ヤキモチ。
次の日になっても、ヤム・クーは苛立っていた。
太陽が真上らへんにくるころ、いつもはが遊びにくる時間。
でも、今日は船着場に一人、釣り糸をたらしている。
海は、まるで自分の気持ちのように少し荒れていた。
そのせいかはわからないが、今日はまったく収穫ナシ。
そんな自分に人影が覆ったので後ろを振り返れば、にやけてる兄貴分の姿。
タイ・ホーはそのままヤム・クーの背中に寄りかかるようにして腰掛けた。
「よぉ、シーナから聞いたぜ。昨日とケンカしたんだってな?」
ぴく、とその二つの名前にヤム・クーが小さく震える。
と同時に昨日のシーナがに抱きついていた姿が頭をよぎって、
むかっと釣竿を持っている手に力を込めた。
「珍しいじゃねぇか、お前まで怒るなんて。それもに」
「・・・・俺は別に・・・。さんが勝手に怒ってただけです」
いつもよりも明かに低い声に、タイ・ホーは苦笑する。
釣り針を海中から持ち上げて、ヤム・クーは釣竿を横に置いた。
どうやら今日はもうあきらめたらしい。
「心が乱れてりゃあ、海も荒れるもんだ。さっさとに謝って来いよ」
「・・・・」
ヤム・クーが黙って少し俯いていると、背中の気配が動く。
いきなり、頭をわしゃっと撫でられた。
「お前、なんで自分が腹立ってんのか判ってないんだろ」
に対して怒っている理由なんて、わからない。
ただを抱きしめて、自分に挑戦的な視線を向けるシーナには、意味もなく怒りを覚えたけれど。
「・・・アニキには判るって言うんですか」
「判るぜ、お前さんと違って場数踏んでるからな」
ぽんぽんと頭を叩かれた。
「がシーナといて、むかっと来たんだろ?」
「・・・少し」
「んで、シーナが抱きついてたから、もっとむかついたんだろ」
「・・・まぁ」
はぁ、タイ・ホーはため息をつく。
まったくもって、にぶい奴等だなと少々呆れた。
「簡単じゃねぇか、理由なんて」
あっさり言われて、むっとヤム・クーはタイ・ホーを見上げる。
「わかんないんですってば」
「だからなー、まあ、世間一般で言うあれだよ」
「あれ?」
「あれだ、ヤキモチっつーやつだろ」
・・・・・・。
「は?」
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怒りヤムと、ちょっと大人アニキ。
ヤキモチって自分がしてるってあんま自覚ってないですよね。
いまのヤムはそんな感じ。
後々考えて、あれはヤキモチだったのか、って思いますが。
やっと次は仲直り。
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