伝う夢
目覚めれば、雨。
テーブルに焼きたてのハムエッグが置かれてようやく自分の長考に気付いた。
「俺、こんなに喰えないけど」
「残してええよ。俺喰うし。……で、工藤はどんな夢見たんや?」
「――俺?」
「すっきり目覚めたんやろ? したら」
「別に。――何見たかなんて覚えてない」
「せやな。夢なんてたいがい覚める前に忘れるモンやしな」
「――」
危うく言おうと開いた口に堅いトーストを押し込んだ。
彼の見たというその夢は自分の見た夢だ。
眠っている内に接触した皮膚から伝染でもしたのだろうか。
自分は反動で咄嗟に目覚めたというのに。
(そっか。――アイツの夢には俺が出てきたのか)
自分の夢には。
誰も。
撃たれ事切れるまで誰も現れる事はなかった。
夢は伝っても願いは伝わらなかった。
雨のせいか、夢で撃たれた傷が痛い。
流し込んだ紅茶のひやりとした感触は夢に似ていた。
end.
6810御礼おまけ文。
平次サイド話と言っておきながらすみません……
一応こちらもコミで捧げ文なのですが切り捨ても可です(汗)