下町狂い咲きキネマ(少年画報社/猪原大介・オオシマヒロユキ)

『月刊アワーズライト』に掲載された8篇の短編を集めた短編集。題の通り、下町情緒あふれる、昔の日本映画のような作品が多い。

「なぜ誰も自分の意志で空へ羽ばたこうとしないんだ!!!」(独立国家秘密基地)

OKAMA先生に似た絵柄と、下町情緒と不思議が上手くマッチした世界で、全体的に少し奇妙で懐かしい雰囲気が漂っている。それでいながら、個々の話のテーマは主に「夢を諦めない」「自分を持って生きる」(「大銀河組2001代目組長!モコちゃん」はそうでもないが)と言ったところ。

「お前の血は老いぼれか…?俺の血は真っ赤だぜ!」(中庭)

つまり、大別すれば青春漫画…と言えるかもしれないけど、テーマをそのまま正面から熱くぶつけるというのでなく、やや斜め下から、それでいてストレートに響かせるストーリー展開、台詞運びになっていて、そのすこし懐かしい雰囲気と共にじんわり胸に来る。

「あンた侠(おとこ)だよ!」(大銀河組2001代目組長!モコちゃん)

書き忘れてたけど、全体的にそういったテーマをもっていながら、変な宇宙人(名前は森進一)が出てくる話もあれば893おかかえの殺し屋の話もあったりと、そういう意味でそれぞれの話で毛色がちがっていて、それに伴って微妙に絵柄がかわってたり、構成や効果の使い方も変わってたりするところも、作者の作風の広さを感じつつ、それでいて一つの短編集として違和感が無いあたり、個性の強さも感じる。

ストーリー全体的にしっかりテーマをもって奇麗にまとまっている。
少々アクの強い絵柄だが、ディフォルメのしかたも巧いし背景とかもよく書き込まれていて世界観が出ている。
構成力大ゴマの使い方とかのコマの割り方が巧い。このあたりも映画的な雰囲気を出すのに一役買ってるかも。
カメラ全体的に動的でリズミカル。ただ少々ワンパタ
キャラクタありきたりといえばありきたり、でも表情等魅力的に描かれてる。
最終話こういうギミックはかなり好き。
モドル

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