懐かしき日
足音が近づいて来る
誰かは見なくても分かる
だから俺は、そのまま眠る事を強攻した。
静かに扉が開く。
足音が俺のベッドに、だんだんと近づいて来た。
「シ−ザ・・・」
ほら、やっぱりあいつだ
「いい加減に起きろ」
その言葉と同時に毛布が剥ぎ取られる。
冷たい空気を感じて俺の体が、ぶるりと震えた。
「何すんだよ・・・、アルベルト」
仕方なく俺は眠そうに片目を上げ、目の前の人物を睨みつける。
「お前が何時になっても起きないからだ。もう、昼近くなんだぞ」
アルベルトは、そのまま窓際に行き思いっきり引く。
薄暗かった部屋に日の光が射しこんで来た。
「眠かったから、寝てても別にいいじゃないか」
そう反論する俺に、アルベルトはあらかさまに俺に聞こえるよう溜め息をつく。
「今日はアップルさんもいるんだぞ?さっさと起きないか」
クソ・・・・
俺がアップルさんに弱い事を知ってて、わざと彼女の名前を出す。
俺はこいつのこういう所が嫌いだ。
「分かった・・。起きるよ!」
わざと苛ついた口調で言ってやる。
実際に少しムカツイていたから、あながちそれは間違ってはいない。
そんな俺の反抗的な態度にも、アルベルトは軽く鼻で笑うだけだ。
くやしい・・・・。
こんな、ちっぽけな反抗しか出来ない自分が
「本当にお前は生意気だな。シ−ザ」
「あんたにだけだよ」
俺のその答えに更にアルベルトは苦笑する。
「おれにだけ・・・・、か」
そして何か思いついたように俺を見つめる。
「なんだよ・・・」
なんとなく・・・、俺を見つめるアルベルトの瞳が恐かった。
知らず知らずの内に俺は少しずつ後ずさる。
そう・・・、俺の中の何かが本能的に告げていたんだ。
「本当にお前は、厄介な程かわいいやつだ・・・」
アルベルトがそう言った意味を理解する前に、俺の視界は遮られる。
そして唇には熱い感触。
それが、どういう行為か分かってはいても俺の体は動かない。
俺はただなすがままにアルベルトに体をあずける。
「抵抗・・・しなかったな」
やっと唇を離したアルベルトが呟く。
俺は上がった息を抑えるのがやっとで返事は出来なかったが、そのかわり
アルベルトを恨みがましく見つめた。
「お前は厄介な奴だよ。おれにとって・・・」
くしゃり、と今度は俺の頭に手を置く。
その行為がバカにされているようで不快感が湧き上がる。
「アルベルト!俺をからかうにも程があ・・・・・」
言おうとしてアルベルトと目があった。
その目は今までと何か違って・・・・
戸惑っている俺にアルベルトは何かを囁く。
でも、あまりにもその声は小さく何を言っているか聞き取れない。
「アルベルト、今なんて・・・・」
「・・・・・・そんな事より早く着替えて降りて来い」
それだけいうと俺を一人残し部屋から出て行ってしまった。
誰もいなくなった部屋・・・
わずかに階下で交わされているのであろう話し声も聞こえる。
「ったく・・・・、なんなんだよ・・・」
俺らは兄弟で・・・・、からかうにしても悪質だ
あいつが何を考えているかなんて知らない
分からない!
でも・・・・、なぜかアルベルトの触れた唇が熱かった―――。
どうかしている・・・
あいつは男だ・・・・・
しかも確かに血の繋がった弟だ
「あら、アルベルト。シ−ザは起きたの?」
「ああ・・・・」
「どうかした?」
アップルさんが私の顔を覗き込む
私はさりげなく視線をはずす
「何でもありません」
そして彼女から離れると、近くにあったコ−トをとる。
「少し風に当たってきます」
「ちょ・・!アルベルト???!」
扉をくぐろうとしたおれの視界の片隅にシ−ザが映った―――。
**あとがき**
アルシザです。
また兄弟CPにハマりました。
でも、お互い気持ちはまだ通じていません(爆)
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