at choice
「あ」
「どした」
「シャンプー買うの忘れてた」
立ち止まり振り返る新一を平次は制止する。
買い物をしたスーパーからは大分離れてしまった。彼の家の方がもう近い。
「ええやん、戻るのもめんどいし。俺の使たら」
「それも切れる」
「俺のもか?……俺専用で俺使わんで誰減らすねん」
洗髪料はそれぞれの嗜好に合わせて専用のボトルを置いてある。
居住者である彼よりも来訪者である自分のボトルの減りが遅いのは当然の筈だった。
道程を引き返す彼に後ろから声を掛けると、簡潔な答えが返ってきた。
「俺」
「自分やろ? シャンプー位別々て言うたの」
「元はお前だろ。好みがあるから、とか言い始めて」
言われてみればそうだった気もする。けれどきっかけはともかく、結論には互いに合意したのだ。
”置かせて頂いてる”のは自分の方としても。
「……まあそれはええとして。んで何で、俺のも切れそうやねん」
「俺のシャンプー切れてさ、買い足すのも面倒だったからつい」
「したら今も」
彼の頭に手を伸ばし鼻を寄せると微かに自分と同じ匂いが漂ってきた。
ホンマや、と言うと顔をしかめ手を振り払われた。
「んだよこんなトコで、離せよ……お前のシャンプー、髪ガサつくんだよな」
「したら使うなや」
「だってそれしか無かったし」
「おー言うたな。次は俺が工藤の使って髪ベタつくー、とか言うてやるからな」
「使わなきゃいいだろ」
「自分使ておいてそれかい」
小さい言い合いをしている間にスーパーの入口まで戻ってきた。
ガラス扉の前で歩みを止めた新一につられ立ち止まる。
「じゃ、俺ここで待ってるから」
「……何で」
「コレ持って入る訳にはいかねえだろ」
あっさり言い、先刻買った中味が詰まっているビニール袋を軽く持ち上げて見せる。
平次は溜息を吐き、しゃあないなあと自分が持っていた荷物を渡した。
「そないな常識は持ち合わせとるんやもんなあ」
「どんな常識の持ち合わせが無いってんだよ」
「ソレを訊くあたりやな。……ほな、何買うてきても恨みっこナシやで」
「ああいいよ。どうぞ、」
一拍置いて、彼は口角を上げた。
「――好みのままに」
買い物カゴを持ってシャンプーの棚へ向かい、色とりどりのプラスチックのボトルを見遣る。
彼の好みと自分の好み。同じ様に並んでいるそれに手を伸ばす。
カゴに落としたのは、一個。
end.
13810御礼、テーマは「シャンプー」でした。
らきあさま、リクエストありがとうございます〜!……たいっへん長らくお待たせいたしました……
その上きっとおそらく望んでいた話の展開からはことごとく外れていると思いますが。ええ。それはもう確信しております。
いつもながら真っ向勝負じゃなくてすみません〜〜(苦笑)
にしても彼らのご近所にはドラッグストア系無いのですねえ(笑)マツキヨとかダルマとか。<ローカル過ぎです
タイトルの意味は「好みのままに, 好き勝手に」。本文で台詞にしてしまいました。