朝
やっと見つけた。 マグナはてくてく,とネスの方へと歩きよる。 川岸でつりをしているらしい,彼の背中はなんとなく,いつもよりも近づきにくい,と思った。 けれど,… 「ネス…」 ちょうど,ネスの斜め後ろに,マグナは腰を下ろす。そして,正座をしているかのような態勢で,声をかけてみる。 しかし,返事はない。 「ネス…?」 怒っているのだろうか。けれど,今日はまだ何もしていないはずなのに。 「なんだ」 短い返事。けれど,それだけで,こちらを向いてもくれなかった。釣りをしているのだから,そちらに集中しているのかもしれないけれど,寂しい。 「ネス…こっち向いてよ」 「馬鹿か,君は。僕は釣りをしているんだぞ」 「だって…」 ふう,とため息が一つ,ネスの口からこぼれる。 「ほら,こちらにくればいいだろう。横ならまだ顔を見ることができる」 「うん」 バケツをどかして,ネスの横に座り込む。やっと,ネスの顔を見ることができた。 それが嬉しくて,笑ってしまう。 「で,何のようだ」 何も言い出さない自分にしびれを切らしたのか,ネスから声がかかる。 「え…,朝の挨拶してないからさ」 「ああ,そうだな,君が寝坊をするからだ」 「そんなことないよ,朝ごはんには間に合ったよ」 「それは二度目だ。僕は一度目の食事を頂いたぞ,大体君はだな…」 うう,説教が始まってしまった。 本当は朝いなかったネスを探しに来ただけなのに。特に用があったわけではないけれど,朝会えなくてなんか心細かったから。 また,ネスがどこかに行ってしまうんじゃないか,と思って。 「ごめん,明日はがんばります」 「よし」 長い説教が終わって,ようやく解放される。 「まあ,それでも目上の人に挨拶しようという態度はほめられるな」 「目上の人・・・?」 「僕もそうだろう・・・兄弟子だぞ」 「あ!」 あはは,と笑うと,そうは思ってなかったな,と睨まれる。 「いや,ネスのことは尊敬しているってば! 本当だよ」 「まあいい,とにいく,おはようマグナ」 「おはよう,ネス」 にこり,と微笑んでくれる挨拶。それが嬉しくて俺もそうなっていると思う。 やっと,一日が始まった。 |