風紋3
オウリと過ごす日々は、僕に新しい世界を見せていく
3年前から付き合いのあった者達は、僕とオウリの組み合わせに
驚いたが、大半は僕の一睨みで何も言わなくなった。
僕の心は彼で満たされていた
「ナナミ!!!!!」
悲痛な叫びが城内に響いた
その声を聞き、急いで駆けつけた僕達が見たのは・・・
胸に矢が刺さり、ぐったりとした彼の義姉ナナミの姿。
「早く医師を―――!!」
そう叫ぶシュウの傍らで僕は何も出来ず、
ただオウリを見つめているだけだった。
「ナナミ!!ナナミ!!!」
必死で義姉の名を呼ぶオウリ・・・
胸が締め付けられる・・・
これはきっと天魅星という星に選ばれた彼の運命だ
真の紋章に選ばれた彼の試練なんだろう・・・
だけど、これはあまりにも・・・・・・
「・・・ッ・・・ク・・・」
泣き腫らした瞳でオウリは僕の元に来た。
あれから一晩立っている・・・・
「・・・・何か用・・・?」
わずかに翳りを見せた僕の表情に気づいただろうけど
彼は何も言わず僕の横に腰を下す。
僕も彼に続き腰を下した。
何も言わず
何も話さず
ただ肩を寄せ合うだけ
何分も・・・
何時間も・・・・
「・・・・・・ナナミは・・・、僕をかばったんだ」
ふいにオウリが口を開く。
「・・・・・・知ってる」
辺りに散らばった矢がそれを証明していたから・・・
「どうして・・・死を望む者が生き、生きるべき者が死ぬんだろうね・・・」
ポツリと言ったはずの、この僕の言葉にオウリは今まで伏せていた顔を
勢いよく上げる。
「ルック・・・死にたいの・・?」
僕にしがみついたオウリの手は小刻みに震えていた。
「やだからね・・・!そんなの絶対!!」
オウリの瞳からは大粒の涙がこぼれ出す。
僕は、その涙を全て口唇で受け止めながら言う。
「昔のことだよ・・・・。今は、君がいる・・・」
そう、君がいる・・・
君がいる限り僕は生きていたい
「やく・・・そ・・く・・して・・。ルックまでいなくなんない、で・・・」
嗚咽を漏らすオウリを軽く抱きしめながら僕はうなずいた、
「約束する・・・。
僕は君の側にいるよ・・・・・・」
ずっとね・・・・
そう囁いた僕にオウリはますます強く腕を絡ます。
そう、ずっと――――・・・
この時の僕は本当にそう思っていたのだから
この後に来る別れなんて、これっぽっちも考えていなかった・・・
「迷っているのか?」
黙り込んだ僕にユ−バは聞く。
「・・・・迷ってなどいないさ。昔を思い出してただけさ」
「それが迷っているという事だと思いますがね・・・」
今度はユ−バ−の横に座っていたアルベルトが苦笑気味に言う。
僕は何も言わず席を立つ
湖の前にいた。
水面に反射して月が輝いている。
懐かしき地。
僕があの日、あの夜、
オウリと別れた夜からもう15年の月日が流れていた。
彼が今、何処にいるかは知らない。
年をとっただろう・・・・・。
少年の面影は消え青年へと成長しているはずだ・・・・
ふと、湖を見ると水面に僕が映った。
15年たっても変わらない姿・・・・・・・
変わらないオウリへの想い―――。
「決めたんだ・・・・あの夜に・・・・」
絞り出すように呟く
その時―――、人の気配を感じた。
今、人に姿を見られるわけには行かない。
姿を消そうと風の紋章を発動させる。
「ルック!!!!」
消えかけた視界の片隅に懐かしい影を見た・・・・
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