† 炎華恋夜 †


                             ≪著:如月いずみ様


 「頼久さん!!」

 何処からか、名前を呼ぶ声が聞こえる―――。
 ぼんやりと祭り拍子を聞いていた頼久は、はっと意識を戻した。


 夏祭り最終日。
 花火大会も開催される今日は、いつも以上に人が溢れる。
 白や薄紅、蒼に紺・・・華やかな浴衣の波。
 その奥でこちらに手を振り、歩いてくる少女が一人。

 「神子殿!!」

 すぐにその存在に気付き、笑みが零れる。
 けれど駆け寄った頼久に、少女は少し膨れた表情を見せた。

 「もう!神子殿じゃありません!!あかねって呼んでください!!」
 「も、申し訳ございません・・・」

 『京』から、この世界に訪れてようやく2ヶ月。
 龍神の神子を護る八葉として、鬼の一族と戦ったことは記憶に新しい。
 現在は恋人といえど、忠義心第一の頼久は未だに『神子殿』と呼ぶ癖が治らずにいた。

 真剣に悩む頼久を、そっとあかねは見つめる。


 頼久さんは真面目な人。
 いつだって小さな一言をちゃんと受け止めてくれる人。
 ・・・でも、ちょっと困らせちゃったかな??


 心の中で自問して。
 そして代わりに満面の笑みを見せる。

 「頼久さん、行きましょう!!花火始まっちゃいますよ。」

 ふと握りしめた手の温もりに、途端頼久も微笑んだ。



 夏祭りの会場は、案の定人でいっぱいだった。
 街中も確かに賑やかではあったが、これほどではないだろう。
 会場には所狭しと屋台が置かれ、祭り堤燈の色とりどりの明かりが華やかさを添える。

 そんな中、二人は花火のよく見える川辺へと人の流れに合わせて歩いていった。


 「凄い人の数ですね。」

 あまりの人出に頼久が驚いて呟く。
 『京』の祭りもこれほど大規模ではなかったと思いながら。

 もっと急いだ方がいいかな?」

 見上げるように尋ねるあかねは、この上なく愛らしかった。
 さらに微かに上気した肌、薄紫の淡い浴衣がほんのりとした色香を醸し出す。
 そんな姿に見惚れた頼久を、そうとも知らずにあかねは覗き込んだ。

 「・・・頼久さん??」
 「あ・・・いえ、少し急ぎましょうか。」

 突然本人から声を掛けられ、慌てるのも無理はない。
 火照る頬に照れつつ、手を握りなおし。
 そうして歩こうとした瞬間―――。

 突然横からの人の波。
 あまりの勢いに二人は流され、繋いだ手も離れてしまった。

 「やだ・・・待って・・・」

 これだけ人がいたらはぐれるかもしれない・・・
 焦って人混みの中に駆け出すあかねは、けれど慣れない下駄に足を痛めた。

 「・・・っっ。」

 足首を捻ってしまったようで、歩く度に引きつるような痛みを感じる。
 けれどそれ以上に、離れ離れになってしまったことへの不安が大きくて。

 「頼久さん・・・」

 たくさんの人の中でたった一人になった自分。
 呟いて辺りを見回しても姿は見えなくて・・・思わず涙が溢れそうになった、その時。

 「あかね!!」

 人混みをかきわけて、こちらに向かってくる背の高い男の人。
 喧騒の中でも確かに響くこの声は、紛れもなく頼久のものだった。

 「はぐれちゃうかと思った・・・」
 「あなたのことなら、例え何処に行こうと必ず見つけ出します。」

 呟くあかねに安心させるような笑みを投げかけ、頼久は足元を見つめた。
 そして引きずるように歩いていたあかねの右足が腫れていることを確認する。

 「足を痛められたのですね。―――失礼します。」
 「よ、頼久さん!?・・・あのあのっ、私大丈夫ですから!!」

 突然抱き上げられ慌てるあかねを、頼久の真剣な視線が射抜いた。

 「いけません、しっかりと捕まっていてください。・・・あかね。」

 最後の3文字に甘い微笑みを投げかけられたあかねは、途端黙り込む。
 今回は頼久のほうが1枚上手かもしれない。
 けれどふと見た横顔が微かに赤く染まっていることに気付いて。
 それが不思議と嬉しくて、あかねは微笑んだ。



 夏が終わってゆく。
 季節は巡り、年が明けてゆく。
 それでもいつまでも側にいて―――。

 肩越しに見た花火は、何処までも鮮やかだった。





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 如月いずみ様のサイト 「Angel Tear」 さん にて、残暑お見舞いフリー創作企画として
 こちらの頼久さんxあかねちゃんのお話が掲載されておりましたので、頼v神子好きの私は
 嬉々としていただいて参りました(^^) いずみさん、お許しありがとうございましたvvv

 浴衣姿のあかねちゃんにドキドキする頼久さんがとても可愛らしいですv(浴衣姿のあかね
 ちゃんを想像すると私も胸の動機をかくせませんわv/笑)ほんのり…という表現が色っぽい
 ですねv2人の初々しい姿が目に浮かんでまいりますv

 人波に流されて離れ離れになった時のあかねちゃんの心境に胸を打たれつつも、その後
 に続く、「あかね!!」のひと言に頼神子魂を刺激されました(>_<)v
 そして、「
あなたのことなら、例え何処に行こうと必ず見つけ出します。」という頼久さんの
 愛しさあふれるお言葉にすっかりやられてしまいました(^^)。
 抱き上げられた神子殿のあわてっぷりも可愛いですねvそんな神子殿を頼久さんが、頼久
 さんが!!(笑)一枚上手な頼久さんに完敗でございますv
 素敵なお話をありがとうございました!


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