明日の天気


 

 

「でな、俺そん時―――何や工藤、もう眠いんか」
 歯切れの良い言葉が返ってこなくなったコナンに気付く。
 隣の布団で頬杖をついたままだけれど、明らかに頭が垂れている。
 呼ぶと、顔を上げて目を擦った。
「ん……仕方ないだろ、この身体じゃあもうエネルギー切れ。明日早起きしなきゃなんないしな」
「遠足なあ……やっぱ、行くんか」
 一応駄目元で聞くと、長い欠伸で返ってきた。
「……ったり前……そりゃ、雨降ったら行くけどさ―――晴れたら欠席なんて、出来る訳ないだろ……って」
「雨……なあ」
「……ま、お前がおっちゃんについてけば何とかなると思うしな……んじゃ、先寝るから」
「ほな、お休み」
 ぺたりと身体を倒すと、そのままコナンは意識を手放したようだった。
 少し間を置いて、規則正しい寝息が聞こえてきた。
「工藤……ホンマ、寝たか?」
「………」
 こそりと呼んでも返事がない。
 本格的に寝たのを確かめると、布団を抜け出し部屋を出た。
「雨、なあ……」
 廊下でもう一度呟く。雨が降る、という事は晴れなければいいのか。
 無人の部屋を横切り、静かに窓を開ける。
 まだ晴れている夜空を背に、ぶら下がっていたてるてる坊主を掴むと静かに引き入れた。
(これで少しは、雨の確率上がるやろか)
 早朝に、何喰わぬ顔で戻せばいいだけのこと。
 側の棚の引き出しを開け、そっと寝かせる。
「スマンな。明日の朝までお役ご免や」
 再び物音をさせないように部屋を出た。
 他の部屋の明かりは見えず、声も聞こえず、自分以外は誰もが寝ているようだった。
(これなら、きっと隠し通せるやろ……)
 そのまま部屋に戻ると、寝返りをうったコナンが布団に身を乗り出していた。
 少し狭くなった隙間に身体を入れ、大人しく寝ている顔と向かい合う。
 布団にくるりと丸まっている様は先刻のてるてる坊主と一緒だ。
「ホンマ、てるてる坊主みたいにちっこいな……」
 柔らかな頬をそっと押す。
 名前を呼んだ。
「くどう」
「………ん」
 薄く目が開いた。
「―――」
 本当に起きてしまって固まっていると、ころりと頭が寄り添ってきた。
 再び目が閉じられる。
「おい……誰ぞと間違うておらんか……」
 そう小声で言いながらも、何だか寝付かれなくなってしまった。
 寝入ったコナンを起こさないように、ゆっくり身体をずらして天井を見上げる。
「……雨、降れ―――」
 てるてる坊主と寄り添いながら呪文のように呟いた。

 

 

 


end.

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