心地よい倦怠感と火照りの残る身体。 三蔵とだから味わえる幸せ、なんて唄の歌詞みたいなことを思う。 細くて癖のない髪の毛を指で梳いていると、シーツの中の身体がもそもそと動いて、 手だけが何かを求めて彷徨ってる。 ベッドサイドにおいてあったマルボロを一本手渡してやると、やっと仰向けに体勢を変えて。 そのまま俺の髪を引っ張ると、俺の咥えてるやつからそのまま火を移して、ふぅと大きく息をつく。 そんな様さえ目が離せないと言ったら、こいつはどんな表情(かお)をするのだろう。 「なぁ、さんぞ。俺のこと好き?」 ばかだなぁと思う。今までさんざん、気持ちのない言葉を使っていたというのに。 その俺が、言葉を欲しがってるのだから。 「なんだ、いきなり。」 やっぱりね、こう来るのは予想済み。 「うーん、三蔵さ、いつも言ってくれないから…俺だって偶には確かめたいときもあるわけよ。」 分かる?と屈託のない笑顔で問う。 この笑顔が三蔵の鼓動を早めているのだとも知らずに。 「・・・たりまえだ、バ河童。」 あたりまえ、か・・・。 予想外。でも、嬉しい誤算ってやつだな。 これだから止められない。惹かれたのは必然だとさえ思う。 この金髪美人は、いつもは何も言わないくせに、たったひと言で 俺の中の何かを動かすようなことを言うのだ。 「うん、わりぃ・・・」 なんでかわからないけど、謝ってるし。 でも、そんなんどうでもいい。おれってお手軽なヤツだったんだな。 いつも見られない側面が覗いただけで簡単に煽られて、浮かれて。 でも、そんな自分も嫌じゃない。 そう思えるようになったのも、隣にいるこの存在のおかげ・・・。 「いつまで起きてるつもりだ?」 とっくに煙草の短くなった三蔵が布団に身を埋めながら言う。 ちょっと不機嫌そうなのは・・・眠いからで。 「ん?さんちゃんもうお休み?」 俺に応える声はなくて、かわりに俺の肩の辺りに擦り寄るように、 寝心地の良い場所を見つけて落ち着こうとする。 「おやすみ」 こんな夜はどうしたらいいんだろう。 せっかく、三蔵がいつも見せない顔をしているのに。 こんなに、幸せなのに。 眠ってしまうのすらもったいない気がした。 それとも、この気分のまま眠りについて。 三蔵の体温だけを感じたまま、二人で同じ時間を分けあおうか。 ともかく。 お互いの熱が離れてしまわないように、布団にもぐりこむと そのまま目を閉じた―――― 次の朝目がさめると、三蔵はもうシャワーから出てきたところで。 どうせなら先に目が覚めればよかったのに、なんて思った。 「おはよ。」 「やっと起きたか、寝ぼけ河童。」 返ってきたのはいつもの憎まれ口。 「もう、三蔵さまってば素直じゃないねぇ。昨日はあんなに素直だったのに、さあ?」 からかうように言って三蔵を見上げると、お世辞にも機嫌がいいとは言えない顔で。 「何言ってんだ?てめぇ。」 ついにいかれたか?とでもいいたげな口調なこともあって、 俺は自分の記憶に自信が持てなくなった。 もしかして、夢オチ? それとも・・・あれって幻覚だったとか? 「んなわけねぇだろ。ばか・・・」 悶々としていた俺に突然投げかけられた言葉。 やられた、と思うと同時にどこかほっとしているのも事実で。 やっぱりかなわねぇなと思う。 恋愛は惚れた方が負けって言うけど、本当だよ・・・ そんなことを考えている悟浄には見えなかったけれど。 新聞を読んでいるフリをした三蔵の顔はとても楽しそうだった 俺だって、言葉にすることくらいあるんだよ。 それに・・・ 相手の、いつもと違う表情がみてぇときもな。 らしくねぇがそれも良いなんて思わせて。 重症なのはきっと、俺の方だろうな。 やわらかい光が部屋を温める、穏やかな朝のこと―――
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