いくつかの理想は
互いを受け入れることなく
一つの戦争を生みだした

−クモウ−

パルア 「コイン!
コイン 「今いくよ…
パルア 「神殿でウラムルト様が待ってるわよ

ねぇコイン話し合いで何かあった?
コイン 「たいしたことじゃない…
大丈夫だよ、パルア
パルア 「ちゃんと教えて!

今起こってることって今までと
ちょっと違う感じがするのよ

ウルトはいなくなるし…

コインはね、優しすぎるから
敵をつくるのよ、わかる?
コイン 「それはちょっと大袈裟なんじゃ
ないか、パルア?
パルア 「そうね、アハハ…
コイン 「話し合いって言ったって

今まで憎しみあってて、まともに
口をきいたこともなかったんだ

急に人類の危機なんていわれたって
まとまれるわけがないよ
パルア 「そうよね…
仲間ってわけじゃないんだもんね…

駄目だったのね…
コイン 「ウルトはたぶんケイスの所にいるよ
あいつならそうするさ

行かなきゃ、
会えなくなるかもしれないから…
パルア 「コイン…、ウルトが好き?
コイン 「友達だよ、もちろん好きさ
パルア 「ん?

地震のような揺れが建物全体を襲う。

パルア 「コイン、急ごう!

危険を察し、ウラムルトのもとへと急ぐ。

コイン 「ウラムルト様!
ウラムルト 「からくり使いの連中が
そこまで来てるみたいだな

とうとうタレア・リアも
愚民どもの仲間入りか
コイン 「本隊ですか?
ウラムルト 「わからん・・・

おそらく先発隊のものだろうから、
まだたいしたことはあるまい
コイン 「俺が行きます!
パルア 「コイン!無茶じゃないの?
コイン 「先発隊ぐらいなら大丈夫だよ、
パルア…

ビッシュはまだ来ないさ、
あの人は解っているはずだから・・・
ウラムルト 「簡単に人をいい人だと
思うんじゃない!
コイン 「わかっています、ウラムルト様・・・

行ってくる…
パルア 「わかった…

じゃあ、このカリパス様の
お守りを持っていって…

ね…、私ここで祈ってるから!
コイン 「ところで…
ウラムルト 「なんだ、コイン?
コイン 「愚民って言い方はよくないですよ
それじゃあ、いってきます!

外で会ったのは、人造系召喚師の集うタレア・リアのサモナーであった。

タレア・リアのサモナー 「なんだ、子供じゃないか!

楽にしてやる、死ね!
コイン 「俺は子供じゃない!
タレア・リアのサモナー 「ハッハッハ… 覚悟しろ!

コイン VS タレア・リアのサモナー

タレア・リアのサモナー 「どうやら、
見くびっていたようだな…

きさまはぁ…、ぐふっ!
コイン 「!

子供じゃないっていったはずだよ…

パルア、
ビッシュに会って確かめてくるよ

ヴェンスブールまで、行ってくる…

ヴェンスブールへと急ぐ少年を
待ち構えていたのは
タレア・リアの機械召喚師クンクだった

−ツヨー−

コイン 「…戦線が広がっている、
なんとかしなきゃ!

早くヴェンスブールに向かわないと

クンク 「お前がコイン・マッシか!
コイン 「俺を知ってるんですね?
機械召喚師さん
クンク 「意外に
自分ってものを知らないんだな

とにかくゆくぞ、
貴様さえ倒せば後は楽だからな!
コイン 「あんたは、戦争の原因を知って
戦っているのか?

力のある人なんでしょう?あんたは
クンク 「俺達が人間の世界をコントロール
することのほうが重要だ

それで救われるほうが
マイスリックのためになる!
コイン 「そんな理由で…
クンク 「理由?もうそんなこと
言ってる場合じゃないんだよ!
コイン (…この人は、ビッシュとは違う?

コイン VS クンク

クンク 「結局、ビッシュのお望み通りか…
コイン 「あんただって、少しはまわりを
見れば冷静にもなったんだ!

ヴェンスブール…、急がなきゃ!

少年は、そこで思わぬ敵と遭遇した

−ヘッショ−

人造系モンスターイチャリポスが、自然系モンスターラヴァリザードと戦っていた。
自然系召喚師の集うアレッキが、戦闘態勢に入っていることを十分に物語っていた。

コイン 「こいつ!
アレッキが兵力を出してるなんて…

本当なのか?いったい
この戦争で何が起こってるんだ?

イチャリポスを撃墜したラヴァリザードが、
いや、アレッキのサモナーがコインに襲いかかる。

コイン 「なぜ、俺に向かってくる?やめろ!

コイン VS アレッキのサモナー

少年は戦場の中で
出会い、そして戦いとを繰り返す
たとえ、それが敵であろうと
味方であろうと

そして、自然系召喚師ハーネットに出会う。

コイン 「なぜだ、見損なったぞハーネット!

アレッキは、
なんで兵力を出してるんだ!
ハーネット 「ここも、人を狂わせる森に
なってしまったのね…
コイン 「ハーネット!
ハーネット 「コイン、しょうがないじゃない…

あなた達みんな、
戦争に取りつかれてる…

私達は身を守るためにナイフを
構えてるだけなのに…
それをやってはいけないことだなん
ていわないでよ
コイン 「俺がここにいることが罪だって
言いたいのか?
ハーネット 「そうよ!

みんな、罪よ!

あなたが、
戦争をするとは思わなかった

戦いに溺れるならあなたは敵よ!
コイン 「俺にも自分の命を守る権利がある!
ハーネット 「権利を振りかざす子供なんて、
消えてしまいなさい!
コイン 「罪を認めることがそんなに
大事なことだっていうのか!

コイン VS ハーネット

なかなか決着がつかなかったが、
神族系召喚師の集うディンマイのサモナーがコインに入った情報を伝える。

コイン 「え!ビッシュが?

本当に動いてるの?
ハーネット 「コイン、ここは私が一旦退くわ…
コイン 「ありがとう…
ハーネット 知らない間にまた強くなったわね、
コイン…
コイン 「俺は強くなりたかったわけじゃない
…うれしくない
ハーネット 「コイン…
これだけは忘れないで欲しいの…

現実にあなたは戦いの中にいる…

力のあるものが、
戦いに引き寄せられていくのは、
危険なことなのよ…

強い力ほど、
多くの命を奪うことになるわ…

気をつけて…

クモウへ戻った少年を迎えたのは
タレア・リアの最高位の
機械召喚師ビッシュだった

−クモウ−

コインが到着すると、パルアがビッシュと戦っていた。

コイン 「パルア!
パルア 「コイン…
ビッシュ クンクを倒したのは、
お前だったというわけだな、コイン
コイン 「あの人はあんたと違うことを
言ってた気がするよ、だから…
ビッシュ おとなしく引き上げろって言うのか
コイン 「そうですよ!俺だって人間だから
怒ってるんですよ
ビッシュ 「お前さんは力を持っているのに
何故、人間の力を信じないんだ?

選ばれた人間なんだろう?
コイン 「神の手を離れたところでこんなこと
をしててなんになるんですか

人の数を減らすのが人だなんて、
悲しいですよ!
ビッシュ 「じゃあ、神様が減らしてくれるのか
コイン 「なに!
ビッシュ 「お前たちの言う神って言葉を
使うならな、
人間は人間であると同時に神なのさ

これ以上は言ってもわかるまい!

私は…私達は、
信じたものを失ったりしない!

コイン VS ビッシュ

ビッシュの死によって
タレア・リア勢は、その動きを弱めた
が、それは一時のことでしかなかった

ビッシュ 結局、人の力などこの程度なのだ…
コイン 「神から生まれた人間は、
神のもとへ還るだけなんだ…
ビッシュ 馬鹿を言え…

借り物の力でやったことが、
何か意味のあることなのか?

俺にはわからん…

あばよ…
コイン 「力をつくすことに前向きでいれば
いいことなのにさ…
パルア 「ねぇ、コイン…

柱ってなんのためにできるのかな?

私たちに生まれてきた意味が
あるなら、柱にもあるのよね
コイン そうだな…
パルア 「いつかきっと解るよね?

私たちの住む世界のこと…

柱のこと…

なぜこんな戦いを
しなければいけないかってこと
コイン 「ああ…

…でも、パルア

人が生まれてきたことに
意味はないかもしれないよ…

カルカスからやってきた
外来系召喚師ロフリアによって
今、まさに異界の扉が
開かれようとしていた

−エドーパ−

コイン 「やばい!カルカスの連中が
異界の扉を開いている!

やめるんだ、ロフリア!
ロフリア

平和ぼけの天才ぼっちゃんの、
登場というわけねぇ?
コイン 俺がいつ平和ぼけした!
ロフリア 「足下が、こんなとこまで
お留守になってるじゃないのさ!

ここら一帯、うちらの勢力圏に
入ったわよ!ハ、ハハァ…
コイン 「俺は戦いなんてしたくないだけだ!
ロフリア 誰だっていつかは戦うことになるのさ

命を取り合うだけじゃない

欲しいもののために戦うのも
人間の本質ってやつじゃないのかい

ねぇ、ぼうや!
コイン 「俺はコインだ! ぼうやじゃない!

それに、
迷った心で何を欲しがったって…
本質に関係があるかよ!
ロフリア 「それは、
力があるから言えるセリフだな…

私は!

小さい頃の私は欲しいもののために
人の前にひざまづいてきた

だけど今はちがう!そう今は…

ふっ…、もういい!

私はお前と戦うんだ!

たとえそれで
何も手に入らなかったとしても!

コイン VS ロフリア

ロフリア 「クモウへ戻った方がいいわよ…
コイン
ロフリア 「今ごろヴッコが、扉を…

ぼうや…

強いのは、いいことよ…

そう言って、ロフリアは息絶えた。

ハンコックについた少年が見たものは
変わり果てた師の姿だった

−ハンコック−

コインの師ウラムルトは、ヴッコによって殺されていた。

ヴッコ 「あっけないもんだな…
コイン 戦う意志のない人間を巻き込んで
楽しいのかよ!
ヴッコ 「楽しい!

コイン VS ヴッコ

ヴッコ 「こんなのは…

ぐふっ…

楽しくないぜ…
コイン 当たり前だ!

ケイスを直接止めるしかない!
これ以上はごめんだ…

ケイス率いる外来系召喚師の本拠地、マウ・ザウ・アックを目指した。

全てを知る少女はそこにいた
そして、あの男もまた
そこで少年を待っていた

−マウ・ザウ・アック−

ウルト コイン…

ここまで来ちゃったのね…
コイン やっぱりここか…

ケイスはどこだ?
ウルト 「あっち!
ケイス 「ロフリアもヴッコも帰ってこない…

お前さんも不必要に大きい力を
振り回す危険人物の仲間入りだな…
コイン 「俺は、災いを作りだしている連中を
止めようとした…
連中がやめないなら、
しょうがないことだ!
ケイス 魔を封じるために
神の使徒を用いるのも結構、
しかしそれでは
決着がつかないんだぜ、現実は…

俺は一度、魔の中枢を見てきたが…
コイン 「戦争の柱に入ったのか!?
ケイス 「お前たちのやり方じゃ倒せないよ
コイン 「だからって、あんたのように
異世界の力に頼るのは、
リスクが大きすぎる!
なぜなんだ!?
ケイス 「俺はこのマイスリックの大地を、
「世界」以上のものにするんだ!
コイン 「それが本音か!?
それじゃマイスリックは消滅する!
ケイス 「火の粉を振り払うための力なんか
くそくらえだ!

本質でものを見ようとしない
愚か者め!

合理的であれば、
人は幸福にもなれたんだ、いいか!
コイン 「ハッ!
ケイス 「楽な思考に流れてふぬけになった
連中を更正させる方法など他にない
ウルト 「やめて!
コイン 「ウルト、どいてくれ!
話はあとできくよ
ウルト 「コイン!柱ってね、マイスリックの
大地が流した涙なのよ…

あなたの力じゃ涙をふいてやること
しかできないでしょう?
ケイス 「ウルト
ウルト 「えっ?

キャッ!
コイン 「ケイス!
ケイス 「お前が心配をするな…
ウルトは遠いところに飛ばした

俺が死んだらあいつは一人になる…

俺は…、死んだりはしない!

コイン VS ケイス

ケイス 「人が戦いをやめたとき、
何が残ると思う?
コイン 「平和だ…
ケイス 「お前らしい答えだな…

戦いを取り上げれば人間は、
肉の塊になるだけだぞ…

異界のものを呼ぶことは、
確かに危険が伴うが…
危険とはなんだ?
人間の都合のことだろう…

ちがうか?
コイン 「俺には解らないよ…

本当は、みんなと解りあいたかった

でも、できなかった…

それは、すごく悲しいことなんだ…
ケイス 「それは、そうだな…

ものの考え方の内側には、そういう
欲望があるはずなのに 人は…、
コイン 「!?ケイス…

ケイスは死んだ。

少年は、まだ戦う理由を
見つける事が出来ずにいた

−ライカルアック−

コイン 「!
ハーネット 「ひさしぶりね、コイン…
コイン 「ハーネット…
コイン 「ハーネットは、
戦争がなんで起こっているのか
考えたことがあるのか?
ハーネット 「考えてもわかることじゃないわ!
コイン 「俺達は、別にわざわざ敵になる
必要なんてなかった

でもウグトが呼んだせいで
アレッキの人達は、バタリの子孫を
恨んでるし…

ケイス達は、ケイス達で
機械技術者を、混乱の原因だと
いっている…

それを根底から癒すなんて
簡単じゃない!

お互いの力で圧力かけたって
消せなかっただけのことじゃないか
ハーネット 今度の戦争も…、
みんな死んでいくわ 悲しいのよ!
コイン 「俺が終わらせる…
あなたのことも、なんとかしたい…
ハーネット 「だめよ、コイン…

あなたは、優しい人ね…

汚れるのは、私だけでいいの…
あなたはもう、
こんな汚れ方はしちゃいけない…
コイン 「あなたは、何も学んでない!

俺がやらなきゃいけないんだ!
どいてよ!
ハーネット 「ごめんね、コイン…

私はこうしないと、
悲しみに耐えられないの…
ちっぽけなのよ…

誰かに守られたら、
二度とひとりで生きていけないわ

私にだって、
不幸になる権利ぐらいあるはずよ!

コイン VS ハーネット

コイン 「ハーネット!

どうしてこんな…
ハーネット 「私は、タラスを殺してしまったの…
コイン 「どうして、どういうことなんだ?
ハーネット 「私の力が、

私の身体から、
流れ出す魔を大きくしていたの…
タラスは、たぶんそれに気づいて…
魔を中和しようとしたんだわ…
コイン 「そんな…
それであなたは俺にこんな戦い方を
ハーネット 「ねぇコイン…、
人は今のままでも幸せだと思うの…
コイン 「…ウ…ウウ…

ハーネットは死んだ。

これまでの全てを失った少女は
これからの全てを、その少年に託した

−戦争の柱正面−

ウルト 「コイン、ケイスを倒したのね…
コイン 「ごめん…

俺は戦いを肯定しすぎてるのかな、
ウルト…
ウルト 「私の知ったことじゃないわ!

でもね、コイン…

世界を救いなさい!

私は、あなたが勝つための武器を
持っていたの…
だから、わざわざケイスのところに
行ったのよ

ケイスと一緒にいたかった…
コイン 「ウルト!
戦い以外で人に出来ることは、
もう終わってしまったのか?
ウルト 「私はこの偉大なるウグトの獣を
渡すことしかできないわ…

もう、疲れたもの…
コイン 「ウルト!
ウルト 「さようなら…

世界が救われても…
あなたが生きてても…

もう、会えないね…

そう言って、ウルトは姿を消した。
コインは、ウルトからウグトのケモノを渡された。

そして…、
その世界の終末がやってきた

−戦争の柱新世界−

ウグトの魔が現れた。

コイン 「これが、魔だって?

ハーネットが、
命をかけて俺を止めに来た…

ウラムルト様は、知っていたんだ!

本当にこれが魔なのか?この気配は
ウグトそのものじゃないか!

みんなを犠牲にして…
自分の信念を貫いた結果は、
こういうことになるって…

ケイスもビッシュも知っていた?

俺は…、
何も見えていなかったんだろうか?

でも…、戦わなきゃならない!

コイン VS ウグトの魔

そしてコインはウグトの魔を打ち破った。
崩れゆく空間の中で、コインは回想を見る。

ウルト 「だらしがなくて慎重な人達なのね

どう?ここでみんなで戦うってのは
コイン 「ウルト!無茶をするな!
戦争をしに来てるんじゃない!
ウルト 「あらコイン、戦争をしに来てるのよ
ウルト 「いい?ここにいるお利口さんたち

この世でただ一人、偉大なるウグト
の血を引くものとして伝えます

どの国の人達も自分たちに都合の
いい歴史しか知らないでしょうから

師、ウグトは知識そのものでした

人に恵まれず、愛情に恵まれず、
時代に恵まれず
それをウグトは喜んだ

みんなは知らないでしょうけど
召喚の技を身につける前にウグトは
殺傷能力のある言葉を見つけたわ

魔法の元になったやつだけど
魔法とは全然違う

ウグトはこの言葉をみんなから
隠すために魔法を発展させたの

昔からあった魔法なんて
頼りないものだった

本当はウグトが全部作りなおして
人に与えたのよ
ウラムルト 「戦争の道具を増やしたのか、強力な
ウルト 「そうよ?

ウグトは知識そのものでした

それは人に敵対するものだから
ビッシュ 「そんなことはない!

終わりの無い崩壊は続く。

コイン 「ウラムルト様…ウグトは…
獣になって初めて世界を救う力を…

世界を救えたかもしれないのに!
柱から吐き出されていた魔は
少年の命と共に消滅した
大地を、その影で覆い尽くした柱は
魔によって捕らえていた光を解放し
人々は、光を求めて柱に移り住んだ
そして、そこから…
遥か遠くにそびえ立つ暗い大地に
沈みながら、次の世界は始まった

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