篠房六郎短編集〜こども生物兵器〜(講談社/篠房六郎)

短編集といっても、収録されているのは『やさしいこどものつくりかた』『生物兵器鈴木さん』『空談師(前・後編)』の三つで、さらにいうと同作者の短編集『家政婦が黙殺』に比べて初期の短編になっている。出たのはあとだけど。
三つなので、一つずつ。

『やさしいこどものつくりかた』
ペストが蔓延していた頃のヨーロッパ、町から離れたところにある、稀代錬金術師ジュベレン公の屋敷には、公と、メイドのシムレット、小さな子供のダドの三人が暮らしていた。一見幸せそうだがどこか奇怪なこの家にある用件で神父がやってきたところから物語は始まる。
『貴方は本当に良い子で本当にかわいそうで人形のように可愛くて
 人形のように可愛くて本当にかわいそうで本当に良い子で』

端的に言えば、悲劇をベースに喜劇的な狂気が少女の運命を侵食していく話…というのは少々大げさか。とはいえ、運命に翻弄され続けたシムレットの背景は重く、公の機械的な笑顔はそこに差した希望とは言いがたいうつろなものだったりする。そして最後にくるオチは、ある意味絶望的である意味すごく救いがある。…いや、救いがあるってとる人はもしかしたら少ないかな…。
『ずっと―― 君が望むだけ……』
また、使い方が判らないとかでトーンを一切使わないで描かれたこの世界は圧巻で、この時代の泥臭さを見事に表現している。さすがムサビ(当時現役)。執筆一年かかったらしいけど。

『生物兵器鈴木さん』
小学生の青春の1ページを下ネタで彩った青春ギャグマンガ。しかも普通の小学生の下ネタとはチョト違います。詳しくは言わないけど。
『変質者の体液だ』
また、キャラもなかなか壊れてて、小学生っぽくないようでやっぱり小学生っぽい微妙な感じだったりする。で、そんなこんなでいながら、しかし青春してたりするあたりに作者の良心を感じるべきか邪心を感じるべきか。

『空談師』
後に同じタイトル近い設定の連載がアフタヌーンで始まる、読みきり版
同じシステム上で、個人がボード(=世界やダンジョン)を作ることが出来るネットワークゲーム。そのとあるボードに半年振りの客としてやってきた一人+三人+一人。何故そんな寂れたボードに今同じタイミングで入ったのか、疑心暗鬼の中、違法プログラムの為管理会社によりボードそのものの消去が宣告される。
『この世界には殻しか無い 全ての目的は殻の隙間を埋め合わせる為にこそ――』
サスペンス的なつくりで、それと、現実・仮想現実間の境界・差異とを上手く合わせ、その歪みを上手く(連載版よりも)表現している。少々マニアックというか、敷居が高い感はあるかもしれないが、テーマの描かれ方については同系等の中では恐らく秀逸な方に入ると思う。

ストーリー次第に全貌が見えてくるストーリー展開は上手い。が、反面読みにくさはあるかも
この本では作者の成長の過程が良くわかったり。空談師に関して言えば、上手い。ライトな三浦建太郎っぽい。
構成力ストーリーがああなので、やはりそれを生かす構成力は十分にある。ただコマがごちゃごちゃしすぎ。
カメラこれも絵柄とあいまって少々ごちゃごちゃしてるかも。ただ高い技術力はカメラに制限をつけずに済んでいる。
キャラクタ癖があるが、それぞれしっかりキャラ付けできてる。
カバー裏空談師(連載版)の方が面白いのがちと哀しい。
モドル

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