timeout.
 
 
 
キン肉マンソルジャーこと、キン肉アタルは、古びた日記を見ていた。
 
 
 
    ・名前を呼んではならない。
    ・くちづけを与えてはならない。
    ・情をかけてはならない。
    ・目を塞ぎ、口を塞ぎ、恐怖と憎しみ以外を、与えてはいけない。
    ・快楽さえ、与えてはならない。
    ・問いに答えてはいけない。何も告げてはならない。
    ・このことは、誰にも知られてはならない。
 
 
 
 走り書きのような、それでいて整った綺麗な色あせたインクが、そう綴っていた。
これが何に対する禁忌なのか、一見では判断できなかった。
 
 
 
 
 
 来るべき戦いにそなえてブロッケンJr.をチームの一員としてスカウトしたアタルだったが、
本日その返答をブロッケンJr.その人からもらうことになっていた。
ブロッケン家当主しか入れない部屋に通され、手渡されたのは先ほどの日記。
彼の父親のものらしかった。
 
 
 彼を仲間に誘うために、それなりに彼の一族について調べた。
人間の身体を超人のそれに変える不思議な力。そして、それと引き換えの寿命の短さが気になった。
ブロッケン家当主の平均寿命、42.5歳。
多くが、練習中の事故、ないし試合中や試合での怪我がもとで、その命を落としていた。
苛烈な戦いぶりと言ってしまえばそれだけのことだが、記録はそれを証明するには不足していた。
不審死も少なくなかったのだ。
そのあまりの寿命の短さに、始めは超人の身体を得た副作用だと考えたが、それは違っているようだ。
彼らは天寿を全うしていない。それがアタルの導いた答えだった。
 
  
 
 「突然アンタにこんなことを話すのはどうかと思ったけど……
あんたになら、話してもいいと思った。戦う前に、誰かに話しておきたかったんだ」
 
 
 
そう言って、ブロッケンJr.はぽつりぽつりと話始めた。
 
 
 
 
 
         ★                       ★
 
 
 
 
 
 
 あれは授与式の前日だった。
寝室に父が尋ねてきた。
「成長したな――」
感慨深げな、どこか誇らしげな言葉とともに、父は自分の名を呼んだ。
 
 
 
もう、明日からは呼ばれなくなる名前。
 
明日からは、ブロッケン家次期当主、ブロッケンJr.となるのだから。
 
「おまえの身体を、見せてくれないか」
 
 
 
そんな父の声は、もしかすると少し震えていたのかもしれないね。
 
 
 
 寝室とは言え、父の前で一糸纏わぬ裸身を晒すことにためらいがなかったと言えば嘘になる。
しかし自分は父の言葉に従った。
 
 強くなることだけが、認めてもらう唯一の手段だったのだ。
血を受け継いでいるということだけでは、親から必ずしも愛される理由にならないことを身を持って知っていた。
そんなことは痛いほどに分かっていた。
もしかすると、愛されているかどうか常に不安だったのかもしれないね。
 
「――――――」
 
 優しいバリトンがまた自分の名を呼んだ。
皮手袋をつけたままの掌が、やさしく胸板を撫で下ろした。
 
 
 
 反応していく身体。
気持ち悪いなどと思うものか。
 
 
 
 俺はまだ女も知らない17歳と3ヶ月のガキだったが、こういうことは愛しているからするんだってことは知っていた。
父に、愛して欲しかったのかも知れない。
……それがどんな形であれ。
 
 
 
 
人の体温を伝えない皮手袋が、体液に濡れそぼっていく。
 
 ”父さん……駄目……汚れ、っ……”
 
 すっかり上がってしまった息でそう呟いた自分に、父はあくまで落ち着いた声を発した。
「おまえが心配することではない」
 
”でも……あ、あ、……ああっ!”
 
 女のような矯正を上げ、あられもなく身体をくねらせてはシーツを乱した。
何をされているかも、もはやおぼろげにしか知覚できない。
父は自分よりも、色素の薄い瞳をしていた。ブルーグレーの虹彩に魅入られて息を呑んだ。
 
  父の…逞しい上半身そのままの引き締まった下半身が曝け出される。
目を奪われ、視線が外せなくなる。
ゆっくりと、濡れた皮手袋が外されると、その身体が覆いかぶさってくる。
一番初めと同じように、胸板を撫で下ろされる。
それは暖かくて、しっとりと汗の浮いた掌で――よりいっそうの快感を自分にもたらしたのだった。
 
 
 
 父の指が差し出された。
「舐めなさい」
その人差し指と中指をまとめて口内に含んだ。
自分の体液の匂いだったり、父の汗の香りだったり、皮革特有の匂いだったりが入り混じって鼻腔をくすぐった。
ぼんやりとした頭のまま、その指に唾液を絡め、一心に舐め舐った。
父の左手が、自分の頭髪の生え際にあてられ、軽く力が込められた。
もう良い、と呟くと、父はその濡れた右手を自分の後孔にそっとあてがった。
予想外の行動に、身体が強張る。
 
「……力を、抜いていなさい」
 
 父は苦笑交じりの声で自分に笑いかけると、自分がいぶかしげな顔をしながらも身体の力を緩めるのを待って、
ゆっくりと、まずは人差し指を体内に差し入れていった。
 
 
 
 ”……く……ッ”
痛みはなかったが、異物感にさいなまれてに目の前の父の身体にしがみついた。
体内で蠢く指は、角度を変えながら、強弱を付けて粘膜をくすぐった。
 
”…ぁ、あああっ!?”
 
 ある一点を擦られて、身の内を衝撃が駆け抜けた。
不随意収縮を起こした筋肉が、びくん、と身体を跳ねさせる。
「…大丈夫だ」
父は宥めるように口付けると、いっそう指の動きを強く激しいものにしていった。
「あ、ああッ……ん……と、父さんッ!!」
猛々しくそびえ立つ雄の象徴をそっと掌で包まれ刺激を与えられただけで、あっさりと精を吐き出してしまった。
 
「……ぁ……は……ぁ」
 
 知れず涙が滲むのを、乱暴に指で拭いながら、乱れた呼吸を押さえつけようとしていた。
自分で慰めることを知らなかった訳でもないが、その絶頂の瞬間に躰を駆け抜けたそれは、体感したこともない甘美で激しい奔流であったのだ。
体温よりもわずかに温度の低い、透明で粘性のある液体が、先程まで父の指を深々と受け入れていたその場所と、 
次いで父の男根に塗られた。
父のそれははちきれんばかりに、握ると熱を伝えてきた。父もやはり、雄だということを生々しく伝えてくるようだった。
再び自分の体に覆いかぶさるような格好になった父が、優しく、また自分の名を呼んだ。
熱いものがあてがわれる。
 
 「力を 抜いて」
父はそう言った。
そして、自分を見つめる瞳が、優しく、しかしどこか辛そうに細められる。
「辛いだろうが……受け入れてくれるな?」
 
 
 
 自分はまるで、待ち望んだ王子様に全てを委ねる乙女のような神妙さで、頷いた。
恐怖に体を竦ませながら、しかし、それを受け止めたくて、必死で―――
 
 
 
 最初は痛くて……でも、途中でふっと、それが楽になって……
父の掌の中で何度も果てて、父も、俺の中で……
 
 
 
 
 
         ★                       ★
 
 
 
 
 
 
 
 
「親父は、優しかったよ」
 
 
 
 
 
 アタルは、少し目を細めてでそう呟くブロッケンJr.の横顔を何も言わず見つめることしかできなかった。
アタルははっと息を呑んだ。
子を犯し、親を殺す。
そんなことを延々と続けることで、我ら一族の力と繁栄はあったのではないか…。
 
 何者にも頼れないと思うことは、確かに力の源泉となる。
激しい憎しみは、さながらドーピングのように、人の力を強さを増幅させることは間違いない。
この一族は、その特異な性質から、周りから爪弾きにされることも少なくなかったと聞く。
周りと馴れ合う必要がなかったからこその戦略だったのかもしれない。
子を残し、その子が一人前に育てば、もう古い者に生きている必要などない。
それが、当主のあまりの寿命の短さの理由ではないか?
あまりの不審死の多さは、それはもしかすると、呵責に耐えられなくなった親が自分から命を絶ったこともあったかもしれない。
しかし、……成長して強くなった子が、直接手を掛けたことも、少なくなかったかもしれない。
 
 
 
 
 
 確か、ブロッケンJr.が超人になったのは、超人オリンピックが開催される年だったはずだ。
ブロッケンマンは、その一ヶ月後日本に旅立ち、そこで帰らぬ人となったことになる。
 
 
 
 
 
「あの日の無謀とも思える戦いは、生きて俺のところへ戻りたくなかっただけかも知れない」
 
 
 
 
 「親父が死んで――。
認めてもらう対象が居なくなって。
親父を殺した相手を今度は憎んで、殺してやろうと思って……
でも、俺は負けた。
ラーメンマンに諭されたことも、あるけど。
この部屋で親父の日記を見つけたことが、一番大きいかもしれないね。」
 
 
 
 
 ブロッケンJr.はそこまで言うと、ふうっと息を付いた。
それは安堵の溜息だっただろうか。
 
 
 
 
 黙り込んでしまったアタルに、ブロッケンJr.が慌てた様子で言った。
「ああ、すまねえ。すっかりしみったれた話に付きあわせちまって…」
そして、にっこりと笑った。
 
 
「あんたの誘いに、返事をしてなかったな。結論は、イエスだ。」
 
 
 俺は、もしかすると親父が死んでから、自分のことしか見えてなかったのかもしれないな。
いや、もしかすると今まで人を愛したことすらないのかもしれない。
 
 
 
 
「俺は自分の意思で、あんたのために戦うよ」
 
 
 
 
 
 
 
 もしかすると、この目の前の男に良く似た父親は、時代の変化を感じ取っていたのかもしれないと。
そう思わずにはいられなかった。
もしかするとそれは、ただのブロッケンマンという色狂いの男の気まぐれだったのかもしれないし、
緻密な計算と予測に基づくものだったのかもしれないし、自分たちのたどってきた道を息子には歩ませたくないという
祈りにも似た行為だったのかもしれない。
現実はもはや闇の中だ。
詮索する意味すら、もはや失っている気がした。
ただ、動機はどうであれ、事の発端がどうであれ、今アタルを見つめているまっすぐな瞳だけが、答えなのだと。
 
そう思った。
 
 
 
//END
 
 
 
 


だいちさんのサイトでキリバンを取った記念に書いていただいた小説です。
ファーター×Jr.ですよ〜。
アキルノの趣味に合いまくりのすばらしい作品に大感激です。

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