告白
いつからだっただろう。トウヤに対する気持ちがこんなになってしまったのは。 気づかないふりをしていたのに,もう抑えられない。 ただ・・・・自分の本当の正体がばれてしまうまで。それまでは何も言わないようにと思った。 懐柔するために,言ったことだと思われたくなかったから。 自分の正体がわかられてしまった後。 けれど,トウヤは今までと態度を変えなかった。そして,皆も。 それが嬉しくて。けれど,そんなことは言いにくくて。なんともいえなかった。 そして。 今がそんなときではないこともわかっているけれども。 トウヤに思いを告げようと思った。 トウヤとこうしていられるのがあとどのくらいかもわからないし。 後悔はしたくなかったから。 コンコン,コン。とノックする。 はい,という声を聞いてからドアを開ける。 つい,今までのように,するっとドアから入ってしまう。 そんなに警戒しなくてもいいよ。とすでに合いの手のようにトウヤが言う。 「話があるんだ」 そんな短い言葉しかいえなかった。 我ながら情けないとは思いつつも,緊張しているらしい。 「なに?」 トウヤはこちらを向く。彼がベッドに座っているのでちょうど見上げられた状態だ。 とくとくとく。 心臓の音が耳に響く。 自分はどちらかといえば冷静なタイプで,いつも淡々としていられると思っていた。今まではそうだったはずだ。 しかし,今の俺はいったいなんなんだ!と,自分で罵倒してしまいたくなるくらいにおかしい。 とにかく,言うんだ。このときをずっと待っていたんだから。 「好きだ。トウヤ」 またもや,単発的な台詞。 しかし,これでも自分としては精一杯で。 多分顔は真っ赤だ。心臓の音がかなりうるさい。 トウヤの返答を聞くまではこれが続くんだろう,なんて考えたりもする。 「ありがとう。僕もソルのこと好きだよ」 にっこり,としてトウヤが言う。 これは・・・OKってことか。そうだよな,そうだよな・・・・・・そうなのか・・? すっと,今までの高揚がひく。 にこにこ,としているトウヤ。 トウヤの性格からして,愛だの恋だのということでこんなに冷静でいられるだろうか。否。 ・・・・・。 ということは・・・? 俺の告白は,もしかして告白ではなくて,(いや確かに告白ではあるんだけれど)もっと形の違うものとしてとらえられた可能性が高い・・? そう,例えば親友,家族にいうそれと。 そう考えるとかしゃかしゃと,頭の中である考えがまとまってきた。 あいつの息子であるとわかってしまったこと。召還の儀式のこと。そんなこんなを告げたあとに,俺が好きだ,なんていったもんだから。トウヤは多分それを”今までどおりに友達として,これからもよろしく”程度にとってしまったということか・・・・・ がくり,と肩を落とす。そんな姿にさすがにおかしいと思ったのか,トウヤは立ち上がってソル?と不思議そうに呼ぶ。 そして,今までどおりに僕もソルのこと大切に思ってるよ。と言ってきた。 ああ,この声も好きなんだよな。って違う! とりあえず,失敗だ。 タイミングを計って待っていたのに,間違えたってことか。 とりあえずは,ありがとう。と言ってトウヤの部屋を出た。 ドアを閉めてからため息をつく。 まだまだ前途多難だな・・・・ 魔王云々よりも,こちらのほうが俺にとっては問題のようだ。 |