メイドニィさんの秘密vvv


 小さいけれどもとても趣味のいい家の前で、その家の持ち主である猪八戒サマは美しい顔を少々歪めておられました。
(やっぱり今日も……ですよね……)
 ご自分の家に入るだけなのに、何故こんなに気を重くしていらっしゃるのでしょうか。ですが、その理由が例え理不尽なものであっても、その辺の菩薩より菩薩らしい―――あ、華臣の頭に偶然の落雷が―――八戒サマは、怒るという術を持ちません。ご職業は小学校教師であらせられますが、やはり職業柄と言いますか、本当に教師の鏡のようなお優しい方ですねv
 と、その時。
 ガチャ。
「ッ!」
「ナニやってんの? 自分の家なのに」
 八戒サマの目の前で、内側からドアが開かれました。思わず固まってしまった八戒サマが、先程までドアノブを握ろうとしていた手を掴んで、その細い体を抱き締めながら、ドアを開けた男性は殊更明るく言いました。
「お楽しみはこれからでショ? ご主人サマv」
 八戒サマが顔を引き攣らせております。きっとこれからの事に期待しておられるのでしょう♪ 決して恐怖だの嫌悪だのではありませんっv だってその証拠に、『ご主人サマ』と言った男の方の方はとても嬉しそうなんですからvvv
 今日も今日とて美しいご主人サマを胸に抱き込みながら、メイド・ニィ健一は満足そうに微笑まれました。





「……っや、もぉ……!!」
「まだまだイケるでしょ?」
「もッ……むりぃ……!」
 目に涙を溜めて首を振る様は、愛らしい事山の如し(は?)です♪ メイドさんは微笑いながら耳元で囁き、同時進行でその白い肌を暴きにかかります。
 一人暮らしの冷蔵庫の利用法が上手なメイドさんのお陰で、少ない食費で実に美味しく栄養満点の食事をいつもとっているご主人サマは、すぐに寝室に連れ込まれました。今日も頑張ってご奉仕をしようと張り切るメイドさんは、すぐに大きなベッドにご主人サマを押し倒します。仕事熱心ですね♪
 耳朶を甘噛みするだけで体を跳ねさせるご主人サマを嬉しそうに眺めて、メイドさんは人間がこれ以上できるかというような厭らしい声で囁きます。
「今日はもーちょっとガンバってみようか」
 その言葉に、ご主人サマは恐怖と驚愕の……じゃなかった、歓喜の涙を流しておられます。何故か血の気が引いたように見えたのですが、気のせいでしょう♪
 もう意識も朦朧としているご主人サマを左手で抱き締めたまま、メイドさんは右手をベッドサイドのテーブルに伸ばします。カタ、という微かな何かの音で、ご主人様は恐る恐る問います。
「ッ………な…に……?」
 にっこり、とご主人サマに微笑みかけられてから、メイドさんは先程テーブルから取ったカプセルを口に含みます。その事をご主人サマが理解するより一瞬早く、しっかりとメイドさんは唇を合わせました。
「!! ……ッ、………………やぁ……!!」
 首を振るご主人サマの、なんと可愛らしい事でしょうv 切なげに少し開けられた震える唇に、メイドさんは無理矢理……いえ、優し〜〜〜く溶ける寸前のカプセルを押し込みました。
「んっ……やだぁ……」
 少しの苦味が口の中に広がって、反射的に飲み込んでしまったご主人サマは、ポロポロと涙を流します。その涙を吸い取って、メイドさんはなんとも嬉しそうな声でご主人サマの耳元に囁きます。
「それね、ボクが開発した速攻の興奮剤」
 催淫剤、と言わないあたり、まだギリギリの所で善悪の区別がついているんですね(区別がついているだけであって、罪悪感はない)。
「え……!?」
「この前のよりもーちょっとキツイから、気絶しないでね」
 あったんですね、"この前"。
「……ッ!!!」
 途端、ご主人サマの心臓がドクン! と大きな音を立てました。自分の耳に届く音を自分の心臓が立てるなんて、そうそうできる経験じゃあありませんv 貴重な経験ができて、得しましたね(絶対違う)v
「っあ……!! んッ、アアッ!!!」
 ゾクゾクと、背筋から首筋に恐ろしいまでの快感が這い上がります。咄嗟に躯を丸めて、シーツに包まろうとします。
 グイッ!
「ダメだよ」
「!!」
 丸めようと曲げかけた小刻みに震える足に、力強い手がかけられます。意識も朦朧として熱に浮かされたようになっているご主人サマが、普段からなにかと力仕事の多いメイドさんの力に敵う訳がありません。
「まだまだこれからでショ?」
「ア、嫌、いや……」
 ふりゅふりゅと顔を振りながら目をギュっと瞑るご主人サマは、犯罪的とか通り越してどっかの国の一つや二つ、余裕でぶっ壊せるくらいの可愛さですv 胸の前で組んでいる手をやんわりと解いてシーツに押しつけると、見開かれた緑の瞳からはらはらと、おいそれと真珠とかと比べてんじゃねェぞタコォ! ぐらいのノリの綺麗な綺麗な涙の粒が零れ落ちます。
「可愛いね」
「っ、な、にが……ですかァ……っ、ア、嫌……」
 クス、と小さく笑って、メイドさんは尖らした舌をご主人サマの唇に這わせます。
「ッふ! ん……!!」
 噛み締めていた口が薄く開いたのを見計らって、甘い口の中に舌を差し入れます。そろそろ息継ぎのタイミングを覚えてもよさそうなモノですが、そういう初々しいところがまた、可愛くて(イヂめたくて)堪らないんですvvv
「う、ふっ……は……」
 抵抗をする力を失って、時々痙攣するだけになった手首から手を離して、細くて跳ねる肩に這わせます。するとソコから熱が広がるようで、ご主人サマの思考回路は完全ショート(寸前だったらどこかの、例えば月の王国とかの人達/発表してる年齢に疑問を持たせるな自分)です。



 そーして、また今夜も可愛い啼き声が響くのでした♪







「…………………………………………ん……」
 疲れている時は、眠りから覚醒するのに時間がかかるモノです(あと呑んだ時も)。元々低血圧気味のご主人サマは、明るい光が朝日だと認識するのに、今日もかなりの時間を要しました。
「…………ぁ、もう朝……?」
 少し周りを見回しても、あの鬼畜な……じゃなかった、勘違いの……でもない、仕事熱心な(そう、これ)メイドさんはいないようです。
 でも、少し開いたドアの向こうから、朝御飯のいい匂いが漂ってきます。
 元々一人暮しだったメイドさんは、冷蔵庫の残り物から御飯を作るのが驚くほど上手です。実際男性の一人暮しは、某成人指定河童さんみたいに家事能力がとことん欠落するか、若しくはこのメイドさんのように、とことん家事(の代わりの反則ワザとか)が上手くなるかどっちかです。
 黒いスウェットに白いダブダブのパジャマ代わりのシャツを着ただけで(じゃないとメイドさんが怒るので)、ご主人サマは恐る恐るキッチンを覗きます。
「あ、オハヨウv」
 こっちを見ないのに何故気付くんでしょう。きっと愛のチカラv ですね(そんな簡単に片付けちゃあいけない気も、します)。
「食べるでショ? 早く座って」
「あの、今日は食欲が」……などと言おうモノなら、「じゃあボクがタベさせてあげるよv」ってな事になるので、言いません。そーゆー事になったら、食事どころか出勤も危ういのです。これはドコのメイドさんにも共通なようで(何のこっちゃい/笑)。
 溜息を気付かれないようにつきながら、椅子に座るご主人サマは、ある意味喜劇……いやっ、悲劇のヒロイン……いや、ヒーロー……は無理あるのでやっぱりヒロイン。
 目の前に差し出される、素晴らしく香りのイイコーヒーが、余計に悲劇を演出します。







 大体、幾ら優しいご主人サマでも、何故こんな強引で勘違いで鬼畜で何だか怪しいウサギとかのぬいぐるみを持っている(実はコレが一番謎だったり)男の存在を、警察に通報しないんでしょうか。
 それは偏に、このメイドさんを紹介してきた人物にあります。
 実は幼年を孤児院で過ごされたご主人サマ。そんな環境にも関わらず、成績優秀だったご主人サマを、小さな頃からなりたかった教師にするために、大学まで出してくれたシスターがいるのです。
 そのシスターの紹介で来たメイドさんを、どうしてサツに突き出す事ができましょう。そのシスターが『大学院の博士』とか『生命工学の権威』とかっていう肩書きに弱いとかゆーのはまた別の話です。





「ハイ、サラダv」
 コーンスープもあるからね、と微笑むメイドさんは、非常に本来の職を全うしているようにも見えるのですが。やはり、朝の日の光というのは、どんなに真っ黒でどす黒くて計算高くて執着心が強くて鬼畜で強引で、てゆーかボクがしてるコトの何がいけないの? 的な勘違い野郎でも、一般人くらいには浄化されて見えるモノなんですねv







 何はともかく、日に日に繰り返されるメイドさんのご奉仕に、心身共にとっくに許容範囲は超えているのですが。
 それでもまあいーかとかご主人サマが思えてきたのは、やっぱり愛ですねv
「今日は早いんでショ?」
「……ええ、まあ」
 両手をマグカップに添えてコーンスープを飲むご主人サマに、他の人が見たら絶対に気絶するってゆーか死? みたいな笑顔で微笑みかけて、メイドさんは食器を洗いにかかります。





 毎晩クスリ使用、なんて、密かに絶対許容してはいけないモノだと思うのですが。
 ……まあ、それでも。



 いーか。




後書きィ。

 さて、おかしな点から上げていきましょう。
★いわゆる"ラヴ・ドラッグ(媚薬の類)"は、一晩じゃ絶対に抜けませんって。しかもカプセル一個とか。一舐めで3時間は軽くもつのに。
★つーかクスリつかってコレ? 描写がなってない(所詮16歳……)。
★文が読み難い。いい加減昇進しろ。
★ってゆーか、なによりおかしいのは、ご主人サマ、受け入れてる!? ってコト……。
 これじゃあ『鬼畜』じゃないんですよね……隊員権剥奪されても文句は言えません。
以上が代表的なおかしい点です。
え? イイ点ですか? ……はて……?????

すいません、鬼灯サマ……もー捨てていただいて結構ですよ。こんなの。
では、無謀にもニィさんに挑戦・玉砕したハナオミでした。
……散ります(ぱぁん)。


No.006の華臣戒斗様から頂きましたv
皆大好きv怪しい男No1のニィ博士ですvv
それにしても…本当の話、華臣さん………お年はいくつですか?(オイコラ)
って、言うか、所謂ラヴドラッグの効果の程(持続時間とか…)を知っている時点でもう…
って、深く追求したくなりましたが…(笑)
それはまた後日にじっくりとv(いつだ!?)

ともかく、こんなに素敵に怪しいニィさんのメイドさんが見られて最高に嬉しかったですv
これからも宜しくですvv

2002.03.24 鬼灯

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