二人暮らしの必要条件 [2]




あのあと、八戒に呼ばれて渋々降りていった食堂では、久しぶりに「アタリ」だと思うよ
うな食事にもありつけた。悟空がいつも以上に騒いだために何どもハリセンを振り下ろす
ことになったのだが、それはそれだ。
デザートも食べたい!とごねる悟空を八戒に任せて、俺は部屋に戻った。
「はぁぁ、ちょっと喰いすぎたかも〜」
腹を気にしながら後ろを着いて来た悟浄が部屋の戸を閉める。
「今日は何処もいかねぇのか?」
そう訊ねてみると。
「なに?三ちゃんは俺にどこか行って欲しいわけ〜?」
そんなおちゃらけた返事が返ってきた。
「・・・・別に、どっちだろうと興味ねぇ。」
努めて自然に紡いだはずの言葉、上手くいっただろうか。
「まぁた、そーやって可愛くないこと言うわけ。
ま、いいや。俺先に風呂入っていい?」
そのまま、俺が何も言う前にバタンと音がした。


「食事の相性と身体の相性、か。」

『俺たち、身体の相性も良いし』

口に出して言ってしまったせいで、昼間の悟浄のセリフがリフレインする。
確かに、5日ぶりの宿だ、ということは少なくとも5日は触れられていないということで。
自分の年齢と性別を考えれば不自然なことではない。
けれど・・・。つい数ヶ月前まではこんな風には感じなかったはず。
自分は一応僧侶で、三蔵法師で。


それが、三蔵法師としてではなく、唯の三蔵という人間として、変わっていく気がする。
悟浄というパーツと重なるように形を変えられる。
いや、むしろ限りなく自然に変化しているような・・・・・。

「・・・ぞう?」

肩に触れられてビクリと震えた俺を、怪訝そうに見つめる紅い目。

「どうかした?」
風呂空いたよっていってんのに気付かないみたいだし。
ベッドサイドに腰掛けた俺と視線を合わせるように、しゃがみ込んだ悟浄。
生乾きの髪の毛から、シャンプーの匂いがする。


目の前の男は気付いているのだろうか
自分を見つめる視線とか
微かに鼻を擽るシャンプーの香りだとか
そんなものにまで反応するようになった俺に


「いや、何でもない。」
やっとそれだけ口にした。
「そ?ならいいけどさ。野宿続いて疲れてんなら、もう寝ちゃえば?」
「あぁ・・・そう、だな。」
そうは言ったものの、何だかつまらないと感じる。
何かが、足りない。



『身体の相性』


またその言葉が身体中を駆け巡る。

「ごじょ・・・」
思わず唇からこぼれた音に、はっとした。

ビールを手にした悟浄が、無言のまま近づいてくる。
そして
視界が紅く染まって
そのまま目を閉じる

目を閉じてから、唇に熱を感じるまで
その、瞬間ともいえる短い時が、
唇に触れられるのを待っている自分が、
何だかとても恥ずかしい。

悟浄の髪の毛に触れたくて首に手を回すと、クスクスと笑い声が漏れる。
「・・・何笑ってやがる。」
「ん?いや、三ちゃんが珍しく積極的だから。」
「積極的だ?何ふざけたこと・・・」
「ふーん。ならやめとこっか。」
そんなことを言うのが癪に障って、首に回した腕に力を込めた。
「まったく。素直なんだか素直じゃないんだか・・・」
「ウルセェよ」
「ま、せっかく三蔵様からのお誘いだし?」
ニヤッと笑うと
誰が誘ってなんか・・・という抗議の声もさらっとかわして
ベッドに倒れこんだ。
「身体の相性ってやつ、確かめないとな。」













息つく間もなく唇を塞がれる。
思わず逃げてしまいそうになる俺の舌を、悟浄のが絡めとって。
「ぅん・・・・・っは・・・」
お互いの息遣いと湿った音。
空気までがねっとりと絡み付いてくるみたいな感触。
「っぁ!・・・」
いつの間にか肌蹴させられたシャツの間から、悟浄の手が入り込む。
唇も糸を引きながら離れていって、そのまま鎖骨の辺りを強く吸われた。
「さんぞうって、やっぱり美味しい」
そんなことを言って、場違いな程、子供っぽく笑うから。
自分だけが乱れているような気がして、それが余計に身体を煽る。
「はぁ、ん・・・」
あちこちを、しつこいくらいに、唇と舌とで侵されて。
なんとかやり過ごそうとしてみても、結局は無駄な努力。
「さんぞ、無理すんなよ。」
そう言った悟浄の目が欲望に濡れていて、それに映った自分はそれ以上だ。
「やぁぁ・・・・・・・!」
ズボンを下ろされて、下着の上からソコをなぞられる。
「三蔵、なんかいっつもより感じてねぇ?」
そんな悟浄の言葉のあと、下着も下ろされて、ひんやりとしたのも一瞬、
悟浄の手が俺のものに触れた。
「ふっ・・・・ぅ、あ・・・・・」
ぐちゅぐちゅと濡れた音が聴覚をも犯していくみたいで。
「どうしたの?もうイッちゃいそうじゃん。」
からかうみたいな悟浄の声も、靄がかかってるみたいだ。
「・・・っウルセェよ。」
上がりきった呼吸で言っても、はいはい、と流されるだけ。
「それなら、もうちょっとガマンする?」
そういうが速いか、悟浄は俺のモノから手を離した。
すぐ傍で悟浄の体温を感じてて、髪の毛に首筋をなでられて。
「はぁ・・・・い、かげん・・・・ろ・・・」
もう、限界だった。

クスリと笑って、俺のチャクラに口付けて。

「あぁっっ!」
次の瞬間には、俺は悟浄の口腔に包まれていた。
唇で上下に扱いてみたり、根元から舐めあげたり。
その度にビクビクと波打ちながら、俺の腰は悟浄と密着しようと動いている。
「慌てんなって。焦らしたりしねぇから。」
じゅぷっと卑猥な音ばかりが耳につく。
「あ、は、・・・・・も、・・・くぅ」
「あぁ。」
「や、あぁぁっ・・」
袋の部分を揉みしだかれて、先端に軽く歯を立てられて
そのまま悟浄の口の中で果ててしまった。
「はぁ・・・・・」
荒い息を整えようとすると
「やっぱ、三蔵ってすっげー色っぽい・・・」
自分にしか見せないような笑みと、いつもより低めの声で囁かれて、
また熱が上がりそうな自分を感じた。
「さんぞ、キツかったらごめんな。」
そういうと、俺の放ったものを掬い取って、最奥に触れる。
「っつ・・・・」
思わず身体を引いてしまう。
いくら慣れてきたとはいえ久しぶりで、それに自ら潤う器官でもない。
「あ、わり・・・」
謝る声も少し擦れていて。それにすら反応する。
「んん、っや・・・・・」
生暖かい湿ったものを感じて、思わずとじそうになる脚を
悟浄の腕に止められる。
「久しぶりだから、ちゃんとしないとな。」
そういうと、俺の中に入り込んできたもの。悟浄の舌。
「やっ・・・・・やめ・・・」
くちゅくちゅと俺の中に唾液を送り込む音が聞こえる。
よく見えない分、余計に神経が集中して、自分のモノが再び熱を帯びるのを感じた。
「はぁ・・・・あぁ・・・・ん」
この後のことを期待してなのか、ビクリと身体が震える。
「そろそろ、平気かなぁ。」
「あ・・・・」
骨ばった、よく知った指の感触。
「さんぞ、力抜いて?」
悟浄の指の指紋まで分かりそうなほど、締め付けてしまう。
「ん、ふぅ・・・っ」
大きく息を吐くと、タイミングを見計らって指の本数が増える。
「あぁぁ・・・・・・!」
悟浄の知らないところなどないのだろう、この身体。
的確にポイントをついて、引っ掻くように擦るように刺激されて、
もう、ほとんど何も考えられない。
「ん、これだけ柔らかくなれば・・・いい?さんぞ」
「ぁ・・・ご、じょ・・・・」
訳もわからないまま、名前を呼ぶと同時に悟浄のものが押し入ってきた。
「あぁ・・・・ぁん・・・・!」
快楽と、満足感。
満たされてるという実感。
自分の方が、悟浄に飢えてるのだろう、と思う瞬間。
そのまま、揺さぶられて、こっちも腕を伸ばして。
部屋の温度と身体の熱と、境目がわからなくなって・・・
そのまま飛んでしまった。


















髪の毛を梳かれる感触。なんだかすごく落ち着く。
普段はあまり感じないけれど、もの凄く優しくて繊細な悟浄の手。
愛しい、なんて柄じゃないが。
こうやって触れてくるアイツの手は、独り占めしていたいと思う。


「俺さ今まで、レンアイもセックスもテクニックだと思ってた。」
俺が起きているのを知ってか知らずか、悟浄がぼそぼそと囁いている。
「でも、違ったわ。三蔵じゃなきゃ、こんなにキモチよくならないし・・・・・
三蔵じゃなきゃ、朝まで一緒にいようとおもわねぇ。」
やぁっぱ俺たちの身体って相性最高?
照れ隠しのように言った顔をみてやろうかと思ったが。

「おやすみ」

そう言って、俺の頭を撫でるその温もりが心地良いから。
このまま寝たフリをしてしまおう。




Fin    





なんとか書きました、後半です。
身体の相性ってことで、単なるエロになってしまったような・・・
一応、「テクニックだと思ってた・・・」っていう悟浄のセリフに
少しは意味を持たせたかったんですけど。
撃沈しました(><)

それと、甘えん坊三蔵。
これは私的にはありかなと思ってるんですけど・・・
みなさんはどうなんでしょう。
なんだか、子供っぽくしてしまいましたが。
この二人、レンアイに関しては本当に「ガキ」だと勝手に思ってます。

とりあえず、あまりインターバルがあかないうちに・・・
ということで。蒼 透夜でした。





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