なにかが、始まる予感も
なにかが、終わってしまう不安も
私はまだ、感じていなかった
−マスチーキ−
マスチーキにある一軒家にハーネットとタラスはいた。
ハーネット | 「行ってくるね 最近、野暮用が多いんだ おいでミリィ! |
戦争は、いつも唐突に始まった
でも、それは私には関係ないこと…
−ハイコニア−
アレッキのサモナー | 「ハーネットさん、機械召喚師たちが 動きはじめています |
ハーネット | 「そう… |
アレッキのサモナー | 「少し前から内紛があるようです 彼らが攻めてくるかもしれません |
ハーネット | 「姉さんに報告しといて |
ネリオット | 「聞いてるわ… 寂しそうね…、いつものこと? |
ハーネット | 「あら…、 そんな風に見えてるの? やだな… |
そこへ無数のオルトロスが召喚される。
ネリオット | 「ハーネット! …機械だけ? |
ハーネット | 「大丈夫、下がって! |
ハーネット VS タレア・リアのサモナー
戦いはいつも、向こうからやってきた
私はそれを受け入れて
必要のない力を振り回すだけ…
ハーネット | 「ここで出会うなんて… だいぶ前から動いていたんだわ |
ネリオット | 「ビッシュが動かした連中じゃ ないわね、わかんないけど… |
ハーネット | 「戦争になんてする必要ないのに… |
ネリオット | 「ハーネット、そういうものはね、 ちょっとしたことで変わるものよ 他人のことを理解するのなんて 簡単だし、 小さな悪意がいくつも集まって増幅 するのもあたりまえよ 代表を出して話をするっていうのは そこにいないひとりひとりの感じ方 を変えてしまうからね |
ハーネット | 「一度にわかりあえないから? 人間がまだ多すぎるっていうの? 昔の戦争であんなに死んだのに! |
ネリオット | 「それが現実よ… |
そこへオンエットがやってくる
オンエット | 「姉さんたち! |
ハーネット | 「オンエット… |
オンエット | 「あのね、ハーネット姉さん… |
ハーネット | 「どうしたの、何かあったの? |
オンエット | 「街が襲われているのよ、 どうして戻ってこないの? |
ウプル | 「そりゃ俺たちがうまくやったからさ |
ハーネット | 「…大物だ… |
ウプル | 「下がるんなら逃がしてあげますよ、 どうです? |
ハーネット | 「どこへ? 森に火をつけたんでしょう |
ウプル | 「それでも下がることはできるさ 下がるってのは力を使えない 場所へっていうことだからね |
ハーネット | 「捨てることのできる力なら 初めから使い込んだりはしないのに |
ハーネット VS ウプル
ウプル | 「聞いてくれ! ビッシュのだんなは、 あんたを天才だといっていた… でもさ…、天才だってまわりから わかるってことは… あんたは不幸だったりしないかい? |
ハーネット | 「うん… そうかもね… でも終わってみないとわからない… 今はね、よくないことが 起こってるってわかっちゃうのよ だから流れに乗りたいの… あなたのような人が… 私の力を吸い取ってくれるんなら、 よかったのにね |
ウプル | 「そうだな…、あんたは、きれいな… |
オンエット | 「姉さん、行こ… |
−ヘッショ−
ハーネット | 「来てくれてありがとう どこかで、戦争をみてたのかな… 私ね、このまま戦っていたいの… 本当は大好きなタラスの側にいたい でも、このまま世界が終わるまで ふたりで… なんてわけにいかないしね… あなたにも生きていて欲しいから うん、生きてる感じをなくしたら 意味ないものね… そしたら、私はただの恐い人だね、 フフッ… |
爆音が聞こえる。
ハーネット | 「まだ、はじまったばかりなんだわ! |
私の力が、次第に大きく
そして、危険なものになっていく
ハーネットはヴェンスブールへと走る。
ハーネット | 「カタをつけるのは早い方がいい! 私に世界を守れるなんて 思えはしないのに… 運命だけは突きつけられて! でも、じっとしていられないのが そのせいなら… それもしかたがないか! |
−ヴェンスブール−
ビッシュ | 「驚いたよ、 こんなふうに入り込んでくるとは… やっぱりお前さんが一番切れる こうなったからにはゆくぞ、 ハーネット |
ハーネット | 「ビッシュ、よして! それにみんなを止めて! |
ビッシュ | 「あんたも戦争の一部なんだ、 後戻りはなしだ! |
ハーネット VS ビッシュ
森はいつでも優しく
こんな私を迎えてくれたけれど
暗くて不安な気持ちは、けっして
私から離れようとはしなかった
ビッシュ | 「ハーネット…、強い女だ… 力は、いいものだろう? |
ハーネット | 「そんな風に私を責めないで! 私は… わかりあうことだって できたはずでしょう? |
ビッシュ | 「こんな力を持たなければ…、か? ただ他の力を持った者に 征服されるだけだ… いったん力を手にしてしまったら… それを使わずに済ますことなど できはしない 自然の力を借りることはできない… この世界の人間は、 自然の中にいてはいけない 俺は… 人間の業が生んだ魔は、 人間が同じように生んだ機械で、 相打ちさせてやりたかった… だが、たくさんの人間が同じことを やろうとすれば… 野心を持った者が、理想を 歪ませてしまう… そこをまとめきれなかった俺だ… あんたが一人なのはそういう失敗を 避けてるからなのかもしれんが あんたほど人をまとめられそうな 人間はもう残っていないと思うぜ |
自分の場所へと帰る途中。
ハーネット | 「私…、いつのまにかあの人と… 自分の意志で、 戦っているつもりになっていた… 私は…、タラスが好き… ミリィが好き…、みんなが好き… アレッキの森が好き… 何かに取りつかれるなんていや 森に帰って眠ろう… |
いつもの場所で
私はひとり考えていた
−バルムラ−
ハーネット | 「戦争は何の前触れもなく始まり… 私が恋人と一緒にいる間に、 周りの魔法使い達は 機械召喚師の攻撃をうけて全滅した 街には、そんな私の失態を 問う者もいた… 私は街に帰ることも出来ないまま アレッキの外で敵を防ぐために 戦うようになった まるで灯台の様に、砲台の様に ミリィ…、来てくれたのね このコの仲間たちを使って 戦いを続けている… |
ハーネットの魔が出現し、ハーネットの魔はタラスを襲う。
タラス | 「僕が今逃げたら、君はもう僕の所に 帰っては来ないんだね… おいで… |
ハーネットの魔 VS タラス
静かな眠りの外側で
私の力は、別の何かへと
その形を変えていった
ハーネット | 「ミリィ、どうしたの? 教えて! |
タラスは地に伏した。
ハーネット | 「私…、ここで何をしてたの? |
ハーネット | 「大地に降り積もった、私自身の魔に よってタラスは死んだ… 街はどうなっているんだろう… 私はどうしたらいいんだろう、 タラス… 力はもういらなくなったのね… 眠い…、誰か呼んでるの? |
外来系召喚師達が狙っていた。
ケイス | 「砦は横からだ、順番に落とせ! ヴッコ! |
ヴッコ | 「なんだい? |
ケイス | 「やっかいな敵だが… ハーネットがバルムラの柱にいる! まかせてもいいか? |
ヴッコ | 「やりあってもねえんだ …ま、負けはしねえよ |
ハーネット | 「私は… そうだった! ありがとう… あなたもまだいるのにね 私だけでいい… 他の皆の力を封じて私だけが 私の魔とどこかに消えればいいんだ |
洞窟を出たハーネットは、バルムラの高台からヴッコを見下ろす。
ハーネット | 「私は、みんなが好き、でもね… 悲しみがなくなったりはしないのよ |
ハーネット VS ヴッコ
ヴッコ | 「き、貴様は、なにを… |
ロフリア | 「ヴッコ! |
ケイス | 「ロフリア、無理に行くなよ、 手ごわいぞ |
ロフリア | 「戦い方は知っているつもりだ、 ケイス! |
ハーネット VS ロフリア
ロフリア | 「魔より…、あんたの方が… |
ケイス | 「ハーネット、きさま! |
ハーネット | 「あなたがこの世界の痛みそのものを 吸取ってくれるというのでなければ 力を捨てなさい、ケイス! |
ケイス | 「そういう言い分を 俺に、押しつけられるほど お前は主義者だというのか、ええ! |
ハーネット | 「あなたが、 主義にこだわるしかないのは あなたが自分に似合わない 危険な力を手に入れたからよ! |
ケイス | 「よくいうぜ、あんた! 恋人を手に掛けた女がいう 台詞かよ! この世界に、空想に過ぎん理屈を 残しておくのはインテリの悪い癖だ 使って初めて凄味がわかる 力ってのは、解ってくれた人間しか 生かしておいてくれないものだ |
ハーネット | 「あなたを殺すしかない! |
ケイス | 「やれるものかよ! |
ハーネット VS ケイス
ケイス | 「ちくしょう…、世界を… こんな人類の手に置いておくのは、 俺には、関係ないことに なっちまったな… |
ハーネット | 「ケイス… |
戦争の柱の生まれた理由を
私は、ただぼんやりと考えていた
−クモウ−
ハーネット | 「旧ウグト市街の最初の柱… 昔はあの程度の大きさの柱しか 生まれなかったのに… 戦争の柱は何故… あんなに大きいんだろう? 私の時は、 力の使い方が急激だったから… 魔が簡単に具現化したんだわ… 戦争の柱は偉大なるウグトその人の 影の部分の現れだっていうこと? !…敵? |
ハーネット VS ディンマイのサモナー
私はただ、戦いを受け入れるだけ
相手は優しい少年なのに
コイン | 「! |
ハーネット | 「ひさしぶりね、コイン |
コイン | 「ハーネット… |
ハーネット | 「コインは、敵がウグトだってこと、 知ってたの? |
コイン | 「うん… |
ハーネット | 「私が倒すわ… あなたとウグトを戦わせたら、 私のときと同じになる だからあなたを止める… |
コイン | 「ハーネット…、 戦争がなんで起こっているのか、 考えたことがあるのか? |
ハーネット | 「考えてもわかることじゃないわ! |
コイン | 「俺達は、べつにわざわざ 敵になる必要なんてなかった… でも、ウグトが呼んだせいで アレッキの人たちはバタリの子孫を 恨んでるし ケイスたちはケイスたちで、 機械技術者を 混乱の原因だと言っている それを根底から癒すなんて 簡単じゃない お互いの力で圧力かけたって 消せなかっただけのことじゃないか |
ハーネット | 「今度の戦争もみんな死んでいくわ 悲しいのよ! |
コイン | 「俺が終わらせる… あなたのことも、なんとかしたい |
ハーネット | 「だめよ、コイン あなたは優しい人ね… 汚れるのは私だけでいいの あなたはもう こんな汚れ方はしちゃいけない… |
コイン | 「あなたは何も学んでない! 俺がやらなきゃいけないんだ! どいてよ! |
ハーネット | 「ごめんね、コイン… 私はこうしないと悲しみに 耐えられないの、ちっぽけなのよ 誰かに守られたら、 二度とひとりで生きていけないわ 私にだって、 不幸になる権利ぐらいあるはずよ! |
ハーネット VS コイン
ハーネット | 「ごめんね、コインごめんね… |
コイン | 「結局、俺には、ウグトを倒す力が なかっただけってことさ それに…本当は怖かったんだ 認めたくはなかったけど、 あなたにしかできないことなのかも しれない ハーネット… 戦う前からわかってた… 俺はこのまま、 あなたのそばにいるよ 最後にあなたを守ることくらいは できるかもしれない…から ウグトの魔は大きいと思うけど これを…持っていって… こうやって… |
ハーネットは、コインからウグトのケモノを渡された。
ハーネット | 「しょんぼりしていた私の肩をね とてもやさしく撫でてくれる シルフィドがいたの 彼女が私の心を守ってくれたから、 私はこの世界を守るのよ |
−戦争の柱新世界−
ウグトの魔が現れた。
ハーネット | 「タラス… この魔を倒したら、たぶんもう一度 私は魔を生み出すだろう… そしたら私はその魔を道連れに この世界から消えていくわ… これで許してね |
ハーネット VS ウグトの魔
そしてハーネットはウグトの魔を打ち破った。
崩れゆく空間の中で、ハーネットは回想を見る。
ウルト | 「最初の柱が生まれたとき、 人間はそれに対抗する力を、 持っていなかった だからウグトは、 魔法を人に渡す決心をした… それからウグトはその柱に住み、 その力によって枯れ果てた柱は、 後にディンマイの都となった… その時にウグトは、 最初の召喚魔法を使った… コイン、あなた達の力ね それから大地をさまよって、 ウグトは人を取り囲む環境を 別の召喚魔法としてまとめた… ハーネット |
ハーネット | 「そうね… |
ウルト | 「問題が起こるのはここから… ウグトは晩年になって時間の向こう から人を召喚するのに成功したのよ |
ケイス | 「それは本当か!? |
ウルト | 「本当よ、ケイス… |
終わりの無い崩壊は続く。
ハーネット | 「魔が生まれる理由、なんとなく解る この世界は…、 自分で自分を浄化できるのね… それも私たち人間みたいなゴミまで 洗い流してくれるの… |
赤い土で手を汚しながら 小さな柱を作っては崩す事を 私は、何度も繰り返した ただ黙って それを見つめている恋人の 背中の遙か彼方では 笑い出したくなる程 巨大な戦争の柱が 世界を二つに裂いていた… |