あとがき---

今年の夏は
暑さに欠けていて
比較的過ごしやすかった。
その代わり、
毎年決まって行く
海水浴は散々に終わった


8月初めに
ハルキ達と海に行った。
目的地まで2時間位かかるので
家を出たのが朝8時だった。
その時は太陽が燦々と照っていて、
でも着いた頃には雲がどんよりしていた

会社の意向としては珍しく
夏休みを3日もくれた。
これは破格だった

気温は20度なくて
私は寒くて水着だけになる勇気もなく、
結局パーカーをはおって
海の家で過ごしてた

沙耶という、
ハルキの彼女も一緒に来ていた。
彼女は私達より3つ年下で、
髪は黒く背中まである。
顔立ちは可愛い感じだ。
白い水着で
寒さにも負けず、仲間達と
浜辺で波を追っかけて遊んでいた

私は特に見せる
相手がいるわけでもなく、
どちらかと言うと
そうやって遊んでいる皆を
見てるのが楽しいので参加している。

ハルキもまた、海パン一張で
遊んでいて、しばらくすると
海の家へ戻ってきた。

年寄りだな、と
ラーメンを食べながら
嫌味を言われた。
毎年の事なので気にしない。
世間一般からすれば
私も一応「若い」世代なのだから。

それより何となく
彼らの間に距離を感じていた。
内情はよく知らないけど、
沙耶は夏前になっても
クラブに来ることはなくて
この日半年ぶりに会った。
ハルキの口からは何も聞いていない。

メールの内容から、
仲直りして上手くいってるのだと思っていたけど。
私から聞くのもどうかと思い、聞けずにいて
彼らがあまり言葉を交わさないのが
気になっていた。

沙耶はハルキの友達の
ダイという彼と仲が良い。
私達が茣蓙でぼうっとしている時も
二人は
何だかじゃれあっているようにも見えた。

いいの?と
それとなく聞いた。
直接的に触れられる問題でも
ないと感じたから。
するとハルキは
割り箸を水切りするように
大きく振り回して
何が?と話をはぐらかしたので
しょうがなく
放っておいていいのと聞いた。

「本当、鈍感だな」

言われて
再び海の方を見ると
二人はいつの間にか
手を繋いでいた。

思わず口元を押さえた。
その私の態度に
怪訝になりながらも
お前が気にすることじゃねー、と
苦笑いしながら
拳を握り締めているのが見えた。

私は本当に鈍感だ。
ひどい事を言った気がする。
2月に帰り際、
彼女を大切にしなきゃ、と。

前歴から考えて
ハルキが振ったのだと
勝手に思い込んでいた。
でも多分ハルキが付き合っている間に
そうゆう関係が生まれていたのだ。
あんなに酔って、
弱気になっていた理由が
やっと分かった。

彼と長く友達で居ながら
辛い思いに
全然気付いてあげられなかった。
それどころか
私は自分の気持ちばっかりで

ごめんねとしか言えなかった。
ハルキは呆気に取られた後、
小学生みたいに馬鹿を連発した。

昔はもっとやんちゃで
少しトゲトゲした所もあった。
でも今のハルキはこの海みたく
おおらかで成長した気がする。
沙耶に出会って
何かが変わったんだと思う。
それなのに上手く行かなかった事を
残念に、切なく思う

帰りはそれなりに楽しく
皆で会話して、嫌な雰囲気はなかった。
運転しているハルキが一番喋ってた

それぞれの家まで送って
私達二人だけになると、家に行かず
近所の河原に出た。
トランクに去年の花火が
まだしまってあって、やろうと言い出した。

残りの缶ビールを空けて、
いざ火を付けてみると
しけっていて線香花火しか出来なかった。

赤黒い小さな明かりが
ハルキの顔を少し照らして、
ダイよりずっと男前だと思った。

火が消えた時、
「爺婆になるまで
ずっと一緒に居れたらいいよな」
と言った。


私も同じ気持ちだった








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