ねぇ、そっと囁いて。


子守唄。



外は、雨が降っていた。
しとしとと降るそれは、屋根から窓を伝って、余韻を残す。
夜闇から降ってくるのは、それでもやっぱり透明で。


隣で眠るヤム・クーを見つめ、は微笑んだ。
銀が少し混じった柔らかい金の髪は、枕に流れ落ちている。
閉じた瞼に、すっとした鼻、自分より白い肌と、少し厚めの唇。
それらを指先で、そっと掠めた。

「・・ん」

吐息を一つ零して、目の前の瞼がゆっくりと開く。
夜に見るそれは、青というより紺。

「寝れないんですか?」
寝起きの、掠れた低い声。
「・・・うん、なんか雨うるさくってさ」
別に雨が嫌いなわけじゃない。
ただ、耳元を打つような音は、好きでもなかった。

すると、布団の中から長い腕が伸ばされる。
大きい掌が背中に回されて、ぐっと引き寄せられると、
そのままはヤム・クーの胸に収まってしまった。
きゅっ、と縋り付く様にその体を抱き返す。


とくんとくん。


その薄い胸に耳を当てれば、聞こえるのは規則正しい鼓動。
何故か安心する。

ふと、は小さい頃を思い出した。
それをそのまま唇に乗せて、音にする。
『アナタはそこに絶対いなく、ワタシもそこにはいないでしょう』

内緒話をするような声で歌い始めたを、ヤム・クーは視線を下げて覗き込んだ。
「なんですか?それ」
「小さい頃さー、親父があたしが眠れない時歌ってくれたやつ。歌詞の意味とかわかんないんだけど、旋律が好きなんだよね」
「・・そうですね。もっと歌ってくださいよ」
髪を撫でつつヤム・クーが言う。
その心地よさに目を閉じて、また記憶を辿った。



『アナタはそこに絶対いなく、ワタシもそこにはいないでしょう。
でも手を伸ばせばアナタはそこにいて、囁けばワタシもそこにいるのです。
ワタシの涙はいつだって下には落ちないの。だからアナタはワタシに気づかない。
外は雨が降っていたの。だからアナタはワタシの涙に気づかない』





『お父さん、なんか子守唄歌って』
『あー?それで寝れんのかよ』
『うん!なんか安心して眠れそうじゃん』
『・・・しょうがねぇな』






あの時の、安堵と幸せは。







ふいに顔を上げる。
すると、ヤム・クーはにっこりと笑ってくれた。



お父さん。
もうアナタの子守唄はいりません。

もう私にはこの安心があるんです。
このぬくもりと、鼓動があれば、もう平気なんです。








「おやすみ」








眠れない夜は、もう二度と訪れない。










end。



今流れているMIDIを聞きながらこの話を書いたんですが、
・・・とってもいい曲ですよね(感涙)
なんともいえない心地よさがあります・・。
こちらにお借りしました、ぜひ一度どうぞ。

さんにとって、子守唄とはヤムの存在で。
一緒にいるだけで安心するんですよ、きっと。
泣いたらヤムは気づいてくれるし、抱きしめてくれる。
いつだって気づいてくれるんです。



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