さあ、鳴海のどこがいいの?」






幸福の矛盾性




放課後の教室で、設楽に聞かれた。

設楽と鳴海とあたしは小学校のときからの腐れ縁でずうっと同じクラス。
でかくって馬鹿で女好きの鳴海と、細くって飄々としてて結構モテル設楽と
特に何も取り得のないあたしがいつも一緒にいるのは他人から見たら結構
ちぐはぐな感じがするだろう。
そんでもって、年上のお姉さま好きの鳴海とかわいー男子が好きなあたしがつきあってるっていうのは
さーらに、意外なことだ。


、だってこの前小さくて可愛い後輩君に告白されてて断ってたじゃん」
「げ!設楽覗き見してたの!?やだー!趣味悪―い!ストーカーだわー!」
「何で御調なんかストーキングしなきゃなんないのさ。変態は郭だけで充分だよ」
「郭って、あの選抜の?」
「そう、昨日も『今日から毎晩愛するなんとかに愛のメールを送ることにしたよ』とか
恍惚とした表情で物語っていたよ」
「へ、へえ…情熱的だなァ…は、はは…」
「で、鳴海のどこがいいわけさ?」
「うーん…」

思い返してみればそんなことを考えた事もなかった。
今までずっと一緒にいたから傍にいるのは当たり前とか思ってたし。
でもレンアイカンケイに発展していったのは鳴海だった。
同じ傍にいた人なら設楽を好きになってたってたっておかしくない。
顔は設楽のほうがいい。
身長は設楽のほうが低くてあたしの好み。
勉強も断然設楽。
鳴海はすぐにヤリタイシタイって下品にいうけど設楽はもっと大事にしてくれそう。
かといって件の郭君のように情熱的ってわけでもない(いや、彼位なのも困りものだが)

「なんでだろうねぇ」
「わかんないの?」
「うん。ぜんっぜんわかんないや」

ー、設楽ー、かーえろーうぜー」

鳴海が後ろから圧し掛かってきた。

「ナルミタカシクン、ナンデスカソノキズハ」
「これ?中3の奴とちょっとな」
「喧嘩だろ」

おまけに喧嘩っ早い。

「だーいじょうぶだいじょうぶv、心配してくれたわけ?」
「まさか」
ちゃんつめた―い」


ぴーんぽーんぱーんぽーん

「俺たち日直教師が帰れねえからさっさと校舎から出て行けこのガキどもが」
という内容の放送がかかった。

「さーって、ではとっとと帰ろうかねえ」
机の横にかけてあったカバンを手に取った。
その横に立てかけてある設楽のカバンも渡そうとするとそれを制された。
、俺今日は帰る前にする事があるからさ、先に帰っといて」
「やること?…まさか。鳴海、今日の日直の先生は?」
「えー、古典の綾子ちゃん?」
「設楽!あんたまさか綾子ちゃんを…。だめよ、いけないわっ、鳴海じゃあるまいし!
放課後の特別淫猥授業!狙われた女教師!!設楽ー!あんた14歳という若さで
性犯罪に手を出してどうするの〜〜〜!!?」
…、何で俺があのお局様に手ぇださなきゃなんないのさ」
岡倉綾子、古典教師、独身、47歳。
「あっはっは、その場のノリさ、設楽クン。まーいいや。用事済まして早く帰りなよ。
冬場は日が暮れるの早いんだから。襲われないようにね」
も鳴海に襲れないように気を付けなよ」
「てめえ…人を獣みたいに…」








結局用もないのに残っていた2人は綾子ちゃんに追い出された。
設楽がその後どうなったかは誰も知らず。

薄暗い帰り道ふと、鳴海を見上げた。
男の癖にうっとおしい長髪とでっかい身長。
設楽の言った事が蘇ってきた。
「鳴海のどこがいいの?」
か。

、何考えてんの?」

鳴海と目が合った。

「…鳴海はさ、あたしのどこが良かった?」
「お前の?」
「ここがすきとか、こーいうとこがいいとか」
「そりゃお前心も体も相性バッチリなとこが…v」
「真面目に」

いつものように突っ込みも何も入れないあたしに鳴海はあら?となった。
暫く考えて、鳴海が言った。

「それって、絶対答えなくちゃいけねえ事?」


鳴海のスポーツバッグがアスファルトに落ちる。
鳴海の腕が、あたしの肩を掴んだ。
触れる唇と唇。
生温い、鳴海の舌が入ってきた。
突然の事なのにどこか客観的に見てるあたし。
目を瞑って、鳴海と繋がっている所だけに集中した。
あたしの舌を絡めとったり、歯列をなぞったりして。
ああ、キスってこういうものなんだ、と心の中で思った。
どのくらいの時間が経ったのかは分からないけど息苦しくなってきた頃に、鳴海が離れていった。

「……、鳴海…」
「で、どうだった?」

顔が熱くなって、自分でも真っ赤になっているだろう事がわかった。
うつむいてもにやにやと鳴海が覗き込もうとしてくる。

「嫌だった?」
「別に…」
「じゃあいいんじゃねえ?」
「は?」
「お前の事好きな理由だよ。舌入れで嫌でもねえんだろ」

鳴海はスポーツバッグを拾い上げて肩にかけなおした。

「俺は別にどーでもいいと思ってたんだよ。
何で好きなのかとか…、どこが好きなのかとか…めんどくせえじゃん」
「そういうもんなのかな」
「そーゆうもんじゃねえ?」

そっと指先で唇に触れた。
まだ鳴海の熱が残ってる気がする。
ああ、そういうもんなのかも知れない。
どこが好きかなんて聞かれても分からない。
どこが嫌いかといわれても困る。
それはもう全部受け入れちゃってるからかもしれない。
鳴海をまんま鳴海として認めてるからかもしれない。
きっと、そういうもんなんだ。

「じゃ、かえりましょーか」
鳴海があたしに手を差し出した。
ちょっとだけ照れ笑いを浮かべて、あたしはその手を取った。













「でもいきなりはどうだろうねえ。やっぱり獣だよ鳴海は」
「がっ!お前あんだけよさそうな顔しといて…!」
「何、あんた目ぇ開けてたの!!??やだー!サイテー!!」




























テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル