「い・や・だ。」
「どうしてこう出不精なのかしら。ええい、最後の手段だ！！私のビキニ姿が拝めるんだぞ！」
「････。さ、ナンパでもしに行ってこようかな〜。」
「分かったわよ。１日ハンマー無しってのはどう？」
「ナンパしても？もっこりしても？あーんな事やこーんな事しても？」
「も、黙認してあげるわよ･･･。」
「男に二言はなーしっ！！じゃ香君週末の予定は空けておいてくれたまえ！」
男は軽快な足取りで部屋を出て行く
「誰が男だ！誰が！！」
海岸線 ミニクーパー ラジオから流れるFM
「リョウと旅行なんて初めてじゃない？」
「そうか？四六時中一緒にいるから新鮮味が足りないな〜。」
「悪かったわね！あ！見えてきたわよ、あのホテルじゃない？」
「高そうなホテルだな。プライベートビーチ、プールまであるぞ。海の隣のクセに。」
「あたしのクジ運のよさに感謝してもらいたいわね。こんなホテル早々泊まれるもんじゃないわよ。」
「へいへい。」
海風が凪いで行く柔らかい女の髪 自然と漏れるハミング
「なによ、なんだかんだ言って楽しんでるんじゃない。」
「まぁ、折角来たんだしな。Vacationするか！」
「それいけーっ！！」
「お嬢さ〜んっ、僕と･･グフッ･･･。」
「ば〜か。」
色とりどりの水着 追いかける男 呆れ顔の女
「負けないもんね〜。か、彼女ぉ〜･･･ゲフッ。」
「…懲りないわね。ま、あんなバカ放っといてあたしもvacationしなくちゃね。」
物憂げな女は重い腰をあげ長い布の束縛から、自身を解放する
その均整のとれた肢体は様々な視線を絡めとっていく
「お姉さんひとり？」
あどけなさの残る10代と思しき少年がひとり 自覚のない女がひとり
「んー、まぁね。」
「んじゃ、僕と遊ぼうよ。」
突如その少年に手を取られ岩場へと連れて行かれる
「ちょ、ちょっと！！」
「いいから、いいから。」
岩場の影の小さな洞窟 澄んだ水と神秘的な空間 瞳を輝かせる少年
「ね、ちょっと良いでしょ。」
「ほんと、素敵ね･･･。」
「俺、カイト。お姉さんは？」
「香よ。宜しくね。」
「香、東京からきたの？」
「どうして？」
「車、東京のナンバーだったから。」
「じゃ随分前から私の事知っていたのね。」
「まね。あの人香の彼氏？」
だらしない顔の男 呆れ顔の女 純粋な瞳の少年
「仕事上のパートナー、同僚よ。慰安旅行なの。」
「そう。じゃさ、今夜ここにきてよ。もっと良いもの見せてあげるよ。」
「もっといいもの？」
「そう。」
「何？」
「それは今夜のお楽しみだよ。今夜１２時にここに集合！絶対だよ。」
「レディーをそんな遅くにこんなところへ呼び出すつもり？」
「ハハ･･それもそうだね。じゃこのホテルのビーチの入口にしよう。」
「カイトもこのホテルに泊まっているの？」
「まぁ、そんなとこ。じゃ約束だよ！」
「分かったわ。約束ね。」
澄んだ瞳をした少年と少年っぽさを残す魅惑の女が折りなす取り留めのない話
「そろそろ回収に行ったほうが良いみたいだよ、香。」
疲労感・悲壮感の漂う男 呆れ顔の女 苦笑いの少年
「本当に恥ずかしい人！じゃねカイト。また今夜。」
「bye！香。また今夜。」
深夜１２時−
つけっ放しのテレビ 疲れ果て高いびきを上げる男 濡れた髪をタオルで拭う女
部屋をすり抜け出て行く
「香〜っ！こっちこっち。」
「ごめん、遅くなっちゃった。」
「もう来ないかと思ったよ。早く、こっちだよ。」
「何？」
「香、丁度いい服着てきたね。」
「？」
月光に浮かぶ白波と女の白いワンピース 幻想的な夜
「ここ昼間来た洞窟･･･よね･･。」
「そうだよ。」
緑色の光に包まれた洞窟 波に洗われる度その顔を変える
「光ゴケって言うんだ。」
妖艶な光が女の妖艶を誘う
「きれい･･･。」
少年と女の声が調和する
「っっくしょんっ！。」
「もう出ようか。洞窟の中は冷えるから。」
幻想的な夜 少年を騎士に変える
海辺 まとわりつく小波 まとわりつく幻想的な余韻
「香。」
「･･･リョウ。」
対峙する男と少年
「じゃあね。」
振り解かれた手 白いワンピースがふわりと揺れる
余韻を断ち切るかのように、男の腕がごく自然に女に絡まる
男は意味ありげに振り返り、少年を一瞥する
「！！！」
男は女の頤を捕らえると、ごく当たり前のように口付けを落とす
振り下ろされるハンマー 女の抗議の声 男の呻き声
月明かりの下
波にさらわれる余韻
ある夏の夜の出来事