再び、意識を取り戻した時には
何の音も聞こえなかった。
目覚めると、壁際に向かっていたので
目の前は暗かった。

寝返りを打とうとして、
寝ぼけながら半回転したら
リビングから光が差して
すぐ真横にズボンが見えて
手をかけそうになって慌ててやめた。
何故なら
かかしのジーンズではなかったから

びっくりして跳ね起きてみると
ちょうど私と真反対に
頭を置いてうずくまって
ブランケットを下敷きにしている
白狐、もとい 
空が半裸で寝息を立てていた。

唖然としてしばらく
寝起きの頭で考えた。
とりあえず状況を悟ろうとするより
相手が上半身裸であることに嫌悪した。

何となく、どうゆう展開かは理解して
当の部屋の主はどこに居るんだろうかと
寝る前と変わらずに	
蛍光灯が照らすテーブルの方を見た


そこには
何時なのか分からないけど
まだ紙面とにらめっこしている
かかしが居て、
目の下に深いくぼみを作って
卓上に顎していた。
「眠い」という文字など浮かばない位、
目はしっかり開いているけど
顔面に疲労が明らかに現れていた。

いつもの事だ。
周りがやめても頑張っている。
誰も居なくてもやめない。
それが結果として健康を痛めている、
本人だって気付いているに違いない。
でも何がそうさせるのか、
彼を皆が欲するからか、
頭に渦巻く音が止まらないのか、
休むことなく仕事をこなしてゆく。

まだこっちに気付かないかかしを、
遠目に見つめて切なさが芽生える

好きで好きでしょうがない。
大切だから、かかしを止めたい。
でも大事だからこそ、止められない。


隣に寝ている空に
しょうがなくブランケットを
かけていると、ようやくかかしが気付いた

目でちょっと抗議すると
苦笑いしながら
すぐさまベッドルームへやってきた。
そのまま雪崩れのように
押し倒されて、空の足を踏んでしまった

昔のように膝枕した。
こんなに広い背中なのに、
まるで子供みたいに感じる。
弱音は吐かないけれど、
やっぱり
疲れているんだと思った。


カーテンを見やると
外が白くなっていた。
発熱はすっかり収まって
体が軽くなっていた。

何時か気になって
目をうろちょろさせると
少し暗がりのベッドの上、
かかしが
不意に唇に触れてきた。

何をどうする隙もなく、
あっという間にまた
壁際に押し倒されてしまった。
空が、痛さのあまりか
いびきを止めて足を縮こめた。
私の右腕を、
筋ばったかかしの手が
掴んで頭の上へ持ち上げる

髪に触れると
昨日より少し柔らかくなっている感じがした

目が合う。
逆光の中、
私を確かめるように
見つめて微笑んでくる。
それをこんなに自然に、
また出来るようになるなんて
本当に思わなかった。
切なかった。
側に居るのに本当に切ない。

綿シャツの
一番上のボタンを
外された。

首に、鎖骨に
あたりかまわず
唇を這わされて、
生え際が黒くなっている
銀髪のてっぺんしか見えなくなると、
思考回路が壊れそうになるのを
必死に抑えて、頭を抱きしめ
無理やり動きを止めた



今まで何度か機会があったけど
どうしてもできなかった。
経験がないわけじゃない、と
前にも言ったけど

相手は、いつも
疲れきったかかしだから。

以前はアルバム作りの真っ最中で
本当に会う時間すら少なかった。
今また何かの作成で
寝る間も惜しんで仕事している。
十分な休暇を取れた期間には
私は側に居なかった。

服の上からでも
筋肉以外何も覆ってないような腕と、
痩せた上半身が触れて分かる。

そんな柔な体じゃないのは分かってるけど
極致の体を壊してしまいそうという感情。
こんな事を本人には言えないけれど
とても踏み出すことが出来なかった。
それから、やっぱり
彼が大事なのだと思う。
大事過ぎて、これ以上何も出来ない。

ともすれ今回に限れば
空が隣に居るのが、一番の理由だった


予想していたのか
容易く離れて、困ったような顔して
髪に触れてきた。
実際あまり元気もないに違いない。
頬を両側から抑えられて
甘んじて軽い逆襲を受けた。
そのまま、また唇を触れる。
どちらともなく繰り返して
それだけで気持ちは頂点を越えた


時刻は思っていたより経っていて
朝の5時前だった。
でも、仕事に遅れる位、
この喜びの比ではなかったので
もう寝て欲しいと思って
送ってもらうのを断った。
一睡もしないで運転するのは
いくら頑強な人間にでも勧められない

ところが、かかしはうんと言わなかった。

一度決めた事は必ず守る、
そうゆう人なのは良く知っている。
しかし、
これ以上時間のロスと迷惑を
かけたくなかった。
そう言うと
いつもの気分転換と言い張って
私の手を掴んで
さっさと鍵を持って出てしまった。


急いでいる様子で、
胸が痛んだ。

どうしてこんなに
私はお荷物なのか。
助けるどころか
傷つけたり、悪態つかせたり、
拒んだり、苛立たせたり、
出会ってから彼に
何もしてあげられていない。

流れ星に祈った
私みたいのは駄目だから、と。
なのにこうして
願いと逆の事をしている


彼にとって幸せとは何なのか。
私にできることって何なのか。
出会ってからずっと
ずっと考えている事だった。
私と居て、
かかしは幸せを感じる事があるのだろうか

手を引かれながら、
延々と自分に出来ることを
考えていた。

そうしている間に
車に乗せてもらって
中央線に向かっていると
思ったら、
なぜか湾岸高速に乗った。






つづく
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