風紋4
明日で戦い終わる最終決戦の夜。
僕は夢を見ていた・・・・
正確には、この身に宿った真の紋章の記憶・・・
音も・・・色も・・・形さえもない世界。
”ここは世界の終着点”
誰かの声が聞こえた。
”いずれ、この世界はこうなる運命です”
運命?
この世界が僕達の世界の終着点?
バカな・・・・
こんな静かな・・・・・
悲しい世界はあるべきじゃない!!
”でも、これが事実なのです”
声は穏やかに僕の心に響いてくる
認めない
認めたくない!
ティルが・・・・・
オウリが・・・・・・・
大切な者達を失ってまで守った世界の到達点が
この世界なんて・・・・・・・
許せない―――!!!!!
”運命なのです。永遠に繰り返される闘争も全て・・・・”
運命というなら・・・・
どうして僕にこの光景を見せる?
どうして今になって、僕に告げる?!
声のする方・・・
いや、僕自身にある真の風の紋章へと叫んだ
声は・・・・止む・・・
変わりに、風が吹き荒れる・・・
「こんな世界は・・・・絶対に・・・・」
その風の中で僕の言葉はかき消され、消えた。
「調子悪いの?」
不安そうに僕の顔を覗き込んでいたオウリがそう尋ねる。
「平気だよ・・・」
そうは答えたものの、昨夜の夢のせいでかなり気分が悪かった。
まだ、ぐるぐると夢の情景が頭の中で回っている。
でも、今はそんな事を考えてる場合じゃない・・・
「・・・・行こう。これで戦いが終わる・・・・・・」
そうオウリに声をかけ、真の紋章・・・獣の紋章の化身へと向き直った。
今は戦いを終わらすことだけを考えなくて・・・・
杖をにぎりしめる
獣が一声大きくないた。
すぅ・・・・と音もなく消えていく紋章の化身を、皆、歓喜に満ちた瞳で見つめていた。
ただ一人、僕を除いては・・・
「行って・・・・くるね・・・」
石版の前・・・・
僕に向ってオウリは言う。
「ん・・・・」
何も言えない
止める権利など僕にはない
崩れ行くハイランドの城に”彼”の姿はなかった
あったのは王座にかかったコ−ト・・・
でも、それだけでオウリには十分だったのだろう。
何かを決意した瞳・・・
オウリにとって、これが本当の最期となる
最期の戦い・・・
テレポートを頼むためにビッキーの元に歩く。
小さな背中に声をかける。
「オウリ!」
オウリが不思議そうに振り向いた。
「待ってるよ・・・」
その僕の言葉に一瞬きょとん、とするが、すぐに僕の好きな笑顔を浮かべ
手を大きく振る。
「行ってきます!」
天地創造の伝説にある天地を創る元となった「剣」と「盾」が融合して出来た
紋章。オウリと彼の幼馴染が宿しているのは、その紋章の分離したもの。
どちらかが死して始めて真の姿となる紋章・・・・・
でも・・・・・、
紋章は一つになることはなかった
彼達から離れ、眠りについた・・・・・・・・・。
「ルッ・・・ク・・・」
僕は動けなかった。
動けずに目の前の人物を信じられない思いで凝視する。
「ルックなんでしょう?」
そう尋ねる声は、あの頃と少しも変わっていない
背は伸びてはいるが、まだ僕より少し低いくらいだ。
未だ少年と見違うばかりのその姿・・・・
変わっていない・・・
まるで時間が戻ったようだ・・・・
そう、錯覚してしまいそうになる
「オウリ・・・・」
声がわずかに震えた。
それは戸惑いのせいなのか?
それとも彼に再び逢えた喜びのせいなのか?
ただ一ついえることは、もう会うことが叶わないと
思っていた彼が此処にいる。
その事実だけ・・・・
<NEXT>
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