笑顔
突然瞬いたフラッシュに、二人は驚いた顔をした。
「……何だよ、灰原」
「やっぱり室内だと、フラッシュ焚かなきゃいけないじゃない」
「そうじゃなくて」
「記念よ、記念」
「へえ……お前って、そういうの煩がる方かと思ってたけど」
「何や、それやったらもっと仲良うしてる方がええやろ」
「……あーもー、くっついてくんなって!」
手の先から鳴る、電子音。
「あら、電池切れね」
言うと、片方は露骨に残念な表情を浮かべて、もう片方は安堵の表情で息を吐いた。
「――何で今頃、こんな物が出てくるのかしら」
手にした途端に蘇った、その記憶の鮮やかさに戸惑う。
モノは無くても、忘れられない記憶は決して忘れないだろうからと
居場所を変えた時に殆ど処分したと思っていたけれど。
……でもこれは、きっと。
忘れなくても形として残しておきたかったのに違いない。
捨てていない、ということはそういう事だ。
「”記念”よね――確かに」
呟き改めて見返して、感情さえも記憶に吊られたぐり寄せられた。
そして今でもその感情は変わっていない自分に苦笑する。
(……やっぱり、羨ましかったのかな)
こんな風に笑える相手が居る事が。
それ程までに写真の二人は、屈託のない表情をしていた。
end.