チャリ…
月が煌々と照らす中庭に面した窓から鎖をひきずる微かな音が聞こえる。 窓に嵌った鉄格子の影に白い肌を露にした少女が姿を見せた。
「あ…」
少女は小さな声をあげると窓際の一点を見つめた。雑草がまばらに生える湿った 地面に一輪の花が咲いているのを見つけたのだ。
「ん、もうちょっと…」
少女は花に手をのばした。無惨に嵌められた金属の首輪につながる鎖と 窓の鉄格子に阻まれながら、身をよじって指先を花に伸ばす。
過酷な運命の中のひとかけらの幸せを掴もうとするかのように…。