Blue,and also blue
author : Stationmaster
誰も通らないような蒼い草むらの中で、先生は僕のお尻を、長い時間をかけて丹念に舐めつづけた。
あの頃の俺のお尻には、まだ青い蒙古斑がはっきりと浮かんでいた。先生はそういった男の子のお尻が好きだと、俺のアヌスを飽きることなく味わいながら呟いた。
「志貴のお尻って、汗臭くって、うんちの臭いがして最高よ」
そう言われても僕は恥ずかしいだけだったけど、誰か通るかもしれない草野原で下を脱がされて、四つんばいになって後ろから先生に日が落ちるまでお尻を責められつづけているとしだいに、恥ずかしい気持ちとはまた別に、鈍く尖ったようなものが股間からも込みあがってきた。
「せんせい、僕、ぼく、なんか――へんだよ」
「志貴。どうしたの」
「ぼくの、お、おちんちんが…っ」
でも、僕にはその先を言うことができなかった。 だってそれがなんなのか、まったくなにもわからなかったから。今まで知らなかった状態を言葉でなんかあらわせるはずなんかないじゃないか。
ただ、むしょうに、おちんちんが触りたかった。
せめて姿勢を仰向けにさせてくれれば、地面についていた空いた両手で思いきり違和感の正体を探ることができたのに。
四つんばいの状態で、先生に後ろからお尻の肉をつかまれていたらから、僕には身動きすることもできなかった。
そうしているあいだにも、おちんちんはムクムクと先っぽをもたげ、勝手にビクンビクンしてしまっている。
わからない。
僕は、どうなってしまったのだろう。
ヘンなラクガキが見えるようになったのと、なにか関係があるのかもしれない。
僕は、急に怖くなってきた。
おちんちんがこんなふうになることは、先生の言った「とても悪いこと」だったとしたら――。
こんどこそ僕は、先生に嫌われてしまうだろう。
イヤだ。
そんなのは、イヤだ。
「先生、ごめんなさい、ごめんなさいっ」
「志貴、あなた――?」
混乱する頭で、僕は後ろにいる筈の先生に謝っていた。
「僕、おちんちんをこんなふうにしちゃってごめんなさいっ。もうこんなふうにヘンにしないから、だから、僕を嫌いにならないでっ。先生、せんせい…っ」
「…………」
す、とお尻から先生の重さが離れて消えた。
やっぱり嫌われちゃったんだ。
僕が悪い子だったから。
目の前が暗くなった。
僕がぎゅっと目を閉じたから。 目を開けると、涙がこぼれてきそうだったから。僕は力を入れて目を閉じた。
「志貴」
すぐ近くから先生の声がした。
おそるおそる目を開けると、いっぱい溜めていた涙がやっぱりこぼれた。そして。
僕のくちびると、先生のくちびるが触れ合った。
――口づけは何十秒にも感じたけれど、それはたぶん一瞬のことだったんだろう。
くちびるが離れる。先生は申しわけなさそうな顔をして涙にぬれた僕の頬をハンカチでていねいにふいてくれた。
「ごめんなさい志貴。あなたは何も悪くないの。あなたがあまりにも可愛かったから、私も時間を忘れて愉しんでしまったのね。本当なら、志貴のような歳の子だったら、まだ知らなくていいことなのだけど」
先生は僕のあごの下に手を入れて、顔を上げさせた。つられて、僕は草の地面にむきだしのお尻をぺたんとついた。
「落ち着いて聞いて。志貴、男の子のおちんちんはね――」
先生のきれいな指が、空に向かって頭を上げっぱなしの僕のおちんちんを優しく包み込んだ。
「気持ちがよくなると、自然にこんな風になるものなのよ」
「……そうなの?」
「ええ」
おちんちんをさすりながら先生が笑顔で答える。
「僕、ヘンじゃないの? 僕、悪い子じゃないの?」
「ええ。志貴はヘンじゃないし、なにも悪くない。悪くてヘンなのは私の方なの。志貴みたいな男の子に、こんなことをしてしまって……」
「ちがうよ。先生はなにも悪くないよ」
再び曇りそうになった先生の笑顔に、思わず僕は叫んでしまっていた。
「志貴…?」
「だって先生は僕に気持ちいいことを教えてくれたんだから。これってそんなに悪いことなの?」
「…ええ。本当はね、志貴のような年頃の男の子にこんなことをしてしまうのは、たいへんにいけないことなのよ」
本当につらそうな表情で答える先生。僕は、先生のそんな顔を見たくはなかった。
「だったら僕もいけない子になるよ」
そう呟いて、こんどは僕から先生にくちびるを重ねた。
先生はとても驚いていた。
重ねたまま先生のくちびるを舐めると、ちょっと苦い。これは僕のお尻の穴の味なんだろう。
だけどそんなことは、ちっとも気にならなかった。
「先生、お願いだからさっきの続きをして。先生がしたいように僕のお尻をもっといじめて。先生がよろこんでくれることなら、僕なんでもしたいんだ」
「志貴。だけどそれは」
先生が自分に嘘をつこうとしているのが、表情からすぐにわかった。
そんな言葉なんかききたくなかったから、僕はもう一度先生のくちびるをふさいだ。
すると先生は口づけをしたままくちびるを開いて、舌の先で僕のくちびるをノックした。
ちょっとびっくりしたけれど、催促されるまま僕は閉じていた口の力を少し緩めた。
待ちかねていたように先生の舌が口の中に入ってくる。歯の裏側を軽くなぞったあと、僕の舌と絡め始めた。
口の中で粘っこい音が何度もする。頭がぼーっとなる。先生の唾液を飲みきれずにあごを伝って落ちるけれど、そんなことはもう全然気にならなかった。
くちびるを離すと、僕と先生のあいだに銀色のしずくがねっとりと掛け橋を作っていく。
糸を引いた唾液は緊張感を失いながらだらりとぶらさがり、そのままゆっくりと僕のひざの上に落ちていった。
唾液ですっかりべとべとになった僕の顔を、先生がくちびると舌で、……熱心に舐めとる。
先生の熱い息と柔らかい胸の感触に、僕はまた苦しくなった。
「…先生。なんだか僕、さっきからおちんちんがせつないよ……」
「ごめんなさい志貴。途中だったものね」
さっきよりも大きさをましたおちんちんに、まわりの皮が限界まで引っ張られてとても痛かった。
それは腹痛のときの痛さとか、頭を殴られたときの痛さじゃなくって、注射をしたときの痛さでもなくって、これに近い表現をするならちょうど刃物で指を切ったときのような。
「志貴。あなたのおちんちんは皮をかぶっているけれど、成人した男性のおちんちんはそうじゃないのよ」
「そうなの?」
「そうよ」
「先生は…大人のひとのをみたことがあるの?」
「えっ」
何気ない質問のつもりだったけれど、先生はすごく慌てていた。顔が赤い。
先生のようなきれいな女のひとなら、よくわからないけれど、大人のひとのおちんちんを見たことだってあるだろう。
それはおかしくはないことだけど、当たり前のことかもしれないだろうけど……なんかいやだった。
恥ずかしいのか、とても小さな声で先生が呟く。
「私はお父さんとお祖父さまのしか見たことがないもの」
「そうなの?」
「この話はもうやめましょう。…ねえ志貴。私があなたのおちんちんを大人にしてあげると言ったら、どうする?」
どうするって言っているけれど、僕にはわかる。先生は、そうしたいんだ。
「うん。僕、先生にならしてもらいたいよ。ううん、相手が先生じゃないといやだよ!」
「もう一度よく考えなさい。志貴。いま私がなにかしなくとも、たいていの男の子は時がくれば自然と大人のおちんちんになるものなのよ。私は志貴がその時を待ってもいいと思っているわ。それがたぶん、普通だから。それでも、いいの?」
「うん。僕、先生に大人のおちんちんにしてもらいたい」
先生の濡れた瞳が揺れる。
恥ずかしがっているような、嬉しがっているような、そんな表情。
僕はいけない男の子になろうとしている。
先生のような女のひとを、可愛いと思っているなんて。
「とても痛いかもしれないわよ」
「僕、我慢できるよ。病院でね、おっきな注射を何本も打たれているのに一度だって泣いたことなんかないから大丈夫だよ」
「志貴。それにね」
なんだろう。よほど重要なことを喋るつもりなのか、先生はもじもじしている。
「私、こんなことするのさすがに初めてだから、巧くできる自信なんてないし……」
「先生、すごく可愛い…」
「う。あのね志貴。物事はよく考えてから」
「うーん、でも、よく考えてもやっぱり今の先生はすごく可愛いよ」
あうあういいながら先生は俯いてしまう。
ヘンなの。
出会って少ししか経っていないのに、僕のズボンとパンツを下げてお尻の穴を舐めるようなひとが、いつもは落ち着き払っている先生が「可愛い」と言われただけでこんな風になるだなんて。
いつもの先生ならきれいって感じだけれど、でもやっぱり今の先生はものすごく可愛かった。
だから僕は意識せずにいつのまにか先生の手を取っていた。
「し、志貴?」
「大丈夫だよ先生」
緊張で強ばった先生ににっこり微笑いかける。
あ、先生の頭から湯気が。
「なにしろ僕だって初めてなんだから」
「志貴って冗談が下手ね」
そう言われたけれど、でも嬉しかった。
先生が微笑んでくれたから。
「じゃあ仕方がないわね。私が、志貴のおちんちんを大人にしてあげるわ」
嬉々とした感じで呟きながら、おそるおそる、先生が僕のおちんちんを握りしめて固定する。
先生の手が――そう思っただけでおちんちんが大きく震えた。
「こら。動いたら駄目よ」
「そんなの無理だよ」
だって、気持ちがいいんだから。
さっきまでわからなかったこと。今ならわかる。
これって、とても気持ちがいいことなんだ。
「あのね、志貴。するまえに二つだけ約束して」
「うん」
「返事ははいでしょ」
「はい」
「まず一つめ。このことは誰にも秘密よ。私が君のお尻を可愛がったことも、今からすることも」
「はい」
「もしも志貴が大きくなって、このことを思い出してイヤな思いをしたり、私のことを嫌いになったら、そのときは誰に話してもかまわないから。私のことを憎んでもかまわない」
「大丈夫だよ。僕、先生のことを絶対に嫌いになったりしないから。僕、先生のことずっと好きでいるよ!」
「いいの。それからもう一つの約束――今だけは私のこと青子、って呼んで」
「え。でも――先生は自分の名前、嫌いなんじゃなかったの?」
「ええ嫌いよ。でもね志貴」
「あなたに呼んでもらえるのなら、今だけは好きになれそうな気がするのよ」