『玄奘さん家のメイドさん♪』


 玄奘三蔵様は、最高僧様でいらっしゃいます。その職権を乱用して(おいおい)、それはそれはそれはそれは!美しい妖怪を、奥様にお迎えしました。
 奥様の名前は猪八戒。その昔、百眼魔王の一族凡そ千人を皆殺しに(…)した、所謂大量虐殺者で御座います。が、三蔵様のお口添えもあって、今はその罪を許され、またその事件がきっかけでお知り合いになった三蔵様と、ささやかながらも幸せな家庭を築いておりました。


 んが!


 そんな幸せな八戒にも、実は密かな悩みが御座いました。
 それは…





 朝、玄奘家の食卓には、二人しかいない。
 一人は主である玄奘三蔵。これは全く問題ない。もう一人は、彼の愛する妻、猪八戒…ではなかった。
 身につけているのは、メイド服。頬の皺がいい年なのを教えているのだが、何故かフリフリエプロンがよく似合う。序でに言えば、メイドさんなのにご主人様と一緒に、のほほん、と食後のお茶を啜っていた。
「江流、また無茶をさせたんですね」
 ことん、と湯飲みが置かれると同時に、穏やかな声で咎める台詞を吐くメイドさん。
 ご主人様は、そんなメイドさんにお仕置きしなければならないのだが、三蔵には逆立ちしたって無理だった。何故なら、
「………その格好止めて下さい、お師匠様」
「おや?似合いませんか?」
「そう言う問題ではありません」
 そう、目の前のメイドさんは、紛う事なき先代三蔵法師、玄奘三蔵のお師匠様である、光明三蔵であった。
 彼は、弟子に三蔵の地位を譲った後、暫くのんびり隠居生活を楽しんでいたのだが、その弟子が結婚すると聞いて、強引に新婚家庭にお邪魔しに来たのだ。
 三蔵にしてみれば、お邪魔虫とは言え、仮にも相手は自分のお師匠様である。仕方なく、我慢していたのだが、何を思ったのか、お師匠様はメイドとして玄奘家で働く事を決めてくれたのである。
「いやぁ〜、只でお邪魔するわけにはいきませんからねぇ」
 というのは尤もだが、しかしだからといって何故メイドなのか…?
「いえいえ、市毛良枝の『家政婦は見た』も良かったんですけれどねぇ、それだとぱっと見て判りませんでしょう?だからメイドさんです♪」
 余り理由になっていない理由だった。
 朝からちょっぴり頭痛を覚えた三蔵は、そろそろ出勤時間が差し迫った事もあったので、これ以上の会話を止めた。深々と溜め息を吐いた後、勤務先(笑)の斜陽殿へと向かう。
 見送るのは光明只一人。
 本当は、愛しい愛しい奥様と、「貴方、今日お帰りは?」「早く帰ってくる」「判りました。それじゃ、今夜は貴方の大好きな、肉じゃがを作って待ってますね♪」「ああ、楽しみにしている」なんて会話を交わした後、ほっぺにちゅっ、なんかして、るんるん気分で出掛けたいのだが(笑)、生憎奥様は、昨夜の無理が祟って未だベッドの中。
 その原因の半分は、自分にあるので仕方がないのだが。
(今日は大人しくして下さいよ、お師匠様…!)
 残る半分の原因である光明に、心の中でお願いする三蔵。
 駄菓子菓子、そんな愛弟子の思いなど無視して、メイド光明は、今日も一日張り切ってくれるのである(笑)。







 三蔵が出掛けるとすぐ、光明は、早速家の用事に取り掛かった。
 まずは洗濯。
 昨夜の夜の営みで汚れたシーツも洗わなくてはならないので、いくら文明の利器、洗濯機の力を借りるとは言え、これは結構大変だ。しかし馴れたもので、1時間後には干し終えてしまった。
 次は掃除。
 まず部屋中の窓を開けると、はたきをかけます。その後棚の上や調度品を乾拭きし、それから掃除機の出番。部屋の掃除を終えると、今度は廊下の雑巾掛け。
 こうして丁寧に掃除を終えた頃…昼食の時間です。
 の前に、
「八戒さん、お早う御座います」
 玄奘家のもう一人の住人にして、実は光明が主と仰ぐ(笑)八戒を、起こしに行く。
 八戒は、まだベッドの中にいた。
 何せ、昨晩二人掛かりで散々鳴かされたのだから、仕方がないだろう。
「お昼にしますよ。起きられますか?」
 毛布を被っている八戒に、光明は優しく声を掛けます。それに、八戒はもぞもぞと動いて…
「た、食べられません…」
 直後、光明の瞳がきらん、と光った。
「いけませんよ、八戒さん。食べないと体力が持たないですよ」
「食欲、ないんです…」
「可笑しいですねぇ、昨日あれだけいっぱい運動したんですから、お腹が空いてもいいと思うんですが…ひょっとして、運動が足りなかったとか?」
 はっ、と気付いた時には遅かった。
 目にも留まらぬ早業で、毛布を引き剥がす光明。
「では運動しましょう♪」
「結構です!!!!!」
「遠慮しないで、はい♪」
「本当に、嫌、駄目、あっ、あ、あああああ!」
 3分と経たないうちに、八戒はあっさり達かされてしまった。
「では用意が出来たら呼びに来ますね♪」
 くったりとベッドに突っ伏す八戒に、光明は楽しそうにそう言い残して、昼食の準備に出て行った。





 何とか昼食を詰め込んだ八戒は、ちょっと気分が悪くなって、ソファーの上に突っ伏していた。
 キッチンでは、光明が鼻歌を歌いながら、昼食の後片づけをしている。
 全て片付けてしまうと、光明は八戒のいるリビングへとやって来た。
「おやおや、まだ眠いんですか?」
 八戒の様子に、少し呆れた声で言う。それに、八戒は心の中だけで文句を言った。
(誰のせいですか、誰の!)
「では八戒さん、私夕飯の買い物に行ってきますので、お留守番お願いしますね」
「…判りました」
 買い物に行くと聞いて、ちょっと嬉しい八戒。
 その間、彼の魔の手(笑)からは逃れられる、そう思ったからなのだが。
「ああ、でも悪い人に襲われてはいけませんからねぇ」
「…え?」
 厭な予感が、胸中を過ぎる。
「これ付けておきましょうね♪」
 楽しそうに引っぱり出されたものを見て、八戒は悲鳴を上げた。
「厭です〜〜〜〜〜〜〜!」
「何を言ってるんですか、江流の為ですよ。ああ、その江流の為に、夜の準備もしておきましょう♪」
 にっこり笑って、光明はさくさくとズボンを下着毎ずり降ろした。
 逃げようにも、あっさり足首を捕まれて、おまけに俯せにされて…
「ひっ!いやッ…!」
「暴れてはいけませんよ。濡らしておきませんと、傷作っちゃいますからねぇ」
「あっ、やだっ、ぁ…っ」
「おやおや、感じやすいですねぇ…仕方がありません、一度抜いておきましょうか」
「ぃっやぁあああああ!」
 数分後、
「では行って来ますね♪」
 にっこり笑顔の光明に、八戒は答えられなかった。









 いつものように、17時半には、三蔵も帰宅する。
「お、お帰りなさい」
「…ああ」
 妻の出迎えに、三蔵は、見た目には判らないが、それでも酷く嬉しそうな顔をした。
 そのまま抱き寄せて、ただいまのキスをしようとして…
「どうした?」
 妻が、微かに震えているのに気付く。よくよく見れば、白い顔が更に白くなっている。
「気分でも悪いのか?」
「い、いえ…何でも、ありません…」
 心配そうな夫に、八戒は何とか心配させまいと微笑むが、それが却って三蔵の心配を煽った。
「何でもないって顔じゃないぞ」
「本当に、本当になんでもないんです…!」
 夫の心配は嬉しい。だが、今は言えない。
 泣きそうな妻の様子に、三蔵は、非常に非常にひっっっっじょお〜〜〜〜〜〜に!気になったのだが。今は、聞かないことにした。
 ただ、忘れずただいまのキス(笑)。
 その時、思わず押し倒したくなるような色っぽい声を妻が上げたので、ちょっと、不調の理由が判った気が、した。
(またあの人か…)
「お帰りなさい、江流。ご飯出来てますよ♪」
 押し倒そうとするより先に、キッチンから光明が先制攻撃を仕掛けた為、ひとまず妻を促し、中へとはいる。
(また何をしたんだか…)
 着替えながら、仕事以外でも疲れてしまった三蔵だった。



 食事もすみ、お風呂もすみ…三蔵が一日の中で一番楽しみな(笑)夜の営みの時間がやってきた。  ワイン片手に、妻が風呂から上がってくるのを待っていると…
「江流江流」
 にっこり笑顔で、光明に呼ばれてしまった。
 途端に、苦い表情になる三蔵。
 自分の師匠がこんな楽しい笑顔を見せる時、禄な事はないのだ。それでも相手をしてしまう辺り…悲しいかな師弟時代(笑)。
「八戒さん、こちらですよ」
 そう言って、光明に案内された先にいたのは、
「なっ!?」
 思わず、我が目を疑う三蔵。
 其処にいた八戒は、下だけ身につけた状態で、右手首と右足首、左手首と左足首という組み合わせで、鎖で拘束されていた。おまけにより足を広げる意味で、膝の所でベルトが巻かれている。悲鳴を上げているようなのだが、猿轡を噛まされているため、くぐもった声しか上がっていない。
 胸に色付く赤い果実はクリップに挟まれ、その先で鈴がこの場には似つかわしくない、可愛らしい音色を響かせていた。
「お師匠様!」
 思わず顔を真っ赤にして振り返った三蔵に、光明は涼しい顔で、
「私が貴方にご奉仕する訳には行きませんからねぇ。だから八戒さんに頑張っていただきました。ほら、ここももう、準備万端ですよ♪」
 そう言って、最後の一枚を取り払う光明。
 その一枚も、只の下着ではなかった。所謂貞操帯と呼ばれる革製のそれは、後ろの錠を外して、漸く取る事が出来た。そうして妻の全てが晒された時…三蔵は再び我が目を疑った。
 いつも自分を受け入れるそこに、おぞましい、男性性器を模した玩具が、深々と埋め込まれている。それが小刻みに振動しているところから見て、どうやらリモコン式のバイブのようだ。その振動が妻を苦しめていると知って、三蔵は急いでそれを引き抜いた。
「んんっ!」
 それも相当な衝撃だったらしい、エビ反りに仰け反って、達く八戒。
「おやおや、乱暴はいけませんよ、江流」
 その光景を見て、光明は眉を顰めてそう言った。
「もっと優しくして上げませんと、傷が付いちゃいますよ」
(誰のせいですか!)
 心の中で絶叫するが、当然、光明は気付いていない。引き抜かれて、ひくついている其処を、優しく調べる。が、その動きにも、八戒は感じていた。苦しそうに首を振る八戒を見て…その仕種、表情が、三蔵の雄を刺激した。
 思わず飲み込む生唾。その音を、光明は耳聡く聞きつける。
「そろそろ入れて良いですよ、江流。八戒さんのここも、もう大丈夫ですから」
 そう言いながら、調べる動きを、嬲る動きに変える光明。それを受けて、八戒のものもまた、緩やかに立ち上がった。
 空いている手で、光明は胸の鈴を突っつく。途端に八戒の身体が跳ね、鈴の涼やかな音色が響き渡った。
「ほら、江流…」
 光明の悪魔の囁きが、麻薬のように三蔵の脳を犯す。ふらふらと妻に歩み寄って、これ以上はない程大きく足を広げると、しっかり立ち上がった自身を突き刺した。落ち着く間もなく激しく腰を打ち付けて…苦しそうに表情を歪める八戒。
 そんな八戒の猿轡を、光明が取ってやった。途端に、悲鳴にも似た嬌声が上がる。
「ああっ!っ、だっ!さっ、ぞぉ…!ゆっ、くぅ、うっ、ぅわっ!あっ!ねがぁっ、ぃっ!」
 八戒のその声も、三蔵には既に煽るものでしかない。ますます動きを激しくする。
 二人の様子に、光明はキセルをふかしながら一言、
「若いって良いですねぇ…」





 翌朝、
「また無理をさせましたね、江流」
(誰のせいですか!誰の!)
 心の中で文句を言いながらも、口に出すのは、
「………その格好止めて下さい、お師匠様」
「おや?似合いませんか?」
「そう言う問題ではありません」
 こうして、玄奘家の毎日は、恙無く過ぎるのだ(笑)

ENDLESSEND


勝様より頂きました。
相変わらずいい感じです!(≧▽≦)♭
「勝さん、八戒の職業「人妻」ってあるけど…………書いてね
等と程好く脅しをかけおねだりをしましたが…
え〜…
ご本人曰くココまでやっといてなお「ソフト鬼畜」等とのたまってくれました。
「これでソフトなら、何がハードなんだっ!?」と、言う突っ込みは、多分していいと思いますよ?(笑)
貰った瞬間寝室行き決定したこの作品。
有難うございました!

2002.06.22 鬼灯

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