初穂摘み

(1)

 

 

蛇口からほとばしる湯が浴槽に躍り、立ちのぼる湯気に辺りを霞ませる。
 
浴室から続く脱衣所の一脚ぽつりと置かれた椅子には、ゆったりとではあるが、幾分前屈みぎみに腰掛ける男がいた。
 
ほとんど白に近い、淡い髪色。撫で付けた髪からこぼれた毛先の落とす影が、水の冷たさを感じさせる透明な肌に映える。光の下では矢車草のきつい碧であろうが、深い眼窪と帽子の影からはほとんど黒かと見紛う、ほのぐらい、虹彩。のびやかな肢体を隆とした筋肉によって貌創られた男は、北方系Aryan種として非のうちどころとてない、完璧な標本だった。
 
ブロッケンマン
 
膝上には彼の一粒種である息子、Jrが、一糸纏わぬ素肌のまま後ろ抱きに抱え込まれていた。
 
同じ血を内包し
 
同じ肉を持つ
 
なんと良く似た・・・
 
合せ鏡の空間に迷いこんだと錯覚をおぼえそうなほど、奇妙な、それでいて幻想的な光景がそこにあった。
事実、父子はよくもと呆れるほど似通ってはいたのだが、 父の色素を感じさせない髪色はその息子において、深味と陰影とを帯びた銀雪として伝わっていた。
滑らかな肌えは、生命の息づきさえ拒む清水に一滴の乳を落としたとも例えたい。
そして父の持つコランダムの碧玉に宿る容赦無い硬質さは、見る者をして癒しをもたらす紫の水晶となって息子の瞳を飾っているのだった。
 
床に脱ぎ散らしたなりの制服が、底光りするブロッケンマンの靴先で掻き回され、椅子の脚に、無秩序にまとわりついていた。黒皮の手袋をはめた大きな方手に胸を支えられたJrは、左右に開脚した脚を椅子の両脇に垂らしている。
 
恥ずかしい姿。
 
そのあられの無さを恥じらおうにも、しかし、脚を閉じる術は無い。
ブロッケンマンの踏み開いた両膝によって、それは阻まれていたから。
 
もう一方の手が開かれた両脚の間を辿り、弄り続けている。
くねる手首の動作が、その場所でどのような作業がなされているかを如実に物語っていた。
優美な椅子の曲線を描く猫脚が腰掛けた者の動きに合わせ、小刻みに軋んでは音をたてる。
軋みと協和を奏でるJrの喘ぎ。
押し寄せるうねりに懸命に耐えようとするかの。
吐息混じりに漏れるJrの嬌声が、湯気に白んだ浴室内へ暫し反響した。
 

続く


分割で載せます。文章は絵以上に手が遅いので、書き終わるまで待ってるといつまでたってもup出来ないのでした。

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