強く儚い…




「あ、わりぃ。俺そろそろ戻らないと・・・」
そう言って女に別れを告げたときの顔


俺が気付かないとでも思ってるのだろうか
普段の笑みを浮かべようとして失敗した
頼りない表情

自分よりも大きな人間に
儚い、なんて形容詞が思い浮かんだ


自分の方が悪いと
今回ばかりはすぐさま思った
サイドミラーに映る横顔を盗み見ながら…


それにしても
俺に何を期待してたんだ、あのバカは
あの状況で何か気の利いたことを言えと
そんなことを望んだのだろうか
俺にそれを求めたのだろうか



「散歩してくる」
そう言って足早に離れていった後姿を見ても、
かける言葉が見つからなかった
「どうしたんだ?」
とは言えない
理由はわかってるしな

でも
俺はお前が望むようにはなれない
お前が欲しがる言葉も与えられない
ましてや愛情など

自分にさえどんなものか分からないのに



「分かってやってるんですか?三蔵。」
悟空を悟浄のところに行かせた隙に八戒が先手を打ってきた。
「なんのことだ?」
とりあえず興味なさそうに振舞ってみる。
もちろん、無駄なことだろうが。
「そこまで教えてあげるほどお人好しじゃないですよ。」
向こうも答えをはぐらかした。
触れるか触れないか
ギリギリのラインでの鍔迫り合い
「きっとすごく強くて儚いんですよ、思う以上に。」
悟空が姿をあらわす間際、背中に投げかけられた言葉。
誰が、とは言わなかった―――



店に入っているわけではないのも手伝ってか、
いつもよりも少し静かな昼食が終わった

といっても、悟浄は心ここに在らずとでも言うのか
食べることすらも忘れてしまったかのようで

それに、それを目で追ってしまった自分も自分だ
ったく、らしくねぇ

おまけに、こういうときに限って
やけに機嫌のよさそうなヤツはいる

そんなちぐはぐな空気に耐えかねて、
おれは煙草を片手に腰を上げた

咥えた煙草に火をつけようとして、
ゆらゆら揺れるその炎から目が離せなくなった

あいつ、みてぇだな…

触ったら火傷しそうなのに、近づかずにはいられない
ないと寒くて凍えそうになって

ときに全てを焼き尽くすほど強いのに
今ここにあるのは、一吹きの風にすら揺れるほど儚い




くだらねぇ
湧いてるな…俺も




以心伝心と言うが…
思ってることの十分の一で良い
勝手に伝われば
苦労はしないだろう


「俺はお前みたいに、ひと言で人を救うなんてことできねーからさ。」
とりあえず、思ったことは全部言うんだと
そんなことを言ったバカの顔が思い浮かぶ

こんなときは臆面もなくそういえる単純さが羨ましくて
意地っ張りなこの性格が恨めしくすらある


俺もお前の言葉に救われてるんだってことを
きっとお前は知らないんだろうがな。

「こういうときだけ素直に受け取って、落ち込んでんじゃねーよ。バカ河童がっ」
結局火の付いていない煙草を岩肌に押し付けて立ち上がる




その一部始終を
後ろからやってきた人物が見ていたことに
三蔵はまだ気付いていない








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意味、わかりますかねぇ。こんな拙い文で…。
ただ、お互いを何かに投影させて考えてみるっていうのが書きたかったんですが、
これじゃただの女々しいやつら、だよ。
はぁ、ちゃんと中身のある話が書きたいです。
前はシリアス書けたのになぁ…中途半端です(>_<)

蒼 透夜

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