『猪さん家のメイドさん2』


 小学校教員、八戒さんの朝は、メイドさんのおはようコールで始まります。
「八戒、朝ですよ、起きてください」
 …メイドさんなのに、ご主人様を呼び捨てにしています(笑)。
 さておき、メイドさんに揺さぶられ、耳元で囁かれても、朝の弱い八戒さんは、すぐに目覚めてくれません。そんな八戒さんに、メイドさんは更に言葉を続けます。
「早く起きてください。せっかくの朝ご飯が、冷めてしまいます」
「朝ご飯…」
 別に食い意地が張っているわけではないのですが、八戒さんはその一言に反応しました。それに気付いて、メイドさんはそこから攻めます。
「そうですよ。今朝は腕によりをかけて、八戒の大好きなプレーンオムレツと温野菜のサラダを用意したんですから」
 直後、八戒さんは勢いよく飛び起きました。
「天蓬さん!?」
「あ、やっと起きてくれましたね♪」
 八戒さんが目覚めてくれたので、メイドさん、天蓬はうれしそうに微笑みました。
「おはよう御座います、八戒」
「あ、おはよう御座います…じゃなくて!」
 躾が良かったばっかりに、ついつられて朝のご挨拶…の後、八戒さんは、起きた時と同じくらいの勢いで、天蓬の肩を両手で掴みました。
「天蓬さん、朝ご飯、作ってくださったんですか?」
「ええ。さっきも言いましたけれど、八戒の大好きなプレーンオムレツと温野菜のサラダを…」
 最後まで聞き終えることなく、八戒さんはダッシュでキッチンへと駆け出しました。
 その後ろ姿を、天蓬は呆然と見送りましたが…やがてぽつりと、
「朝から元気ですねぇ。それじゃ今夜は、もう少し頑張っても良いですね」
 …何を?



 一方、キッチンに飛び込んだ八戒さんは…
「何だ、もう起きたのか?」
「あ、金蝉さん…」
「用意は出来てる。先に顔を洗って着替えてこい」
 実に偉そうに、猪さん家のメイドさん2号(笑)、金蝉はそう言い放ちました。そんな彼(メイドさんだけど彼:笑)を、八戒さんは暫し呆然と見ていましたが、やがてぽつり、と、
「金蝉さん」
「何だ?」
「朝ご飯を作ってくださったのは、貴方ですか?」
「そうだが」
「良かったぁ〜…」
 金蝉の返答に、八戒さんは安堵の余り、その場に座り込んでしまいました。そんな八戒さんの様子で、彼が何を心配していたのか、判ってしまった金蝉、少し呆れたように、
「俺がいて、あいつに飯を作らせるわけがないだろう」
「…そうですね」
「あ、二人とも酷いですねぇ〜」
 タイミング良く、キッチンにやってきた天蓬は、そんな二人に、殊更拗ねた表情でそう言いました。そのとても愛らしい表情に、しかし馴れている金蝉は、鼻を鳴らして、
「言われるようなことをしているお前が悪い」
「酷いですねぇ、本当に」
「言われたくなければ、せめてキッチンの現状を留める結果を見せて見ろ。大体どうやったら、卵を割るだけでコンロを爆破できるんだ?」
「あははははははは、そんなこともありましたねぇ」
「あははじゃない」
 金蝉は、すっかり呆れています。それから彼は、まだ床に座り込んでいるご主人様に向かって、
「早く顔を洗って着替えてこい。飯が冷める」
「あ、はい」
 慌てて立ち上がり、洗面所へと向かう八戒さん。
 八戒さんがキッチンに戻ってくるまでの間に、金蝉はすっかりテーブルの準備を整えてしまいました。その間、天蓬は何をしていたかというと…
「自分で着替えられます!」
「え〜、でもこれが僕のお仕事ですから。ほら、遠慮しないで」
「します!…って、言ってる側から…ああ!下着まで脱がさないでください!」
 このやりとりは、キッチンまで聞こえていて…金蝉は盛大に、呆れたように溜め息を吐きました。



 擦った揉んだで身支度を整え、朝食を戴くと、八戒さんはご出勤です。
 ご主人様を仲良く見送った後、天蓬と金蝉は、まずは洗濯から始めました。
 洗濯機を回すまでは、金蝉のお仕事。以前天蓬に任せたら、洗剤を入れすぎたが為に、そこら辺中を泡だらけにしてしまったので、仕方がありません。
 干すのは、天蓬のお仕事。これだけは、金蝉にさんざん教育されて、天蓬でも一人でちゃんと出来るようになりました。
 洗濯が終わると、次はお掃除です。
 叩きを掛け、掃除機を掛け、フローリングの床や棚を磨き…と頑張っていた金蝉、ふと顔を上げれば、さっきまで一緒に雑巾掛けをしていた天蓬の姿がありません。
「天蓬?」
 訝しく思い、探してみると…いました。書斎です。
「何をやっているんだ?」
「あ、金蝉済みません。ここの整理をしていたら、つい…」
 照れたように笑う天蓬の手の中には、開いた本が。そうしてその周りには、散乱した本、本、本!
 お仕事が一つ増えて、金蝉は再び、深々と溜め息を吐きました。



 掃除が終わる頃、お昼です。
 金蝉手ずからの昼食を二人で戴いた後、午後は夕飯の買い出しに、二人そろって向かいます。
「あ、金蝉!ここに寄って良いですか?」
 いつものスーパーに向かう途中、突然天蓬は、立ち止まるなりそう言いました。が、金蝉は立ち止まることなく、あっさり、
「却下」
「ええ〜、ちょっとだけですから」
「駄目だ。お前のちょっとは当てにならない」
「本当に、ちょっとだけです、ちょっとだけ、ね?」
 可愛らしくお強請りしても、金蝉は頷きません。天蓬の首根っこをひっつかむと、引きずるようにその場を去りました。
 金蝉に引きずられながら、天蓬は未練がましく、いつまでもいつまでも、その姿が見えなくなるまで、本屋を見続けていました。
 何とか(天蓬の)誘惑を振り切って、スーパーに到着したメイド二人、早速お買い物開始です。品物を選ぶのは金蝉、レジに持っていってお金を払うのは天蓬。
「¥1980になります」
「はいはい。あ、¥10足りませんねぇ。どうしましょう?」
「¥1900で結構ですよ♪」
「え?本当ですか?有り難う御座います♪」
 天蓬の必殺スマイルに、チェッカーのお姉さんはくらくら(笑)。
 この後、同じようなやりとりを、スーパーの他、近所の八百屋さん、魚屋さん、お肉屋さんで繰り返してから、二人は帰宅しました。
「今日は¥2038のサービスですね♪」
「明日は少し、贅沢するか」
「はい♪」



 夕飯の支度も金蝉のお仕事。
 その間に、天蓬はお風呂にお湯を入れて、ベッドメイキングをして…夜の準備は万全です(笑)。
 キッチンから良い匂いが漂い始めた頃、ご主人様のご帰宅です。
「ただいま帰りました」
「お帰りなさいv」
 今日は金蝉がキッチンから離れられなかったので、天蓬一人でお出迎えです。
「お風呂にしますか?ご飯にしますか?」
「ご飯にします」
 何だか新婚さんな会話ですが、今ではすっかり馴れた八戒さん、上着を天蓬に預けながら答えます。
 受け取った天蓬さん、にっこり微笑んで、
「判りましたv」
 同時に頬にキス。
 途端に、八戒さんは耳まで真っ赤になります。
「て、天蓬さん…!」
「お帰りなさいのキスですよ。ほら、早く着替えてきてください」
 初なご主人様の反応に、天蓬はうれしそうに笑います。
 そんな二人のやりとりは…やはりキッチンまで聞こえていました。が、馴れている金蝉は、その中に飛び込むことも、溜め息を吐くこともなく、黙々と、ご主人様のために夕食を作り続けます。
 何だかんだで着替えを済ませた八戒さんがキッチンに到着すれば、夕食の準備はすっかり整っていました。
 三人そろって、
「戴きます」
 こうして、猪さん家の夜は更けてゆきます…。



 お風呂に入って、明日の準備を済ませれば、はい、就寝。
「今日も一日ご苦労様です」
 何とも爺臭い事をぬかしてから、八戒さんはベッドに潜り込みます。このまま朝までぐっすり…といかないのがこの話(笑)。
「…な、何?」
 ベッドに入って数分後、何者かがもぞもぞと、ベッドに入り込んできました。驚いて飛び起きた八戒さん、ベッドサイドのランプをつければ…
「天蓬さん!?」
「はいv」
 にっこり笑顔の天蓬が、いつの間にか八戒さんを押し倒しています。
「あ、あの、これは一体…?」
「おや?見て判らないんですか?お仕事ですよv」
 語尾にハートマークをつけて、きっぱり宣言してくれる天蓬。ここ数日繰り返されているというのに…八戒さんは未だ馴れていません。おまけに学習していません。
「お、お仕事って…」
「ご奉仕です♪」
 言うが早いか、鮮やかな手つきで八戒さんをベッドに拘束すると、天蓬は一気にパジャマの上着を剥ぎ、パンツを下着ごと引きずりおろしました。あまりのことに、八戒さんは悲鳴を上げるだけ。
 …その声も、すぐに、
「あ、やぁ…ん!」
「ここが良いんですね?八戒」
「ぃ!だめ!」
「嘘を吐いてはいけません」
「ひぃあっ!」
 甘い喘ぎ声に変わります。
 とても感じやすい八戒さんを、天蓬は見事な手管でもって攻めて攻めて…と、その時、
「何やってんだ、天蓬」
 寝室に乱入してくる人影。
「おや、金蝉いらっしゃい」
「あ、こ、金蝉さん…!」
 ドアの前、仁王立ちしている金蝉の姿に、天蓬は嫣然とした笑みを、八戒さんは羞恥に溢れた表情を、それぞれ浮かべました。
 そんな二人の対照的な表情を見ても、金蝉は何も言いません。つかつかとベッドに歩み寄ると、
「お前、八戒の奉仕は二日に一度と決めただろうが」
「そうでしたね」
「で、奉仕のない日は俺の相手だと、決めていただろうが」
「そうですね。でもね金蝉、八戒は今日、元気だったんですよ。それは僕のご奉仕に、手抜きがあった証拠でしょう?僕はこれくらいしか役に立たないんですから、それもちゃんと出来ないようじゃ、メイド失格です。だから今夜もう一度、八戒を満足させてあげるためにご奉仕しなくちゃいけないんです」
 天蓬のとんでもない理屈に、八戒さんは青くなり、金蝉は…考え込んでしまいました。
 やがて、
「成る程、一理あるな」
「って、納得しないでください!」
 どうも育ちの宜しい金蝉は、天蓬に流される傾向にあるようです。最後の頼みである金蝉が、ここで天蓬に説得されて素直に引き下がられると困ります。八戒さんは悲鳴のように
「行かないでください!金蝉さん!」
「おや?八戒、3Pがお好みですか?」
 少し驚いた表情で、天蓬は八戒さんの発言を、綺麗に取り違えてくれます。
「ちがっ…!」
「知りませんでした…判りました、金蝉、そう言うことですので、一緒にご奉仕しましょう」
 抵抗、抗議虚しく、天蓬はさっさと自分の都合の良い方へと解釈して、これ以上五月蠅くなる前に、さくさくと感じるポイントを攻めて行きました。こうなってはもう、八戒さんには為す術はありません。翻弄されるままに、嬌声をあげ続けます。
 一方…天蓬に3Pを誘われた金蝉は、暫し混乱していました。
 確かに、八戒さんは自分が出て行くのを止めましたけれど、それは天蓬の言うように、3Pしたいからというわけではなさそうですし、でもこれ以上八戒さんからは何も聞けないだろうし、しかしだからといって出て行くと、出て行くなと言った八戒さんの命令を無視するし、かといってここで二人の濡れ場を見ているのも…等と悶々と悩んでいると、不意に天蓬が顔を上げました。
「混ざらないんですか?」
 そう言った天蓬の笑みを称するなら、まさしく小悪魔。しかもかなり魅力的(笑)。流石の金蝉も、くらっ、といってしまいそうです。が、辛うじて、何とかその誘惑を乗り切りました。
「…嫌がってるんじゃ、ないのか?」
「え〜?貴方には、八戒が嫌がっているように見えるんですか?ほら、こんなに可愛いじゃありませんかv」
 にっこり笑って、天蓬は、八戒への愛撫の手を少し早めました。途端に、八戒さんの可愛らしい嬌声があがります。
 そんな八戒さんをいとおしそうに見つめた天蓬、金蝉を振り返ると、
「ね?」
「…」
「それにね、金蝉…三人でするなら、貴方、僕とも出来るって、事ですよ?」
 小悪魔が悪魔に変わった瞬間、金蝉のなけなしの理性は吹っ飛びました。遠慮なくベッドにあがり、天蓬に手を伸ばそうとして…
「駄目です、まずは八戒へのご奉仕が先です」
「…判った」
 頷くと、金蝉は天蓬に教えられたとおりの愛撫を、早速八戒さんに施し始めました。
 二人がかり攻められてしまっては、もう、八戒さんは逃げられません。天蓬一人でもメロメロだというのに、天蓬仕込みのテクニックを持つ金蝉にまで攻められてしまっては、ただただ、二人が望むままに声を上げるだけ…。
「愛してますよ、八戒v」
 天蓬がそう言ったのを最後に、完全に意識は飛んでしまいました。





 翌朝…
「八戒、朝ですよ、起きてください」
 今日も元気に、天蓬は八戒さんを起こしに来ます。
「…んん」
「早く起きてください。せっかくの朝ご飯が、冷めてしまいます」
「朝ご飯…」
 昨日と全く同じ展開…なのですけれど、昨日の二人がかりのご奉仕で疲れて切っている八戒さんは、そのことに気付きません。元より、天蓬が料理をするという恐怖(笑)の方が勝っていました。
「そうですよ。今朝は腕によりをかけて、八戒の大好きなワカメとお豆腐のおすましと塩鮭を用意したんですから」
「天蓬さん!?」
「あ、やっと起きてくれましたね♪おはよう御座います、八戒」
「あ、おはよう御座います…じゃなくて!天蓬さん、朝ご飯、作ってくださったんですか?」
「ええ。さっきも言いましたけれど、八戒の大好きなワカメとお豆腐のおすましと塩鮭を…」
 結果今朝も、八戒さんはダッシュでキッチンへと駆け出します。
 その後ろ姿を、天蓬は呆然と見送りましたが…やがてぽつりと、
「朝から元気ですねぇ。それじゃ今夜も、金蝉と一緒に頑張りましょう♪」
 こうして猪さん家の毎日は、恙無く過ぎてゆくのです(笑)。

Endlessend


No.012の勝様より頂きましたv
お姉さん。土曜日も仕事しようや(苦笑)
天蓬と金蝉…二人がかりなんて素敵過ぎですvv
金蝉の流されるままに鬼畜…と、言うか、なりきれてない鬼畜予備軍もいい感じですv
そして、天蓬。
卵を割ろうとしてコンロを爆破って…何処の家の花喃ですか(内輪ネタ/切腹)。
ともかく、投稿有難うでしたv またよろしくvv

2002.02.23 鬼灯

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