのサモナー | 「理想が、 現実を超えたことはないのだぞ… |
そこへウプルがやってくる
ビッシュ | 「ウプル、やるのか! |
ウプル | 「兵を動かしてしまったよ… あんたにも、他の国にもな… |
ビッシュ | 「力で抑え込むほどの戦力はない! 無茶なことを |
ウプル | 「主力の兵団をかくしていたろう? |
ビッシュ | 「なに!奴らを出したのか?ばかな… |
ウプル | 「わからん人だ、我々には戦力がある 本当に全てを終わらせたいのなら、 それが呪われていようが 使ってみせられただろう! それが、あんたの甘さだ! |
ビッシュ | 「大部分の機械は制御できない! 戦力と言うには程遠い… |
ウプル | 「上品に使ってればな… |
ビッシュ | 「ウプル、人間はこれまでに この世界を破壊してきた! それをおぎなうのだ! 人間の領域だけを戦場にしてな… 神も生き物もこの大地も、 何も巻き込まないで解決するさ… そのためには、 コインやケイスの力がいる… 俺は連中に筋の通し方を わからせてやりたいのさ! |
ウプル | 「そのために軍隊が必要なのか? |
ビッシュ | 「戦争の柱が、 なぜ巨大化しているかわかるか? 前の戦争で、 膨大な人の血を吸った大地が… それを吐き出そうとしているのだ! 柱を生んでいるのが人間だけ だとしたら、そんな人間は… 粛正されなければならん! |
ウプル | 「! そんなきれい事じゃたばねらんねえ 決まりだな… |
ビッシュ | 「俺を倒して支配するか、 救いがたい人類を! |
ウプル | 「救うって言ってんだ! |
ビッシュ | 「それをきれい事というんだ! 黙らせてやる! |
ビッシュ VS ウプル
ビッシュ | 「ウプル… あの機械達がどうやって造られたか 知っているよな? |
ウプル | 「少しはね… |
ビッシュ | 「そうか… |
ウプル | 「禁じられた技術を使って、 ありえねえ生き物を造った… それだけじゃないのか? |
ビッシュ | 「召喚術というものはな、 あくまでも魔力で動く獣を 使役するものだ… その魔力の源は何だと思う? |
ウプル | 「魔力の源? そうか! それが呪われた技術なのか!? |
ビッシュ | 「初代の技術者達がどうだったのか、 よくは知らん… ウグトは召喚術を極めていくうちに 時間を超えて 召喚する方法を発見した そのときに俺達の先祖が、 呼び込まれたわけだ… 呼び込まれたのは、 人間だけだったから 技術者は、この世界で 再現できる物から造るしかなかった 魔力をため込むバッテリーを 生き物から造り… 動力を有機物経由で硬質の素材に 伝達する機械を造る… 怪しい物だったと考えた方がいいな |
ウプル | 「よそがうちらを嫌ってたのは その辺が大きいのか… |
ビッシュ | 「それは、また別の問題だな… だが、それも言ってみれば もう一つ十字架を 背負ったようなものさ |
ウプル | 「俺が背負うには、重すぎるか… |
ビッシュ | 「人間全体でも背負えるものか… それだけは解ったのだ… 休めウプル |
ウプル | 「その前に、クンクが… |
ビッシュ | 「そうか…、仕掛けたんだったな 始末はつけるさ… ここからは俺が全部背負っていく あの呪われた獣達も全て… 甘かったという事は解ったつもりだ |
−ツヨー−
ビッシュ | 「…コイン、ハーネット… …連中の力を借りて初めて、 人類の歴史を終わらせられる… …それは、ウプルの言いようだと そうではないということか… 支配は新しい力を呼ぶ、だから もう終わりにしなければならん… …だが、 コイン達はそうは思っていない… 来たか! ここで迷うわけにはいくまい |
ビッシュ VS ディンマイのサモナー
迷うことも、ためらうことも
強い意志に、許される事はなかった
自分こそが理想であるために
ビッシュ | 「世界の為に命を捨てるというのは 俺のエゴだ… …しかし… …こうやって人間のことを、 思いやるのもエゴだ… …それを全部ひっくるめて捨てなけれ れば終わらないというわけか… …コインたちを倒して初めて… …あのウルトなら、 彼女なら答えを出せるというのか… |
強い意志は、全てを背負いながら
その運命を変えていった
−クモウ−
ビッシュ | 「ディンマイに入った ここからだな… コイン、出てこい! …俺の理性が勝っているうちに 俺の手にかかれ… …パルア! よりによってパルアか!?… そんなにすぐにはふっきれることは できないが、だがこれで… すべての迷いを払わせてもらうぞ パルア! |
パルア | 「ビッシュさん! あなたがここに来るなんて! |
ビッシュ | 「許せよ… |
パルア | 「ここはコインが帰ってくる場所… 守らなきゃ! |
ビッシュ VS パルア
ビッシュ | 「ちっ、コインか! |
パルア | 「コイン… |
ビッシュ | 「クンクを倒したのは、 お前だったというわけだな、コイン |
コイン | 「あの人はあんたと違うことを 言ってた気がするよ、だから… |
ビッシュ | 「おとなしく引き上げろって言うのか |
コイン | 「そうですよ!俺だって人間だから 怒ってるんですよ! |
ビッシュ | 「お前さんは力を持っているのに 何故、人間の力を信じないんだ? 選ばれた人間なんだろう? |
コイン | 「神の手を離れたところでこんなこと をしててなんになるんですか 人の数を減らすのが人だなんて、 悲しいですよ! |
ビッシュ | 「じゃあ、神様が減らしてくれるのか |
コイン | 「なに! |
ビッシュ | 「お前たちの言う神って言葉を 使うならな、 人間は人間であると同時に神なのさ これ以上は言ってもわかるまい! 私は…私達は、 信じたものを失ったりしない! |
ビッシュ VS コイン
ビッシュ | 「俺は呪われた獣を俺の手足にした それがこういうことだ! |
コイン | 「あなたが、そんな気になるとは 思ってもみなかった… |
パルア | 「あなたを救世主だとは思いません 人類を破滅させるなどと! |
ビッシュ | 「人間の手に負えなくなったから 神様にねだるってのは、 結局現実から逃げていただけだろう 神の力を借りたところでこの程度だ 何が出来る?何が変わるというのだ |
コイン | 「人の行いが、 神の手から離れることはない… |
ビッシュ | 「むなしい言葉だよ、それは… 俺が、これからの戦いで、 本当の人間のあり方を見せてやる! 見ていればわかる もう力を奮うことはできまい 後のことは、お前達だけの問題だ! |
コイン | 「それじゃあ甘いんじゃないのか! |
ビッシュ | 「ああ、俺は甘いさ! だが、それが現実だ… 認めた上で絶望に挑むのが俺なりの 覚悟の決め方だということだ! |
コイン | 「あんたは勝ったんだ、俺は… |
ビッシュ | 「もう、それでいい… とりあえず、 戦力を完全に整えないとな… |
−ヴェンスブール−
人造系召喚師の本拠地にハーネットがやってきた
ビッシュ | 「驚いたよ、 こんなふうに入り込んでくるとは… やっぱりお前さんが一番切れる こうなったからにはゆくぞ、 ハーネット |
ハーネット | 「ビッシュ、よして! それにみんなを止めて! |
ビッシュ | 「あんたも戦争の一部なんだ、 後戻りはなしだ! |
ビッシュ VS ハーネット
ビッシュ | 「ハーネット、自然の力を借りること すらもう許されるべきじゃない! |
ハーネット | 「そんなこと… 本質さえ許せるなら、 わかりあうことだって出来る… あなたの力なら出来ないわけはない |
ビッシュ | 「わかりあうことは悪いことじゃない だがな、力というものは それ自体呪われたものだとわかった それで人間を覆い尽くすなど、 出来はしないとわかったのだ もう、力は使わないことだ… |
−ライカルアック−
ヴッコ | 「よう!おまえか… |
ビッシュ | 「ケイスの子飼いの… |
ヴッコ | 「俺は本当はどうだっていいんだ はじめようぜ! 死に方は決めさせてやる! |
ビッシュ | 「貴様ごとき! |
ビッシュ VS ヴッコ
彼には答えが必要だった
たとえ、それが嘘であっても
ビッシュ | 「急いだほうがいいのか… 俺は、ためらったほうがいいのか? |
ビッシュは迷っていた
ウルト | 「真実? あー…、んー… それってすっごくよくできた 嘘のことよね? |
ビッシュ | 「ウルト、お前が知っているのか!? この世界と、柱のありがたみを! 俺は、人が生きるに値すると 思っていない! 俺を変えてみせるか!罪の塊に… …ウルトは、奴のところか… |
−マウ・ザウ・アック−
ビッシュ | 「久しぶりだな、ケイス! |
ケイス | 「ん…、珍しい客だな |
ビッシュ | 「ウルトに会いたい、話がある! |
ケイス | 「プロポーズでも? |
ビッシュ | 「ケイス! |
ケイス | 「戦争の柱をどうすることもできない のはみんな知っているんだ あいつの言うことに 振り回されて、どうする!? |
ビッシュ | 「人の歴史は終わる… なら、それはどうでもいいことだ! |
ケイス | 「なるほど…、で? お前の戦いは見ていたのだ たいしたものだよ… 心では追い詰められていながら、 やつらを殺さずにここまできた だが、俺だけは殺さねばなるまい その非情さなくしてこの後は ないと思え、ビッシュ! お前の理想は… コインや俺やハーネットの死でしか 成就しない究極の選択だ! それを選んでおいて 情におぼれるなど… 俺の手でお前を 冥府へ送り込んでやる、死ね! |
ビッシュ | 「言葉をまやかしに使うのか! |
ケイス | 「言葉は機械だ! お前が一番うまく使っているだろう |
ビッシュ VS ケイス
ケイス | 「やれるじゃないか、ほめてやるぜ… |
ビッシュ | 「俺は… |
ケイス | 「最後まで、その十字架を降ろすなよ |
ケイスは死んだ。
−戦争の柱正面−
ウルト | 「ケイスの声が聞こえた… 私は感情が一番正しいって思ったの だから… 呪われた歴史を終わらせたいのなら 私の感情に勝ってね!ビッシュさん |
ビッシュ | 「ウルト…、 俺は、悪意を放っているのか? |
ウルト | 「ううん、それは違うわ!たぶんね… だからって善意でもない… あなたが決めたっていうだけの ただの事件… だからここからは私が納得するのが 一番重要なのよね! あなたが私を訪ねてきたんだから… |
ビッシュ | 「そうだな…、許せ! |
ウルト | 「私は…、あなたを倒したい! |
ビッシュ VS ウルト
敵対する理想を全て滅ぼしても
そこに、彼の求める答えは無かった
ウルト | 「とどめをためらう人に… 人が滅ぼせて? |
ビッシュ | 「俺は聞きたいことがあったんだ… しかし… 答えは俺がつくるしかないのか… よかろう!地獄をこの目で見るのは いやじゃない! |
ウルト | 「ケイスだけを殺して… それも進歩ね… |
その世界の理想…
それは、たどり着けない答え
−戦争の柱新世界−
ウグトの魔が現れた。
ビッシュ | 「何のつもりなんだい、じいさん! 魔になってまで… いったい、 何をやり遂げようっていうんだ! |
ビッシュ VS ウグトの魔
そしてビッシュはウグトの魔を打ち破った。
崩れゆく空間の中で、ビッシュは回想を見る。
ウルト | 「ウグトは、知識そのものでした それは人に敵対するものだから… |
ビッシュ | 「そんなことはない! |
ウルト | 「どうして? |
ビッシュ | 「知識は人そのものだ!だから… 人は知識と心中しなけりゃならん! |
ウルト | 「あなたは、そう思っているのね… なぜそう思うの? |
ビッシュ | 「それが真実だ! |
ウルト | 「真実?…あー…ん… それって、 すっごくよくできた嘘のことよね? |
ビッシュ | 「う、嘘とは何のことだ! |
終わりの無い崩壊は続く。
ビッシュ | 「ウグトさんよ!俺たちを… 本当に連れて行ってくれるのか!? どうしたんだ! ウグト!あんたは、 世界をつくっていたのか? 俺たちはそこに… |
柱の魔は、彼をとりこみ 最後の力を永久に封印した 全ての力が失われ 世界の全てが無力となった それは、 その世界の理想 そして、 世界の終末は永遠に続いた |