愛し方を知らなかったから、何もできなかった。






























わからなかったから、何も、しなかった。











































「好きだ」と言ってきたのは、彼女からだった。
しかし、前から自分も彼女のことが多少なりとも気になっていた。
いつも、図書室にいる彼女は、別に何ともせず、ただぱらぱらと本をめくり、ほんの数分のうちに帰っていく。
だがその数分の内に、視線を感じるのは一度や二度ではなかった。
自分自身も、はじめはさして気にも留めなかったが、それが毎日続けば、いくらなんでもやはり気になる。
はじめて視線を感じてから二ヶ月ほどの日に、初めて声をかけた。
激しい雨の日だった。
カウンターで書物を読んでいると、また彼女が見ている気配がした。
書物から顔を上げて、ひとこと「何だ」と聞いた。
彼女は、今まで黙っていた奴が突然に顔を上げたことに驚いたのかどうかしらないが、驚愕していた。
えーと、などと言葉を濁しながら目線を泳がせる姿は、一瞬子犬のそれを思わせた。
もういちど「毎日何の用だ」と聞く。
すると、彼女が照れくさそうに言ったのだ。
「あたし、といいます。中在家さんのこと、ずっと好きだったんです。…よければ、付き合ってくれませんか」




その場で「ああ」と言った。
今までに無かった事だった。
女と付き合うことは数度あったが、そのどれもが一ヶ月も経たない内に終わっていた。
そう見ると、彼女、との付き合いは今までに無く長いものとなったのだ。


次の日から、毎日食事を一緒にとるようになった。
一週間後には互いの呼び方が「長次」「」になった。
二週間後に、町に一緒に出かけた。
三週間後に、唇を重ねた。
一月後に、食事を毎食共にすることを断った。
は、「わかった」と言って、その日から別々に食事をするようになった。
その十日後に、はじめて肌を合わせた。
それからは二日か三日に一度の割合でそれをするようになった。
二ヶ月が経つ頃には、が図書室に来るのは週に一度か二度になった。
前と同じように、本をパラパラとめくって、二言三言言葉を交わして、それからずっとぼんやりしている。
図書室が閉まる時間になって声をかけると、やっと日が暮れかけていた事に気付いたかのように、はっとして、
「ごめん」と苦笑していいながら、図書室を出て行く。
いつの間にか、肌を重ねるとき以外に会う事は、ほとんど無くなっていた。
は何も言わなかった。
だから、自分も、何も言わなかった。



最初、たどたどしかった行為も、今では自分を抱きしめて離さないようになっていた。








もともと口数が少ないものだから、特に何も聞かないままに三ヶ月が過ぎた。





初めて声をかけた日のように、激しい雨の日。
図書室でいつものように、はぱらぱらと本をめくって、俺はカウンターで仕事をしていた。
ぱたん、と本を閉じる音がして、が口をあけた。






























































「別れようか」



































は、声を震わせることも無く、ただ、涙だけ、流してた。
















































その切なさと激情は、きっと、この雨に似てた。







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