合間の話




本を読んでいた。ぼんやりと。
いや,本当は今日は出かける予定だったんだけどな。
そんなことを思いつつ,ふぅ,とため息をつく。

あいつら。モナティと一緒にやってきた彼らが来てからここの生活もいろいろと変化している。
いい点としては,いろいろな知識をもらえてありがたいと思っている。この本も持ってきてもらったものだし。ベイガーと話せる機会なんてめったにないし。
ただ。
ただ・・・
わかってはいるのだけれど,悪い点もある。
俺にとって悪い点。

トウヤが相手をしてくれない。

あいつの世話好きはわかっているし,今回の件は自分にとってもいろいろと考えるところもあるので,悪いこととは思っていない。俺自身もマグナたちにはいろいろ協力したいと思っている。
けれど。
もう二人きりで話もできなくなってから何日たつだろう。
そして,いつまで続くんだろう。

もう一度ため息をつく。
そういえば,いつもこのくらいにネスがたずねてくるはずなのに,こないな。
そんなことを考えながらまた本の中に思考を戻した。

「ル・・ソル?」

「ソルーー」
目の前,というか本の上を手がひらひらと動いている。ん,誰か来たのか・・・。ひょいと顔を上げる。
「トウヤ!」
「そんなに集中してなに読んでいるんだい」
トウヤは俺の持っている本の中を覗き込んで難しい顔をする。まだ文字を読むのは完璧とはいえないトウヤには,ちょっとこの本は難しいかもしれない。そんなことを考えていたらやはり「ずいぶんと難しそうな本だね」と苦笑して言う。
「まぁ,持ってきてもらった本だからな。ギブソンの蔵書から。ところでどうしたんだ?」
確か今日は午後からマグナと一緒になんかの練習をするとかいっていた気がするんだが。
「あ,ちょっとね・・・」
トウヤは苦笑いを浮かべる。
トウヤのことだし,約束破ったわけじゃないだろうし・・・マグナが逃亡したかな・・・(こちらにきてからはそういったことはしなくなった。とネスは言っていたが)
「マグナくんがね,倒れちゃったんだよ」
「はぁ?」
確か,今朝人の倍くらいメシ食って,そんでもって外でいろいろ特訓してたんじゃないのか。昼メシだってしっかり食っていた気がしたんだが・・・
「それが・・・さっき熱でちゃってさ。ネスさんはなんか,知恵熱だっていうんだよね」
トウヤはそう言って笑う。が,知恵熱・・・?
「あいついくつだよ・・・」
けれど,まぁ最近目覚めたばかりとも言えるからいいのかな。
「それで,今寝かせてきたんだ」
看病は,アメルさんやリプレがいるから平気だろうしね。そう言ってトウヤは俺の手を取った。
「トウヤ・・・?」
きょとり,としてからトウヤは当然のように言う。
「約束してただろう。今日出かけるって」
といっても,さっきのキャンセルがなかったら駄目だったんだけどさ。そう苦笑しつつ。
「もしかして,もう約束取り消しになってた?」
あまりにも,自分が動かなかったせいだろう。トウヤは困ったようにたずねてきた。
そんなことはない。と否定してから立ち上がる。
「おまえとの約束をそうそうキャンセルするわけないだろう」
そう言ってからこっそりと頬にキスをする。
「ソル・・・」
なんとも困った顔。それを見てにっこり,と笑って,行こう。と言った。

久しぶりの二人だけの会話。散歩。・・・。
楽しかった。
また,数日なかなか話もできない状態になるだろう,ということもわかっているけれど。
また,こんな時間が持てると思えばそれはそれで待ち遠しい日々になるだろう。




トウヤがネスとマグナのことどう呼んでたか忘れたけど,こんなイメージで(こら)。
なんていうか・・・それなりに幸せです。


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