彼女は怒っていた。 それはもー怒っていた。 自分は志貴だけの物なのに、志貴は沢山の女の子とよろしくしている。 だから今夜は固い決意で、ご主人様の部屋にやって来た。 ばたん。 「!!」 ご主人様の部屋に入って、何か言おうとした口が静かに閉じた。 ベッドの上ですやすやと眠る寝顔に見とれてしまったからである。 ふるふる! 彼女は首を振って我に返ると、気を取り直して志貴の横に潜り込む。 そして目を閉じて志貴の夢の中に入る。 ――後に志貴は語る。 「レンも怒ると怖いなぁ……と」 お・し・お・き♪ 「やあレン」 「…………」 今の志貴の姿は自分の部屋のベッドの上で寝転がっている。 寝る前と変わっていると言えば……。 「ところで聞いてもいいかな?」 「(こくん)」 「どうして俺の手足は縛られてるの?」 「(むっ)」 「あのー、もしかして俺何かした?」 「(こくこく)」 「う〜ん……なんだろう……あっ」 「(ぴくっ)」 「この間アルクェイドと出かけた時、置いてきぼりにしたことか?」 「(じーっ)」 「ち、ちがうのか? それじゃあ……あ、おとといシエル先輩と カレー巡りに黙って行ったことか?」 「(むっ、じぃーっ)」 「え、えっとじゃあ琥珀さんと街に遊びに行った事かな?」 「(むぅっ、じぃーっ)」 「あ、じゃああれだ、翡翠と遊園地に行ったことだ」 「(むうっ、じぃーっ)」 「こ、これもちがうのか、そうすると……あ、昨日晶ちゃんと ケーキ食べに行ったことかな?」 「(むかっ、じぃーっ)」 「うっ、そうすると他に何があったかなぁ……」 今の志貴の言葉により、彼女の怒りは更に増した。 しかし、そんなことに全く気が付かない志貴は、賢明に思い出そうとしていた。 事ここに至って彼女は、ご主人様付きのメイドが良く口にする言葉を納得できた。 ――愚鈍。 そうなのである。 志貴は自分がした事がこれっぽっちも悪いと思っていない。 そのために彼女が日々どれだけ悩んだことか……。 今も目の前で悩んでいる志貴の姿を冷ややかな目で見つめる。 いくら愛しいご主人様でも、我慢出来ないこともある。 そしてこの鈍さ……もう彼女に言葉はいらなかった。 「レン?」 呼びかけを無視して、彼女はベッドの上に乗ると、志貴のズボンのチャックを下ろす。 「ちょ、ちょっとレン!?」 「…………」 「ホントごめん、とにかく解いてくれないかな、これ?」 「…………」 「なんかめちゃくちゃ怒ってるみたい……うっ」 「(じろっ)」 ――黙るの。 志貴の頭の中に彼女の言葉が響いた。 それと同時に自分の分身を握られては黙るしかなかった。 しかし悲しいかな男のサガなのか、ひんやりとした彼女の手に反応してしまう。 それを見て、彼女はうっすらと微笑む。 少女とは違う……正しく夢魔としての妖しい笑み。 その中にある瞳に魅入られて、志貴はもがくのを止める。 「うっ……あっ」 彼女は手慣れた様子で、志貴の物を擦り上げる。 リズミカルに緩急をつけて……。 でも、志貴が望む様にはしない。 興奮が高まってくると弱くして、落ち着いた頃にまたペースを上げる。 「レ、レン……うぁ……」 「(にこっ)」 ぎゅっ。 「あうっ」 ――いきたい? 志貴の頭の中にレンの言葉が伝わる。 しゅっしゅっ。 「うっ……」 ――いきたい? 「う……うん」 さっきから生殺しの志貴はあっさり降参して、彼女の問いに答える。 しゅっしゅっ。 「(にこっ)」 「レン……」 ――だめ。 「あっ」 いきり立っている物から撫でる様に指を離すと、彼女は服を脱ぎ始めた。 志貴が見つめる前で、一枚一枚と脱いで身の残っている物はリボンとストッキングだけである。 そして目を閉じた瞬間、彼女の体に変化が起きた。 「えっ!?」 少女の姿は変わらず、ただ頭に猫耳とお尻の上辺りに長いしっぽが生えていた。 「な、何をするつもりなんだ?」 「(にこっ)」 「レ、レン?」 再び志貴の側に近づくと、さっきの続きを始めた。 今度は手じゃなくて……。 「うあっ!?」 器用に志貴の物に巻き付いたしっぽは、人に有らざる快感を与えた。 ふさふさの毛がちくちくと刺激しながら、しゅるりしゅるりと締め付ける。 「レ、レン!?」 「…………」 「レン?」 「(にこっ)」 ただ妖しく微笑むレンは、志貴の顔を見つめながら手と同じようにしっぽを動かす。 まさかこんな手でくるとは思っていなかった志貴は、人として凄い背徳感が彼の心で 快感と葛藤していた。 しゅるっしゅるっしゅるっ。 (こ、これは……ぐっ……だ、だめだっ) 「うっ……あぐっ……んっ」 人では味わえない感触に、志貴の我慢もあっと言う間に限界が来た。 「うああっ!!」 ぴた。 「……あ、えっ!?」 「(にこっ)」 「レ……レン?」 ――だめ。 「そ、そんなっ……」 後一歩でいく時に止めてしまったレンに、志貴は非難の視線を送るが、 彼女はそれを楽しんでいるかの様に微笑む。 すると今度はムチの様にしならせたしっぽで、はち切れそうに堅くなっている 志貴の物を叩き始める。 ぺしっ。 「うっ」 ぺしっ。 「んあっ」 ぺしん。 「ぐうっ」 ぺしん。 「うあっ……レ、レン」 「…………」 「た、頼むよ……ぐっ」 「(にこっ)」 ――なにを? 意地悪く聞くレンに、志貴は顔を真っ赤にしてぼそっと言う。 「これは……まじに辛い……頼むよレン……」 「…………」 ――だから? すでに志貴の頭の中はこの快楽地獄から抜け出すことしか考えられなかった。 「い、いかしてくれ……」 しゅる……ぎゅっ。 「うあっ!?」 「(にこっ)」 ――おねがいする時は? 「い、いかしてください」 「(にっこり)」 ――よくできました。 そして扱きながらしっぽの先が、志貴の先端をつついた瞬間、弾けた。 「うわあっ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」 我慢させ続けられた結果なのか、勢いが弱まることがなく志貴の物は止まらない。 そして自分の体を汚していくのも構わず、彼女は志貴の放出を見続けた。 その顔には満足で恍惚に頬を染めた笑みが浮かんでいた。 「はぁはぁ……」 「…………」 「はぁ……レン」 「…………」 「レン?」 「(にこっ)」 「ちょ、ちょっと待ってレ……ううっ」 いったにも関わらず、まだ堅くなっているそれを掴むと、汚れているのも構わず 舌先で舐める。 飴を舐める様に丹念に舌を動かし、指先で先端を擦り刺激する。 「あうっ……レン、待って……」 「…………」 ――いや。 動きは止めないで下から見上げる視線に、志貴の背中を快感が駆け抜ける。 ――きもちいい? 部屋の中に淫靡な水音と、志貴の荒い息づかいが響く。 「あ、うん……」 「(にこっ)」 「気持ち、いいです……」 「(にっこり)」 従順になってきた志貴に満足してのか、彼女はおもむろに口にくわえる。 小さい口には入りきらないけど、それでも賢明に頬張って頭を動かす。 「うっ、あっ……」 手足の自由が無い志貴は、快感に震えて喘ぐことしか出来ない。 それがレンの思考を後押しする。 ……もっと志貴のいく時の顔が見たい。 だから、熱のこもった奉仕に志貴はまた絶頂に近づいた。 「レ、レン、いくよ……」 「(にこっ)」 ――まだだめ。 すっ。 「あ……」 舌先でペロッと先端を舐めながら口を離すと、志貴を見つめる。 「…………」 「レ、レン……」 「(にこっ)」 ――おねがい聞いてくれる? 「き、聞く……聞きますから……」 「(にっこり)」 再び口を開いて志貴の物をくわえると、激しく頭を動かして最後の瞬間を呼ぶ。 「レン、レン……うあっ!!」 「(にっこり)」 ――飲ませて。 彼女と目があった瞬間、志貴はそのまま口の中に吐き出した。 一回目より長く続く放出に、彼女は零さない様に美味しそうに喉を鳴らして 飲み込んでいく。 味わいながら食事を楽しむ彼女は、自分の思惑通りに事が進んで大変満足したらしい。 「はぁはぁはぁ………」 「…………」 「はぁはぁ……」 「…………」 「レン……」 「(にっこり)」 ――つぎいくの。 「ま、まってレン、たんまっ」 ――いや。 「ごめん、本当にごめん、その何はともあれ俺が悪いと思う」 「…………」 「と、とにかく、訳を聞かせてくれ」 「…………」 「頼む、レン?」 「…………」 ――さっきのお願い。 「え、さっきのお願い?」 「(こくっ)」 「う、うん、聞く聞くっ」 「(にっこり)」 ――志貴のいくとこ見せて。 「えっ!?」 「…………」 「そ、それは……」 「(じぃーっ)」 「うっ」 「(じぃーいっ)」 「あうっ」 ――聞くって言った。 「ぐはっ……」 「(にこっ)」 「うはっ〜!?」 ――もっと見せて。 志貴の返事を待たないで今度は素股で刺激する。 いまだ手足の自由のない志貴に選択の余地は無かった。 かくしてこの夜は、志貴の情けない声と精根尽き果てるまで、更にレンが 本当に満足するまで続いた。 そして朝――。 「おはようございます、志貴さま」 ドアの外から翡翠の声が聞こえる。 無論、いつも通り反応が無いので、ノックをした後、翡翠は部屋の中に入ってくる。 「おはようございます、志貴さま……っ!?」 お辞儀をして頭を上げた翡翠の前には、目の下に隈を作って目を開いている志貴がぶつぶつ呟いていた。 「志貴さま、志貴さま!?」 「……も、もうでない……」 「は?」 「や、やめて……ください」 「志貴さま?」 「あ……ひ、ひすい?」 「はい、どうしたのですか志貴さま?」 「あ、あはは〜、なんでもない」 「で、ですが……」 そこで布団がもそもそと盛り上がると、生まれたままの姿のレンが顔を出した。 「レ、レン!?」 「(にこっ)」 「…………」 「あ、翡翠、これはちが……」 「…………失礼しました」 「ひ、翡翠っ」 「ぎろっ」 「うっ」 翡翠の目は心配していた目から、汚い物を見る冷めた目になっていた。 しかも異様な迫力で、志貴も二の句が告げない。 その横でレンは布団の中に手を入れて志貴の物を掴む。 「うっ、ちょ、ちょっとレン」 「……不潔です、志貴さま」 「こ、これには訳が……」 「秋葉さまにはきちんと説明しておきますので、お早く下にお出でください」 「まって翡翠っ」 「ぎん!」 「あうっ」 「…………」 睨まれて動けなくなった志貴に深々と頭を下げて、部屋を出る時もう一度思いっきり それこそ視線で殺せるんじゃないかと思える目で見られて志貴はがっくり肩を落とした。 だが、そんな気持ちとは別に、志貴の物はいきり立っていた。 男の下半身には理性がないとはまさにこれなり。 るる〜と滝の様に涙を流す志貴の物を掴んで、レンはゆっくりさすりながら微笑む。 ――これはわたしの♪ 夢と現実が交わったのは何時なのか? そして夢が現実となった時、幸せになったのは誰なのか? 少なくても一人の少女なのは確かである。 「にゃあ♪」 「とほほ〜」 おわり。 2002/3/2 初稿

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