――幾年


泣くだけ泣けばいいのだ
そう彼は言った

泣くことに恥じなど持たなくていい
それは人として当たり前の感情なのだから・・・・・





幾年の歳月
遠い思い出



オウリは僅かに瞳を細めた
空だけが・・・・やけに青い



「国王が何、溜め息なんてついてんの?」




後ろから急に声をかけられオウリはビクリと肩を震わす
「まだ、そんな初初しい反応してくれるんだ」
可笑しそうに、クスクス笑う
それが揶揄われているようでオウリは勢いよく後ろを振り向いた
「もう!ルック!!!」
そのムキになって怒る顔さえもルックを喜ばせる原因になっているなんて
オウリは気づきはしない
「君は仮にも一国の王でしょ?たまには感情はおさえなきゃ」
その言葉にオウリは横目でルックを睨む
「感情を我慢しなくていい・・って言ったのはルックでしょ・・」
ルックは微かに微笑む
「懐かしいね・・・」
空を見る
「急に何?」
続いてオウリも空を見る
「あの頃の君は、こんなに感情豊かじゃなかっただろ?」


リーダーとしての重圧
親しき者との別れ
真の紋章の継承者としての悲しみ


このどれもがオウリの本当の感情を隠していた



オウリは空を仰いだ
思い馳せたのはアノ頃だ
ルックが言っていた
感情を押し殺してた時の自分・・・・・







 

 

「いなくなった?」
ルックの言葉にシュウは頷いた
「色々な者に聞いた所、今朝ごろ誰も共に付けず城の外に出て行ったきり
 戻って来てないそうだ」
「朝から・・・」
もう夕方になるから朝からだと大分時間が経っている
そして今はただでさえオウリの精神が不安定な時期だ・・
シュウが心配しているのもその事だろう
「で・・・僕にどうしろと?」
「捜しに行ってくれないか」
間髪いれずにシュウが言った
「・・・・・・分かったよ」
少し考えてから、仕方ないというようにルックは右手に宿る紋章に呼びかけた


風が辺りを瞬時に包み、景色は森の中へと移動していた・・・。




「さて、うちのリーダーは何処にいるのかな・・・」

十九八苦ここにいるであろうリーダーの姿を捜しルックは瞳を動かす



いた・・・・



木にもたれかけ湖を見つめる赤い影
そう、ただ何もせず湖だけを見つめる・・・

「なにやってんのさ」


後ろに立ち声をかける

「あ・・ルック・・」

生気のない瞳がルックを捉えた
いつも元気に、人を笑顔にさせる少年の姿はそこにはなかった
そこにいたのは、肉親と呼べる人を失い悲しみに暮れる一人の少年・・
ルックはオウリの側へと腰を下ろした
「みんな、心配してるよ・・・」
「・・うん・・・探しに来てくれたんだよ、ね?」
「シュウに頼まれたからね」
少しオウリから目線を外し言うルック
それが照れだというのにオウリが気づくまで少し時間が必要だった

「ありがとう」

そうオウリは笑った
だが、その笑いは不安や悲しみを押し殺すような笑いだった


「君さ・・・今どんな顔してるか分かってる?」


不安げなルックの声にオウリは戸惑う
はぁ・・とルックは溜め息を吐きながら、オウリの眉間に指をあてる
「悲しい時は泣くものだ・・って習わなかった?」
ハッ、としたようにオウリの肩が揺れる
「何も悲しい時まで笑顔でいる必要はない。逆にそんな笑顔は痛々しいだけだよ」
オウリは答えず俯く
ルックはオウリの肩に手を回すとそのまま抱き寄せた
「泣くだけ泣けばいいよ。泣く事に恥じなど持たなくていい、遠慮なんてしなくていい
 悲しい時は素直に泣けばいいんだ・・・」
強張っていたオウリの身体から力が抜ける・・・
そして次第に嗚咽が漏れる


ずっと泣くまいと我慢していたのだろう
小さな肩はとめどなく震える
その身体をしっかりと抱きしめながらルックは呟く


「僕が側にいてあげるから・・・・」





幾年
幾年過ぎただろう


年を重ねる事はない体は呪いというより呪縛に似ていた
彼はリーダーという重圧から、また、たくさんのものを失い国王となった


けれど、笑顔は絶やさない
それは昔と同じだろう
ただ、一つ違う事・・・・・


「ねぇ・・ルック・・・」


ふいにオウリが空を見つめるのを止めルックの方に視線を走らせる


「分かったよ」


そう言ってルックはオウリの体を抱き寄せる
その腕の温かさに安堵したようにオウリは瞼を閉じる
そんなオウリにキスを何度も落とすルック



自分の前だけで本当の姿を見せてくれる彼が








本当に愛しかった――――――――――。






<END>

+あとがき+

本当久しぶりに書いたルク主です。
「あぁ・・ルック偽者偽者」と呟きながら書く私(笑)
でも改めて自分がルク主好きということを再認識しました
すごく久々にノリましたから(笑)
でも話はシリアス・・・・(汗)
ルク主で甘甘話が書けないのか私・・!
何でしょうね〜・・重いテーマで書くからでしょうか〜?(爆死
ちなみに今回はバッドEDで2主が国王となったバージョンの話・・・
完璧に原作を無視ってる気もします
だって原作ではルックはさ・・・・(悲しくなるので強制終了)
やはりルク主を書く時は夢が入りますね
もう夢でしか書けそうにないです



 

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