風月
幾度となくあいつを呼ぶ。 目の前を歩いているあいつは僕を呼ぶ。 待ちなよ!そこまで行けないんだ! 必死に僕は叫ぶが、あいつには聞こえない。 やがて、あいつの姿は光の中へ 僕は闇の中へと、たった一人取り残される。 夢・・・・・・・・、だとは分かっている。 分かっているけど、僕はこの夢を見続ける。 この夢でしか、もう君に会えないから・・・・・・・
「ルックさま・・・・」 目を開けるとセラの姿。 心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。 あいつもよく、こうして僕の顔を覗き込んだっけ・・・ 知らず知らずの内に微笑みが漏れる。 「大丈夫ですか?うなされていましたが・・・・・・」 「平気だよ」 僕はそう言って、寝台から起き上がる。 「そうですか・・・」 「何か用があるんじゃないの?」 黙り込んだセラに僕は聞いた。 セラはそれで思い出したように、一つの地図を差し出す。 「アルベルトが今朝はやくに持って来ました。遺跡の場所だそうです」 「そう、ありがとう」 僕はその地図を受け取ると目を通す。 グラスランドの東に位置するシンダル族の残した遺跡・・・・・。 ふと、視線を感じた。 「どうしたセラ?」 視線を辿るとセラが何か言いたげに僕を見つめている。 「本当によろしいのですか・・・」 「何が・・・・・?」 「うなされている時・・・・・、あの方の名を呼んでいましたよ・・・」 「っ・・・・」
僕の中にある迷いを・・・・ あいつへの想いを・・・・・ 長年側にいたセラは知っている 「もう・・・、決めたことだから・・・・」 そう僕は微笑む。 そんな僕を、セラは悲しげに見つめていた。 「胸に・・・・彼への想いと記憶がある。 そう、胸に彼への想いがあるのだから、
迷いは・・・・・ない
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