風紋5


「久し・・・ぶりだね・・・」
オウリの声も揺れていた。
僕と同じで戸惑っているのだろう。
当たり前だ、15年前あんな分かれ方をして以来なのだから。


「そうだね・・」
出来るだけ感情をこめず無関心に装うが、その効果は薄い。
15年前と変わらぬ彼を今すぐ抱きしめたい衝動に襲われる。
そんな自分を抑える為、口唇を噛み締めた。鉄くさい血の味が口内に広がった。


「ルック・・!血が・・・」
「来るな!!」


ビクリ、とオウリは駆けようろうとしていた足を止めた。

「来ないでくれ・・・。僕はもう君の知ってる僕じゃない」
オウリの顔色が明らかに変わる。
「僕は変わったんだよ、君と過ごしたルックはいない。
今、此処にいるのは過去を捨て愚かな行為に身を投じた一人の男だ・・・」


そう僕はあの夜に・・・
全てはあの夜に決めた・・・・


 

 

「ウソ・・・だ・・」
消えた・・・
消えてしまった気配
眠りについた紋章―――――。

「紋章は・・・彼達から離れたのか・・」
まだ半信半疑だった。
でも、戻ってきた彼を見た時、僕は悟った。
その瞳に浮かんだ迷いを見た時に・・・

「・・・・お帰り」
うまく笑えただろうか?
もしかすると少し頬が引きつっていたかもいしれない。
でも、オウリは何もなかったかのように僕の胸に顔をうずめる。

「ただいま・・・」
抱きしめようと腕を伸ばす。
けど伸ばしかけた手を僕はふいに宙で止めた。
そしてオウリを引き離す。

「ルック?」
何事かとオウリは首をかしげている。

「戦いは終わった・・・・・
僕はレックナート様の所に戻るよ」

「また・・・会えるんでしょう・・・?」
不安げに聞くオウリに僕は首を振る。
「君と僕はもう一緒にはいられない」
そう言った瞬間オウリはハッとしたように僕を見る。
「どうして!!?僕がもう真の紋章を宿していないから?!」
「違う・・・・、君は自分の道を行かなければいけない!だから・・・・」


オウリは尚も何か言おうとした。
だけど僕にこれ以上話す気がないことを感じ取ったのだろう、黙り込む。
でも、まだ迷いがあるのか、しきりに僕を見る。

そんな瞳で見ないで・・・・。
せっかく決意したのに僕が迷ってしまう、
ほら・・・・・

「あと・・・、3日だけ此処にいるから。
・・・・・それまでに決めなよ」

「わ・・・かった・・」

その時の彼の泣きそうな声だけが耳に残る

 

3日目の朝。
僕の元へ現れたオウリの顔はどこか思いつめたものをしていた。

今日で・・・最後

「行くんだね・・・あいつと・・・」
もっと躊躇うと思ったのに案外すんなりと言葉が出てきて自分でも正直驚いた。
「・・・うん」
僅かに目を伏せたオウリ。
君が気に病むことじゃないのに・・・
君を拒んだのは僕なのだ。
「さよならオウリ。もう会う事はないだろうね」
抜け抜けしくこんな言葉を吐く僕を君は憎んでくれたらいい。
でも・・・、悲しさは募る。
未だ君には憎まれたくないと心は言う。
「ルック・・・ごめん・・・」


あぁ・・・、どうして君はそうなんだろう
悪いのは僕なのに
どうして君は謝るのだろう
いっそのこと恨み言を言ってくれたほうが僕も諦めがつく


でも・・・・無理だね・・・


君は恨みや憎みなどという負の感情とは無縁な人物
そんな君だから僕は君に惹かれた
君を愛した・・・・


「愛してたよ・・・・。本当に愛してた・・・・」



僕の腕の中でオウリはただ嗚咽を漏らす。
「僕も・・・・僕も・・・」
何度も繰り返す彼の声が耳に心地よく響いてる。

 

忘れない・・・
決してこの日を・・・
君への想いを・・・
そして、僕達を引き離す元凶となった真の紋章への怒りを・・・・!

 

そして僕は一つの決意をした。

 

 

以前、僕の右手に宿る真の風の紋章が見せた光景・・・沈黙の世界。
あれも、真の紋章の闘争によって引き起こされるものだという。
真の紋章は存在しても争いしか生まない!
悲しみしか生まない!!
なら・・・・紋章を・・・真の紋章を破壊することが出来れば・・・・

危険な賭けかも知れない
けれど失うものを無くした、
呪われたこの身なら・・・・

僕は運命を変えてみせる!!!!

 

 

 

 

 

静かだった・・・
僕達は静かに見つめあうだけ。

「あの時・・・」
ふいにオウリが喋りだす。
「正直、僕ルックの考える事が分からなかった」
あの時とは、僕が君を拒んだ時だろう
「しばらくは分けが分からなくて・・・。
僕はルックには必要のない人間だったんだ・・・そう思ったら悲しくなった」


違う・・・・
決して君が必要なくなったわけじゃない
むしろその逆だ、
必要だから・・・大切だから一緒にいる事は出来なかった。
そのことを口に出して言えたらどれほど楽だろう
でも、動き出した計画の為にはそれは言えない。
言ってはいけないことなんだ。

 

「ねぇ・・ルック今でも僕のこと好き?」

 

その声は、あの時と同じく心地よく僕の耳へと響いてきた。

 

 

今でもアイシテル?

 

<NEXT>

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル