自己満足
先日殺羅のもとに来たのは夫婦だった。
もちろんここへ来たのだから依頼だろう。
しかし依頼人が直接ここへ来るのは珍しいことだった。
依頼を持ってくるのはいつも決まったやつばかり。
何時の間にか仲介人ができてたらしい。
頼んだ覚えはない。
「娘を殺してください。」
最初に口を開いたのは男のほうだった。
「自分の娘が憎いのか?」
殺羅が口にだした問いに答えたのは男ではなく女のほうだった。
「憎かったらこんなこと頼みはしません!」
そう言って泣き崩れてしまった。
けれど殺羅の目線は冷たいまま。
座り込んで涙を流す姿をただ見下ろす。
「本当の両親だという証拠は?」
「証拠がなければだめですか」
「いや・・・俺は狩れればそれでいい。」
くすり。
微笑んだ。
殺羅ではない。
存在してはいけない他の何か。
だが殺羅の耳には確かに聞こえた。
快楽殺人・・・それは違う。
快楽など得られはしない。
何もない。
求めているのはそのずっと先。
「約束は守ってくれるんだろう?」
小声でぼそりと呟く。
たしかに交わしたわけではない契約。
きっとそれだけで繋がっている。
その言葉に反応してか・・・。
赤い玉が怪しく輝く。
依頼主はなんと
実の両親でした。
南無