闇に咲く花 “選ばれし子供たち” なんだか君はいつまでたっても、その不思議な繋がりを持つ集団に馴染まないようで、それでいて確固たる自分の居場所を確立して行く。それはいつのまにか君の無二の親友を自負する大輔くんの力も無視できないんだろうけど。地理的な距離も君の今までの所業も何もかも軽く乗り越えて、君達は他の選ばれし子供たちの誰よりも強く深く結びついている。 ねえ、ボクは?ボクは二度もあの世界から必要とされていたのに。 意味があるって思っちゃうじゃないか、他の子達とは違うって思い込んじゃうのも無理はない。ボクだけが特別、自意識過剰だったなんて事はないよね?それなのに違ったんだ、ボクはたいして。ボクの存在は自分が思っていたほどは重要じゃなかったんだ。 あの時、大輔くんはジョグレス進化の感想を嬉々として語って。それは予想も出来ないほどの昂揚感、驚きを彼等に与え。気持ちわからなくもないけど。その時ボクは思ったんだ、じゃあ、ボクもこんな気持ちに? 違ったんだよ、違うんだ、まるで。あの感覚は君達二人だけの間でしか起こり得ない現象だったんだよ。 あんまり自分達だけが特別だなんて、あからさまに酔いしれないでくれないかな。すごく凶暴な気分。 皆で集まって大騒ぎして、ボクもたくさん笑って少し箍が外れて。 暮れてゆく空を皆で見上げていたら、ちょうど隣に一乗寺くんが居た。見るとはなしに見ていたら、視線に気付いて一乗寺くんはボクの方を見てにこりと笑った。ボクが今、なにを考えていたか知ったら、きっとそんな風には笑えない筈だよ? 誰にも気づかれない様にそっと耳打ち。君は変わらず微笑んでいいよと一言。ほんとにいいの?どんな顔をしていいのか分らずに下を向いて歩いてく。 大輔くんが振り向いて、駅まで送ってくぜって声を掛けるのを、君は買い物してくからってやんわり断り、ボクのほうをちらりと見る。そして皆がそれぞれ家へ向かって走って行った後、残されたボクは一乗寺くんを見つめてた。 「ほら、皆居なくなったよ?なに?皆に聞かれたらまずい事?」 そんな風に笑うようになったのも、きっと大輔くんのせいなんだろうなあ。曖昧な笑顔のままでボクは、君を見る。やおら君の手を引いてずんずん歩いてく。ボクの頭はやけに冷めてて、人気のないビルの階段へと君を連れてくる事に成功した。 振りかえって、まだよく事情の呑み込めていない一乗寺くんにキスした。勢いつけてたもんだから、それは唇を外れて頬に触れた。 もう笑顔は消えうせていた。真顔でボクをみつめる一乗寺くんはひどく動揺していた。 「あのね、二人っきりになってしたかったのは、こういう事なんだ」 壁に押しつけて、今度は狙いが外れないように、ゆっくりと唇にキスした。余韻に浸る間もなく、君は顔を背けた。逃げられない様にボクは下半身を押し付けて、片手で一乗寺くんの顎を捉えて真正面を向かせた。目がひどく怯えて、小さな声で非難めいた言葉をボクに。 「こんな事、しちゃ……駄目だよ……」 却って君に酷くしたくなった。段々昂ぶってきちゃって、ボクは自分の荒い呼吸を人事のように聞く。服の上から君の敏感なそれに触れる。君の意思なんか無視して、段々と大胆に手を動かしていく。慌ててボクの手を払おうとするけど、そんな行動は既にお見とおしなもんだから、先手を取ってその手を抑えつけ。本格的な抵抗を示す前に、君を溺れさせちゃえば、こっちのもの。 短く吐く息が段々と切羽詰ってきて、抵抗する体から力が抜ける。上気した頬が妙に切なげで、自分でも何をしてるんだか。これじゃ犯罪みたいだ、みたいじゃなくてそのものか。その息遣いを聞いてたらなんだか歯止めが効かなくなりそうで。力の抜けきった体は壁をずるずると滑って、床に崩折れた。倒れないようにボクも屈んで一乗寺くんを支えながら、その間もゆっくりと、反応してる君のその部分に刺激を与える。 片手でゆっくりシャツをめくり上げていく。滑々した肌がうっすら赤く染まっていて、思わず息を呑む。空いてる方の左手で胸をすうっと撫でると一乗寺くんの体はびくんと撥ねた。服の上から触れてるのがもどかしくなって、下着の中に手をもぐり込ませると切なげな吐息が。焦らすようにゆっくり指を絡めたら、体が一気に強張ってボクの手の中にそれは震えながらは熱を放った。荒い息を吐いて、呼吸を整えてる一乗寺くんにボクは微笑んでやさしく言った。 「ね、ボクのもお願い」 目を伏せたままで動こうとしない一乗寺くんの指を、直接自分のものに絡ませて、その上からボクはいつも自分を慰める時のようにゆっくりと時に激しく擦り上げていった。なんで君がそんな声を上げるの?徐々に高みが近付くにつれて、一乗寺くんは。 目尻から一筋、涙が流れた。こんな事を無理やりさせられてショック受けたのかもしれないね。でも抑えられない衝動が、そんなものお構いなしでボクを駆りたてる。君の息遣い、冷たい手の感触、動きに合わせて揺れるさらさらした髪の香り。 「っあ……」 いつもの何倍もの快感に目が眩んで、ボクは一乗寺くんの手の中に。白濁したそれが、君の手から溢れて、君の膝を、床を汚した。 「こんなの……嫌だ、……嘘だと言ってくれよ!」 呆然と手の中を見つめて、一乗寺くんはボクを見つめる。本気でそんな言葉が欲しいのかな?だったらいくらでも。でも絶対に手放さない。だって汚れた君は一段と綺麗。 「ボク達いつか、かけがえのないパートナー同士になれると思うよ。近い将来必ずね」 涙と精液でぐしゃぐしゃ、なのにどこか清らかな表情でボクを煽る。少しずつ、ゆっくり時間をかけて、君をボクのものに。そうだな、まずは手始めに。 ―――ボクの名を呼んで。 END
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