日は明けて16日になっていた
あの日みたいに空が白んでる

この日は夏なのに
結構肌寒かった。
私は裏口で待っていた

でも他のファンの子達が
かなり大勢群がっていた。
最近ではかなり大型のイベントだったから、
しょうがないとも思う。
1時間待ったところでやっぱり
やめようと思った。
こんなに囲まれてるのに
私だけかかしに会うのは到底無理だ。
私はある決心をした 

かかしが人だかりの中に、私の姿を探さないか
少し心配したけど
表玄関の方へ移動した

頭の中で色々考えていたけど
彼女が居るか居ないかとか、
私が何番目だとか、
もうどうでもいいと思った


それからしばらくして
クルーのワゴン車が去ると
出待ちは一人残らず帰って
裏口辺りはびっくりするほど静かになった。
会場の中では備品を移動する音が
けたたましく鳴っているけれど
地上には私一人



まっしろな空を見上げて ただ待った


時折、搬出を行うスタッフが
裏口でうなだれている私を見て
気分悪いのかと心配してくれた

かかしが二次会に出かけたとしたら
きっと3時間くらいかかる
それ以前に帰ってくる保証なんてない
分針が朝6時にあと一歩まで近付いた

若干薄着、というか夏だから
当然半袖なのでかなり冷える
膝を抱え込み顔を埋めるようにして
ただひたすら待った
黒い服を着ていたので
その姿はきっと
おにぎりみたいだったろう


タッタタッタタタ
とスニーカーの音がする。
新聞配達だな、と
思って顔をあげる



そこにはかかしが、
息を切らして立っていた
ちょっと苦しそうに
下を向いて息を整えると
彼特有のサインを
手で作って待たせたなと
やたら低い声で言った

びっくりした
だってまだ40分くらいしか
経ってない。
それよりかかしが
私が待ってるって信じて来たと
いう事実に面食らった

私は笑った
笑ってちょっと泣けた
自分の意志で待ったくせに
ちっとも来てくれる可能性を信じてなかった




やっとお互い自然に笑い合う事ができた
初めて手をつないだ
かかしは私の夜風でしめった髪を
くしゃくしゃと乱暴に撫でた




それから 色々分かった

今日のイベントの契約書に
私の署名があったのを見ていたこと

ラジオであんな事を言ったのは
悔しかったからだってこと
意外と子供なんだね、と私が言うと
うつむき加減にかかしが吹き出した


ステージの高揚感が
残っているのか
寒いからか
かかしの頬は赤くなっていた
きっと私の顔も同じだろう







つづく
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