風紋


「行くんだね・・・あいつと・・・」
「うん・・・」
わずかに目を伏せ君は頷いた。
これが最後になる
すでに彼の右手には真の紋章の気配はない
彼は紋章の呪いからも、同盟軍リーダーという肩書きからも解放された
そして・・・僕からも―――。


「さよならオウリ。もう会う事はないだろうね」


嫌味ではない
本当にそう思ったのだから・・・
けれど悲しさは僕の心をじわじわと浸蝕していく

「ルック・・・・ごめん・・・」


謝らないで・・・・
僕が欲しいのはそんな言葉じゃないから
聞きたいのはそんな言葉じゃないから



「愛してたよ・・・。本当に愛してた・・・・」



目の前の小さな体を思いっきり抱きしめた。
強く・・・・・
強く・・・・・
このまま離れないですめばいいのに・・・・
君とずっと一緒にいられればいいのに・・・


僕が始めて愛しいと感じた存在を忘れないよう胸に刻み付けるように、
僕は彼を抱きしめ続けた・・・・・・。

 

その日の朝早く、オウリは僕の元を去った
彼の姉と幼馴染の少年と一緒にいるために・・・


彼の姿が僕の瞳に映ることはもうないだろう
でも、僕には・・・・・
僕の胸には離れても尚息づく彼との思い出と想いがあった


―――ジャリ


長く肩まで伸びていた髪にはさみを入れる


―――ジャリ、ジャリ



パラパラと髪が床に落ちるのを、自分の髪がどんどん短くなっていくのを
どこか冷めた目で見つめる・・・・


そして僕は一つの決意をした

 

 

「ル・・・クさま?」
瞳を開けると幼い顔が側にあった。
色素の薄い髪、青い瞳。
ハルモニアで見つけた一人の少女。
僕の計画を遂行するために必要な少女・・・・。

「泣いて・・・いたのですか?」

セラのその一言で自分が涙を流していた事に気づく。

「ちょっと・・・夢を見ていてね・・・」

懐かしい夢。
彼との最後の夜。

「セラ・・・。僕には大切な人がいたんだ・・・・」

幼いセラに言っても分かるはずないのに、その時はなぜか話したかった
セラは何も言わず僕の話を聞く。

「ルックさま・・・今でも・・その人のこと好き?」

セラがふと、こちらを見る

「・・・・そうだね、好きだよ・・・・。
今でも、誰よりもずっと・・・・」


彼のことを想う・・・・
その時ほど幸せなことはない――――

 

「なら、どうして会いに行かないんですか?」
不思議そうに問うセラ。


それ程に愛しい人なら会いに行けばいい・・・


でも――、


できない・・・・
それはできないんだよ・・・・

 

 

なぜなら彼を突き放したのは僕自身だったから―――

 

<NEXT>

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