GREEN
強い陽射しを急に目に受けて、新一は何度も瞬いた。
眩んだ瞳が順応する前に、遮光カーテンの側の彼へ抗議の声を上げた。
「……んだよ、ヒトが本読んでる時に」
「俺はな、何度も声掛けてたで」
「そう?」
「そうや」
「だからって、カーテンいきなり開ける事ないだろ」
「薄暗い処で読んでるからや」
「本に悪い」
「目には悪く無いんか」
「……」
余りに真っ当な内容で返されて、言葉に詰まり目を外に遣る。 添うように視線を流しながら平次が口を開く。
「少し休めて、外の緑でも見いや。緑色は目にええ、言うし」
「じゃあ、緑のカーテン買ってくる」
反発も込めて言い放つと、想像した通りの表情になった。
「……何でそないな話になるんかなあ……」
「だって、緑色が目に良いんなら別に、それこそ風景画だって構わないだろ?自然の緑じゃなくたって」
それこそ、緑色であれば――何でも。
「んな事言ってると違――」
本を閉じ、真っ直ぐに見据えると相手は上半身だけ後ずさった。
「――何や」
「別に」
「……で?カーテン買いに行くんか?」
「止めた」
「はあ?」
理解できない、という風の彼の目を見ながら言う。
「代わりのモノ、見つけたし」
しばらくは、この瞳を見続けるのも悪くはない。
end.