底におちてく









いつのまにか気を失っていたらしい僕は、まどろみの中での異様な感触に、
一度に意識がはっきりするのを自覚した。
僕はうつ伏せで、冷たい床の上、からだの節々が痛むけれど、
それ以上の気持ちの悪さがそんな痛みを凌駕していた。
目を開けてもなにも見えず、ただ暗闇が恐怖を何倍にも増幅して、
体の感覚を研ぎ澄ますしか僕には手だてがなかった。
明らかにそれは……。
とにかくそれから逃れようと身を捩った僕の耳に、含み笑いと共に声が聞こえた。

 「やっと目が覚めたのかい?一乗寺賢くん」

そして僕は全て一瞬のうちに理解した。ぬるぬるした感覚、そこに触れられて体中に嫌悪感が広がる。

 「なにするんだ!離せ、やめろよ」

段々と目が慣れてきて、僕は薄気味悪く笑う男の顔を見た。
尋常じゃない目付き、低く笑う声、そしてその行為。

 「おっと、あまり騒ぐんじゃない、ほかの子供達が起きてしまうよ。
   ……ただし、見せたいって言うなら話は別だよ?」

その言葉にぎょっとした。見まわせば、確かに多数の子供達の眠ってる気配が感じられる。
その時、思わず声が上がりそうになって慌てて僕は息を呑んだ。
異物感がはっきりと感じられて、僕はそれから逃れたかった。
その抵抗はいとも易々と封じられて、その男は行為をより一層エスカレートさせた。

 「嫌だ・・・やめてっ!!お、お願いだから」

無駄だとわかっていてもそう懇願するしかなかった。プライドとかそんなもの構っていられない。
けれど、そんな僕の言葉にはお構いなしに、内部で蠢く指がゆっくり抜き差しされる。
その度に内壁を刺激されて、僕はそれに堪らなくなって呻き声をあげた。

 「感じちゃってるのかい?いいよ、思いっきり声出して構わないんだよ」

いやらしい言葉で、その汚らわしい行為で、僕をとことん打ちのめす。
僕は最後の抵抗、堪えに堪えて声を殺す。
そこに意識を集中させないようにするのに、気が付けばその動きを追ってしまう。
段々と激しさを増す指の動きに、その部分からは気味の悪い音さえ聞こえてきて、僕は思わず耳を塞ぎたくなった。

 「もう限界が近いようだね」

男は気持ち悪い、嫌な声音で囁いて、僕の立ちあがってるものを乱暴に掴んだ。
頭の中が真っ白になる。抑えようとしても与えられる刺激に合わせて声が、体が。
しまいには、全身に例え様のない感覚が広がり、それに耐え切れなくて、
僕は意識が遠のいて行くのを感じた。
目が眩んで、やっと暗闇に慣れた目はなにも映さなくなった。
僕は、僕を見つめる無数の目を意識しないで済む事に、絶望の中で幾らか感謝した。
体内で熱く弾けた感触、意識を手放す瞬間にありありと感じられて、僕は自分が穢れてしまった事をうっすら感じていた。









END



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