セーラムピアニッシモ
「さん!良かったら俺と付き合ってくれませんか!?」
「…、ごめんなさい、私、好きな人が居るんです…」
「…あ、…うん、わかった、じゃあ…」
「、お前いつもそんな風に断ってんの?」
昼休み、武蔵野森学園中等部屋上にて。
貯水タンクの傍に横になっていた三上がいった。
それに対してはにっこりと天使のような笑顔で
「あら、私に告白してあっさりと拒絶された負け犬の三上亮君、どうしたの?」
「てめ…(怒)この二重人格が…」
「そっち行ってもいい?」
「あー、ドーゾ?」
錆びかけた梯子を上って、が三上に並んで座った。
「ピース吸ってるんだ」
「んあ?あー」
三上の横にクシャクシャになって放り投げられた空き箱を見てが言った。
「へえ、メンソールじゃないんだね」
「当たり前、そういうお前は」
「あたしセーラムのピアニッシモ」
「はっ、意外に根性ねえな」
「失礼な。あんまりヘビーなもんこの年から吸ってたら早死にするわよ」
「んなこと言うんだったらてめえも吸うなよ」
「冗談。これはやめらんないわよ」
と言ってはポケットから件のセーラムの新しい箱を取り出し、咥えて火を点けた。
「マッチ?」
「いや、今日は特別。ライターのガス切れちゃったのよ、今日買いにいく予定」
「ふうん」
「ジッポ使ってるんだから」
「すげえじゃん」
最初の白煙をが口から吐き出すと同時に、5時間目の開始を知らせる鐘が鳴った。
は悠々と美味しそうに煙草を吸いつづけてる。
三上も起き上がる気配すらない。
「…優等生様がサボタージュしちゃっていい訳?」
「次の時間、自習なのよ」
「あっそ」
とん、と慣れた手つきでは灰を落とした。
「サボリってさあ、青春だよねえ」
「なんだよそりゃ」
「天気のイイ日に屋上でこーやってさあ、煙草吸ったり昼寝してみたり」
「ヤったり」
「エロ魔人」
あははとは笑った。
「まあそれも含んで、こーんな気持ちいい事知らないで青春過ごしてる奴ってすっごい人生損してるよね」
「ああ、まあそれもそうだよな」
ニヤリ、と三上が笑った。
「じゃあさ、
そのセーシュンをもっと楽しむ為に、ヤんない?」
横目でちらりと三上を一瞥するとはこの上ない極上の笑みを浮かべた。
「そのヤリチン、成人迎える前に腐り落ちるねっv」
ぽーん、とセーラムの箱を三上に投げ渡した。
引きつった笑いを浮かべた三上を放って、は梯子を降りた。
「三上ー、私今日は病院行くことにするからぁ、三上はそれ吸い終わるまでは
ゆっっっっくりしててねvじゃ、ばいば〜い♪」
ばたんと音を立てて屋上のドアが閉まった。
「…早死にしろってか?」
むくりと体を起こして未だ一本しか中身の減っていないセーラムの箱を手にとった。
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