満開の桜の花の下に立つのは気持ちが良くて大好き。
昨日までとは打って変わって冷たくなった空気の中で凛と咲いてる桜は、それでも雲ひとつない青空とのコントラストもあいまってすっごく綺麗。
確かこういう天気、花冷え、って言うんだったなぁ。そんなこと思いながら空を見上げていたら、突然ばさり、と視界を覆うみたいに…何か、降ってきた。
「わぁ!」
吃驚して咄嗟に掴んだ、手にはあふれんばかりの…さくらいろ。
桜の木の下に居るから当たり前って言えばそうなんだけど、今日の桜は寒さに縮こまるようにしてるから、花びらなんて落ちてこない筈。
ほんとなら。
「ラン、ラン、なぁ、びっくりしたか?!びっくりしただろ!!」
はしゃぐ声が耳に飛び込んできたのはその直後。
こどもみたいにぴょんぴょことわたしの周りを飛び跳ねてるのは…ついこないだできた、元気な仲間だ。
「うん、吃驚したよ、ジャン。いつ来たの?」
「さっきだ!ネコに聞いたらランここだって言うから、来た!」
今にもほめてほめて、とでも言いたそうな笑顔で真っ直ぐにこちら見つめる彼に、思わず大きな声を上げて笑ってしまった。

「で、これ、どうしたの?」
一緒になってひとしきり笑ったあと、聞いてみた。
「ランにやる!ランこないだ、すっげえええ頑張ったもんな!超ニキニキで、ワキワキだった!!」
あといっつもいろいろ教えてくれるからそのお礼だ!と言ってえへんと胸を張るジャン。
…微妙に答えになってるような、なってないような。
ま、いっか。多分美希さんにでも貰ったんだろう。
両の掌いっぱいのいちごみるくキャンディをポケットに詰め込んで、わたしはにっこりと笑った。最高の笑顔で。
「ありがとうジャン、すっごく嬉しいよ!」
そう言った瞬間、ジャンはこれ以上ないぞ!ってくらい目をきらめかせた満面の笑顔になった。

口に入れた桜と同じ色のキャンディはほろりと甘い味がした。
ジャンにもいっこあげる、そう言って包み紙を解いたキャンディを口に入れてあげたら「甘くてうまーい!」って大騒ぎを始めた。
もうちょっとあげようか、と言ったら「でもそれはランにやったのだからランのだ、ランが食え」と譲らない。
…これはあとでラーメンでもご馳走してあげようかな。

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春頃に拍手のお礼文章にしていたものをようやっとアップしますよー。
第5話直後のお話です。

ジャン君とランちゃんのおとーととおねーちゃんっぷりが大好きです。
二人のマイペース具合に振り回される不憫なレッちゃんも大好きですが何か!
ゴウ兄さんもヒゲも助けてなんかくれないんだぜ!美希さんは言うに及ばず!



b a c k







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